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山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

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サイダー

18/05/18 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 山盛りポテト 閲覧数:151

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机に置かれたサイダーの入ったグラスは水滴がだらだらと落ち、その歪んだグラス越しに見える彼女の輪郭は失われ、ただそこにぼんやりと存在していた。その光景がおかしくて、
「俺たちの関係みたいだね」
と言おうとしてそれは洒落ですまないことに気づき寸前でやめた。
クーラー嫌いな僕が開けた窓を彼女はずっと眺めていた。
点けっぱなしにしている扇風機が面倒くさそうに生ぬるい風を運び、その音だけが部屋に響いていた。
先に切り出したのは僕だった。
「最近なんかいいことあった?」
返事がなかった。
しばらく気まずい沈黙が続いたあとで彼女がいった。
「炭酸抜けるよ」
「いいよ別に」
更に深い沈黙が続いた。
僕が浮かんでは消えるサイダーの泡を見ていると、彼女は台所へ向かい、無心になって何やら作りはじめた。
子育て中の猫よろしく殺気立ったその姿は、他の者をよせつけない何かがあり、迂闊に近づくこともできなかった。
卵を割る音や油がはねる音が聞こえ、その間も僕はじっとサイダーの泡を見ていた。
そしてとうとう完全に炭酸が抜け、
「泡が消えた!」
と彼女に言うと不敵な笑みを浮かべながら天心飯を持ってきた。
「俺の分は?」
そう言うと無言でスプーンを差し出してきた。
「卵少なかったから、2人で半分」
「2人で半分」
「2人で半分」
彼女と僕の間にあった不穏な空気はサイダーの泡とともに消え、2人で大笑いした。
「このクソ暑いのに天心飯か」
と照れ隠しで悪態をつくと、彼女は全力で窓を閉め、エアコンをつけた。


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