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上村夏樹さん

はじめまして、上村と申します。 公募に挑戦するワナビです。突発的にショートショートを書きたくなる面倒くさい生き物。 最近、初めて買って読んだ詩集で泣きそうになるという、やはり面倒くさい生き物。 物書き、そして読者のみなさん、よろしくお願いします!

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理系男子と恋の方程式

18/06/03 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:2件 上村夏樹 閲覧数:139

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「理央くん。恋愛研究部の活動を始めよう」
「ああ。文香よ、今日の活動内容はこれだ」
 理央くんは黒板を指さした。そこには白い文字で『夏祭りデートで異性に告白するシミュレーションをしよう』と書かれている。
 ここは恋愛研究部の部室。放課後、私たちは学校では教えてくれない恋愛について日々研究している。
 相方の理央くんは理系科目を愛している理系男子だ。一方、私は平凡な文系女子である。
「さて、どちらが告白する?」
「はいはーい、私がやる!」
「では二人で神社の石段に座り、打ち上げ花火を見ているシーンから始める」
「おっけー」
 というわけで、私たちは妄想世界にダイブした。

 神社の石段に腰を下ろす。ここからだと祭りの喧騒は遠くて人通りもない。
 これから告白すると思うと緊張する。さっきまで普通に話せていたのに、何を話せばいいかわからない。
 会話の糸口を探す私を助けるように、夜空にひとすじの光が吸い込まれていった。そして色鮮やかな大輪の花が咲く。
「理央くん、花火!」
「ここからだとよく見えるな。綺麗な炎色反応だ。なんて美しい輝線スペクトル……」
「待って、理系男子の嫌なところ出てる!」
 ムードもへったくれもないんですけど。
「何を言う。俺が何をしても臨機応変に対応し、告白を成功させろ。そうでなければ、シミュレーションの意味がない」
「た、たしかに……」
 難しい場面を想定し、克服しておけば、本番は自信を持って望めるはず。ここは理系男子の趣味に合わせて会話を盛り上げよう。
「では気を取り直して……きれいだよね、炎色反応。理央くんの好きな炎色反応って何?」
「ホウ素かな」
「渋い! 私は好きだよ、土類金属を選ぶそのセンス!」
「見ろ。ナトリウムが発する黄色い光も美しい!」
「わぁ、まるで向日葵みたい! 第一族元素さいこー!」
「ふっ。君のそういう子どもっぽいところ、可愛いな」
「可愛い……いけるかも。ねぇ理央くん。向日葵の花言葉、知ってる?」
 尋ねると、理央くんの目が急にゴミを見るような目に変わった。
「知るか。植物に意味など不要だ。これだから文系女子は」
「えっと、『私はあなただけを見つめる』なんだけど……」
「1ミクロンも興味ない。やはり文系女子とは合わないようだ……もう帰る」
 理央くんが神社の石段から立ち上がり、去ろうとする。
 いけない、理系男子の気持ちを考えなきゃ。
 文系女子の妄想力をフル回転させる。大丈夫。愛があれば、理系女子にだってなれるはずだよ!
 私は立ち上がり、理央くんの手を取った。
「待って理央くん! 私、あなたを一目見たときから、恋の化学反応が止まらないの!」
「文香……実は俺もなんだ。気づけば、君のことを目で追ってしまう。これって愛の万有引力だと思う!」
「あるいはS極とN極が惹かれ合うように、理系と文系の男女だから惹かれ合うのかも……理央くん。私と二人でフェルマーの恋愛最終定理を解き明かそう!」
「だが断る! ぬかせ、このモグリが!」
「まさかの拒絶!?」
 なんでよ。今いけそうだったじゃん。
「フェルマーの最終定理はすでにワイルズが証明した。常識だぞ」
 誰それ知らない。知識は妄想じゃカバーできないから。
「やれやれ。シミュレーションは失敗だな」
「理央くんが相手だと難易度高いよ……」
「十分の休憩後、役を入れ替えてやるぞ」
「はーい……ところで、理央くんはどうして恋愛研究してるの?」
 尋ねると、理央くんは頬を赤くしてそっぽを向いた。
 ……これ絶対に好きな人いるパターンじゃん。
 私は理央くんに顔を近づけた。
「理央くん、好きな人いるでしょ」
「い、いない」
「照れなくてもいいじゃん、すてきなことだよ。誰?」
「くっつくな、離れろ!」
 理央くんは「外で休憩してくる!」と怒鳴り、部室を出ていった。あーん、もう少しで聞き出せそうだったのに。
「あっ」
 ふと彼のノートPCに視線が吸い寄せられる。
 悪いと思いつつも、PCを覗き込む。デスクトップに「恋愛研究会活動記録」というフォルダを見つけた。
 開いてみると「恋の方程式」というファイルがあった。
「……怪しい」
 マウスをクリックし、ファイルを開く。テキストの一番上に書かれていた文章は――。

 文香と交際するための恋愛フィボナッチ数列について

 瞬間、頬がかあっと熱くなる。
「なっ、なななんっ……!」
 理央くんの好きな人って……私だったの?
 真面目で。素直じゃなくて。融通が利かなくて。理系科目のことばかり考えている変な男の子。
 でも、私はそれらすべてをひっくるめて彼の魅力だと思うんだ。
 反則だよ、理央くん。
 だって、私も君のことが好きなんだよ?
 この後どう接すればいいか想像しながら、休憩時間を過ごすのだった。


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このストーリーに関するコメント

18/06/03 いっき

面白かったです!ムードもへったくれもない理系男子とのコメディチックなやりとりから、ロマンチックなラストへの繋がりが素敵でした。○想いのオチに、思わずにやけてしまいました・

18/07/14 上村夏樹

>いっきさん

コメントありがとうございます!
かなり前にご感想をいただいていたのに、気づかなくて申し訳ございませんでした。

女性は絶対にこんな男とはデートしたくないでしょうね笑
やりすぎなくらいの理系思考キャラでコメディーしたいと思っていたので、楽しんでいただけてなによりです。

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