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nekonekoさん

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宙 108個の風船

18/05/28 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:105

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 風船の群れが用意ドンの合図で一斉に空に放され赤。黄。青。橙。緑。色の風船達が風に煽られながら空一面に広がって行く。同時に、周りからは響き渡る歓声とドヨメキ声。僕は、空中を漂う様に飛び交う風船の群れをボンヤリと眺めながら、その数を数え出した。全部で108個。それから、間が開き。「本日のイベントはこれで全て終了いたしました。」と女性のアナウンスが響き渡り僕の周ると、僕の周りにいる人達が一斉に帰り支度を始め出した。それでも、僕は、風船の群れが見えなくなるまで見送り続けていた。「宙。風船大会どうだった?」祖母が問い掛ける。「うん。別に」僕は祖母の足を摩りながら素っ気無い答えを返した。「それよりばあちゃん気持ちいい?」「あぁ気持ち良いよ。でも、宙にばかり迷惑掛けてごめんね、でも、もうすぐ」「もうすぐだからね」ばあちゃんは、何時もの口癖の様な事を繰り返し言うと静かな寝息を立ってて眠てしまった。僕はそっと布団の中から手を引き抜くと窓側まで行き空を眺めて見た。先程まで空を覆つくす程であった108個の風船の群れの姿は当たり前の様に無くなっていた。そして、ばあちゃんが言う「もうすぐは」あの空の先にある世界の事だった。そこには、先に亡くなったおじいちゃんや戦争で亡くなってしまったばあちゃんの友達達が住んでいる世界でもあった。僕は少し目を凝らせば見えるかもと思ったが、見えてるのは少しオレンジ掛かった空の色だけだった。
 夜。珍しい事が起きた。父さんと母さんが早く帰って来たのだった。休みの日でも、三人が揃う事は滅多に無いのに。当然の様にその日は、三人
で食卓を囲んだ。いつもと違う雰囲気。僕は少しドキドキ感を感じていた。それは、父さんも母さんも同じ様に思えた。だから、僕はありたけ場の
雰囲気を和ませる様に努力をして見た。「今日、河原で風船大会があって、108個の風船が飛んで・・・。」父さんも母さんも笑って話しを聴いてくれたが一方通行的に僕が喋ってるだけみたいになっている様だった。食事が終わり。母さんが洗い物しながらポツリと呟いた。「宙には、随分とお世話をかけてたけど、ばあちゃんが行く老人ホーム、ようやく空きが出来たんだって・・・。」その後の言葉は僕の耳には入って来なかった。
 あの風船達は何処えと、飛んでいたのだろうか。集団のまま108個の風船が塊の様になって飛んでいる訳ではないだろう。時には、何かのショックで破裂したり。鳥にお襲われたりしながら、その数を少しづつ減らして行き、残った最後の風船達が海を超えていったり。国境を超えて行ったり
するのであろうか?。だけど、一番悲しいのは何かに引っかかって動くにも動けない風船だろうか。
 ばあちゃんの部屋に行くと、ばあちゃんはまだ、食事をしていた。「一人で食べてて、寂しくない?」「慣れたからね」「僕も。今日、三人で食べてらなんか疲れた」その後、ばあちゃんはさも可笑しと言う感じで笑っていた。「そんなに可笑しい?」「だって、宙がおかしな事いうから」「そんなに可笑しい事言った・・・。」「だってまだ、宙の年ならみんなで食卓を囲むのが普通なのよ」「・・。」僕はそ言うものなのかと思った。それから、僕はばあちゃんの背後に回り背中を摩って見た。手の平にはばあちゃんが着ている物を通してゴツゴツした物が感じられた。それをばあちゃんに言うと「年を取ると人はこうなって来るものなのさ」と答えが返って来た。僕は答えずにそのまま背中を摩り続けた。そして、背中を摩りながら母さんが言っていた事を話した。「ばあちゃんが行く老人ホームに空きが出来たんだって」「・・。じゃあ、もうすぐ宙ともお別れだ」「うん、そうなるね。でも、ばあちゃん僕、時たま会いに行くよ」「うん。そうしておくれ」ばあちゃんの声が少し弾んでいる様に聞こえた。
 その夜、僕は夢を見た。108個の風船達が僕の体を持ち上げてくれて、空中を飛び回っている夢だった。何処へでも行けた。ばあちゃんが入る老人ホームにも、ばあちゃんが言うもうすぐの世界にも。これは、少なくとも僕が引っかかった風船ではない事だと言う事なのだろうか。
 それから、1週間程が過ぎてばあちゃんが、老人ホームへと行く日がやって来た。ホームの職員の人に連れられて車の中に乗り込むばあちゃん。車がゆっくりと走り出して行く。その後ろ姿を見送る僕。その先マンションのベランダに風船が引っかっているのが見えた。


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