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甘宮るいさん

 小説家を目指して、日々練習中。恋愛ものとミステリー系と哲学的な感じの話を書くのが好きです。リアルとの両立をがんばりたい。ツイッター@Rui0123amamiya/HP→https://tukikage0123.wixsite.com/amamiyarui

性別 女性
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浮遊する恋

18/05/25 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 甘宮るい 閲覧数:205

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 先輩のものだった、2つ上の彼女が誰のものでもなくなった。
 恋をしたのは春のことだった。随分と前の、入学式の日だった。一目ぼれに近かったけれど、一目ぼれではなかった。
 彼女は移り気な人だった。不安定で、美人局な人だと知った。
 街に薄暮の迫る頃、駅前でずっと待っていた彼女から「予定が入った」と連絡がきた。何度目かのことだったから、何とも思わないはずだった。先輩と別れた彼女にどう声をかけていいか分からなかったくせに、これじゃ付け入るようなことばかりしていると罪悪感におぼれそうだったから、いっそよかった。今日のデートがなくなって、きっとよかった。
 ちゃんと好きになってほしいのか、どうでもいいから自分のものにしたいのか、全くわからなくなっていた。まだ明るい空の下で、それでも僕は何も見えていないようだった。不器用に探したから、怪我をしたようだった。血が出ていた。
 先輩との恋愛相談を、聞くことがよくあった。ベッドの上でのことも聞いた。彼女の得意な料理のことも聞いた。頷かないで、食べてくれなかったというそれを僕が食べたかったと言ったら、もっと早く彼女は僕のものになっただろうか。いや、まだ彼女は僕に何も思っていないだろうから、できるかどうかもわからないか。
 彼女のことだけ考えながら、家のベッドに向かって歩き出した。迷走する思考と一緒に足取りも覚束なくなっていった。
 いつになったら僕は、彼女に好きだと言えるだろうか。新田ちゃん、なんてちゃん付けで呼ばれるこの関係が、いつ下の名前で呼び合えるようになって、その苗字でさえお揃いにできるようになるだろう。まったりと漂う関係に、彼女が飽きるのが先だろうか。指先を迷わせる彼女と僕が、キスをするようになんて、僕の勝手な妄想のままだろうか。
 気がつけば、家の前を通り過ぎて彼女の家の近くまで来ていた。このまま何も考えず、どこかに行ってしまっても彼女は探してくれないだろうな、なんて思って悲しくなった。むなしさが込み上げて吐きそうだった。都合のいい関係を、都合のいい後輩を、いつになったら終わりに出来るのか。それは、僕にとって都合のいい終わりだろうか。
 彼女のアパートの近くの公園で、暇を潰そうと止まった足をまた動かした。坂を下っていく。
 彼女は僕を頼りにしてくれている。買い物にも誘ってくれた。ご飯にも誘ってくれた。家に上げてもらったこともある。大丈夫、きっとこの思いは彼女に辿り着く。
 彼女のアパートが近づく。予定が入ってしまった彼女を一瞬でも見たくなった。彼女を見ることができたなら、まだ不安にならずに歩いていられる。
 ふと目線を下げると、足が少し震えていた。驚いた、そんなにも僕は不安だったのか。いっそこのままでいたほうが、彼女の近くに居られるのではないだろうか。どうしよう、でも届けたい。飛んでいった風船を諦めた時のように、簡単に済ませたくない。
 風が吹いて顔を上げた。離れるよりは一緒に居たい、そんな想いを募らせて、希望が一瞬見えた気がした。
 気がしただけだった。アパートから出てくる彼女と、大きくて綺麗で白い外国車から降りてきたスーツの男性が、ハグをした。

 浮ついたこの気持ちは、どこにも着地できず、捨てることもできず、風船というよりは子供たちが飛ばす紙飛行機のように、僕を弄んでいる。


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