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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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記録が伸びない私

18/05/26 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:171

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記録が伸びなくなった。今まで練習を重ねれば、自然と記録が付いてきたのに。やっぱり6メートルの壁は相当大きい。こんな記憶じゃ全国で活躍できるわけない。
「裕子は幅跳びをするために生まれきたのかもね!」
私は中学で陸上を始めたのにも関わらず、グングンと成績を伸ばしていった。顧問からも驚かれるほどの成績と言われるほどだった。その期待は私の活力へと変わり更なる成績向上へと変わっていく。友人も親も私に掛ける思いが日に日に強まっているのも分かっていた。
中学時代、私は怪我することなく自他共に認める成績を収めることができ、高校も推薦で入学することができた。推薦で入った私は、幅跳びだけに時間を捧げられる環境を手に入れた。
高校でも幅跳びの記録は伸びていく。このままいけば全国でも活躍できる記録と言われるようになる。高校生の陸上をまとめた雑誌にも私の記事が掲載されることもあった。順風満帆に見えた私の幅跳び人生。しかし私はある日を境に記録が伸びなくなってしまった。
「最近調子上がらないな。このままだと全国はちょっと厳しいかもな」
怪我をしたわけでもないのに。記録が伸びない理由が私には分からない。今まで練習すればするほど成績が向上していたのに。まさにスランプだった。
「裕子には学校も期待してる。だから記録が伸びないと焦ることもあるさ。でも焦ってる時こそ怪我に繋がるからな。とりあえず今週は休みなさい」
顧問も私のことを気にかけてくれる。毎日のように幅跳びをしていた私、一週間も休んだことなんてなかった。だから私は不安で仕方なかった。
そんな不安を抱える私に中学からの友人である香織が声を掛けてくれる。いつも練習の合間に話すぐらいしか時間が持てなかったけど、今日は時間があるから近くのファミレスで話すことにした。
「裕子とこうやって話すって久しぶりだね!」
そんなことを言ってくる香織は、とても楽しそうだった。そんな香織を見て私も少し不安が解消される。色々話をしていく中で、香織は私のスランプについて話をし始める。
「私が思うに裕子の成績は当たり前のことなんじゃないかな?だって私たち成長期だよ?」
そして香織は私の身体を一通り見て
「裕子のこと、放っておかない男子いないよー」
とふざけた口調で言ってくる。私は今までなんとも思ってなかったけど、中学の頃よりもかなり背も大きくなったし、胸だってお尻だって大人らしくなった。香織の言う通りもしかしたら成績が伸びないのは当たり前のことなのかもしれない。

香織と色々話したら不安はどこかへ消えてしまった。躓くこともあるよ、人生だもの。そんなことを考えるようになった私は、深い眠りにつくことができた。

その日の夢は不思議な夢だった。幅跳びをしている夢で、踏み込むところまではとにかくリアル。しかし着地しそうになった時、もう一度ジャンプしようとする。すると少しだが浮遊し続けることができるのだ。ジャンプをし続けることで永遠飛び続けることができる。まさに夢のような飛び方だ。

夢から覚めると私は現実ではないことを知る。当たり前だけど夢の中では現実だと思っているのだ。だからしょんぼりした気持ちになってしまった。あんなこと現実で起きたらいいのに。
それから一週間、ずっと同じような夢を見続けた。幅跳びをやらないだけでこんな夢をずっと見なきゃいけないなんてしんどい。そんなことまで思った私。
そして久々に幅跳びの練習に参加する日が来た。やっぱりまだ不安が残ってる。顧問も私の不安を気にしている様子だし。

私は走り出した。風を切るように。飛び込め、砂の中に。

砂の中に飛び込む寸前、私は不意に「前へジャンプ!」と頭の中に言い続けた。でもやっぱり夢のようにはならなかった。それでも私は今までの不安が消えていた。私らしく跳べればいい。
私は跳び終え砂を払う。その時、顧問と香織が私に慌てながら話掛けながら遠くから向かってくる。何事?!そんなことを感じたが、その話を聞いた時、今までに味わったことのない感情が込み上げてくる。
「裕子!やったぞ!6メートル5センチ!これなら全国狙えるぞ!」

あの時見た夢、実は続きがある。全国大会であの永遠に跳べるジャンプを見せ見事優勝したのだ。
あのジャンプのようには跳べないけど、もしかしたら…という気持ちになることができた。


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