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小峰綾子さん

性別 女性
将来の夢
座右の銘 笑う門には福来る

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浮遊する言葉たち

18/05/28 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 小峰綾子 閲覧数:182

時空モノガタリからの選評

個人的にラジオはあまり聴いたことはないのですが、親しみやすい内容で読みやすかったです。テレビなどと比べるとラジオは出演者対リスナー間の関係だけではなく、リスナー間の横の繋がりにも心理的な距離の近さがあるのかもしれませんね。深夜という時間帯や音のみで伝えるという点が、個人という空間を担保しながらも他人と適度な距離感を置きながら繋がることを可能とし、安心感を生んでいるのかもしれないと想像しました。どんな形であれ身近な人間関係を離れた居場所があるということは、やはり一種の救いであるような気がします。

時空モノガタリK

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学校の帰りに100円ショップによってうろうろしている時だった。いつものようにスマホでラジオを聴きながら。耳にはイヤホンが入っている。

隣に立っていた同い年ぐらいの男子が私の方を見てハッとしたようで、何か言っている。イヤホンをしていたので聞こえなかったので、片耳だけ外して
「なんですか」
と聞いた。
「そのステッカー、金曜のラジオの・・・」
私のスマホに張っている小さなステッカーのことを言っているようだ。これに反応するということはこの人はリスナーか。
「そうです。」
「僕も聞いてます。いいなあ、ステッカー。あ、なんかすみません急に話しかけちゃって・・・」

彼は頭をさげてどこかに言ってしまった。ステッカーを見つけた喜びでつい話しかけてしまったが、冷静になったら恥ずかしくなったのだろうか。

でも、私は悪い気はしなかった。いつも聞いている深夜1時からの芸人のラジオのノベルティなのだが、誰でももらえるわけではなく、コーナーに投稿してオンエア中に読まれて、なおかつパーソナリティーに「ステッカーあげます!」と言われてようやくもらえるのだ。誰もが知っているわけではないが、熱心なリスナーにはうらやましがられるステッカーなのだ。

帰りのバスの中で興奮気味で今の出来事をメールに書いて送った。ネタでも何でもない普通のお便り(通称ふつおた)なので読まれるかどうかは分からないが、本人たちか作家さんやスタッフさん、誰かに読んでもらえるだけでも別に良いのだ。

そして、そのメールはその週の金曜日1時23分に読まれることになった。

「へぇ。やっぱりそういうリスナーさん同士の交流も生まれるんだね。作ってよかったよねステッカー」
「そうだね。この後この二人がこのラジオをきっかけにして付き合い始めたりしたらすごいよね」
「そして何年後かに結婚とかね。そうなったらぜひ教えてほしいね。」
「その際にはぜひご一報ください。あっでも、ラジオが終わっちゃってたら報告できないね。頑張って続けないとな、このラジオも。それでは、次のコーナー行きまーす。」

今まで3回メールを読まれたことがあったが、まだ読まれるのが当たり前にはなっていないので毎回緊張する。心臓がバクバクし、体中の血管が熱くなったような気がする。

そういえば、話しかけてくれた彼に対して、ナンパ目的か、とかそういうことは一切考えていなかった。そういうのに慣れた感じはしなかったし、実際にすぐに逃げるようにいなくなってしまった。

私が逆の立場だったらどうだろう。多分見つけた瞬間に「私もそれ知ってる!」と言いたくなるだろう。でも話しかける勇気はあるだろうか。分からない、微妙なところだ。

深夜ラジオを聴くようになったのは今から2年ぐらい前、15歳のころだ。スクールカースト最下層、目立たないグループに所属することになってしまった私は毎日悶々としていた。小学校のころから仲良くしていた友達はいつのまにかクラスのイケてる方のグループにいて、話しかけてくれることもほとんどなくなってしまった。一人でいるよりはましだと思い、他の目立たない子たちと休み時間は一緒にいるが、特に楽しいとも感じていなかった。自分のことは棚に上げて「つまんない人たち」と思いながらつるんでいたし、そう思っている自分も嫌だった。
そんなころ、たまたま受験勉強をしながら流しっぱなしにしていたラジオがとても面白く、それから毎日のように1時から3時のラジオを聴くことになった。毎日パーソナリティーが変わり、雰囲気も特徴も毎日全然違うしそれぞれに面白かった。
私と同じように、ぱっとしない毎日を過ごしている人達も、このラジオを聞いて笑ったりしてるのかもなあ、と思うだけで、顔も知らないたくさんの人たちに対して友情のようなものを感じていた。
そのころだ、学校の中という狭い人間関係だけにこだわる必要はない、空間を超えたところに私は通じ合える人がたくさんいるに違いない、と思えるようになったのは。

スマホがある時代で良かったと思う。深夜でも、親にばれずにイヤホンを耳に入れてこっそりラジオを聴くことができる。さらに最近ではタイムシフトシステムといって、リアルタイムでなくても1週間以内なら音源をそのまま聞くことができる。

さまざまな言葉が、電波に乗って飛んで行く。いや、飛ぶというよりはふわふわぷかぷかと浮いていく感じか。

たくさんの浮遊する言葉たちを、私はキャッチする。そして別の言葉に変えてリリースする。それをまた、誰かがキャッチする。

浮遊する言葉に私は何度も助けてもらった。いつか同じように誰かを救う言葉を飛ばせればいいなと思う。


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