ダイシゲさん

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監獄

18/05/13 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 ダイシゲ 閲覧数:70

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 囚人番号28号と31号は、刑務官の隙を見て、風呂場の高窓から風呂場の屋根に出た。
「でどうする」
31号は、隣の建物の屋根を見ていた。
「まず、隣の建物の屋根に飛び移ろう」
28号は、屋根の平らな部分で助走して、ジャンプして隣の建物の屋根に飛び移った。31号も助走してから飛び移ろうとし
た。隣の屋根に着地したもののバランスを崩し、倒れそうになったが、28号が腕をつかんで引き寄せた。

 28号と31号は隣の建物の屋根に這い上がった。周囲を見回すと夕闇がかなり濃くなってきていた。
「ちょろいもんだな、後は、この屋根を降りれば、多分、塀の外だろう」
31号は、嬉しそうにしていた。28号は、屋根の下方に目をやり黙っていた。
「31号、塀の外は空だ」
「なんだって、そんな馬鹿な」
31号も屋根の下方を見る。
「ここは浮遊監獄なんだ。だから警備が手薄なのか」
28号は、全身の力が抜けてしまった。
「塀の向こうは、パラシュートでもないと無理なのか。えっ」
「こうして呼吸ができるのだから高度はせいぜい4000から5000mぐらいだろう」
「入所した際に、頭痛があったのは、このせいか」
「ここから生きて戻ったものはいない。刑期を務めて殺されるか、飛び降りるしかないのか」
28号はため息をついた。
「もしかすると、ここが悪名高い日本人絶滅収容所か」
31号は、天を仰ぎ見ていた。
「たぶんそうだ。東アジア共同体が、日本政府のでっち上げって言っていたものだろう」
「だから左翼の批判記事を書いただけで投獄ってわけか」
「31号、お前もそうだったのか。俺はてっきり人殺しでも…、まあ、とにかく、なんとしてでも、生きてここから脱出して、この事実を暴露しなければならない」

 夕日は完全に姿を消して、星々が輝き出していた。28号と31号が脱走したことは、わかっているはずだが、行き場などどこにもないので、警報などは一切なっていなかった。
「31号、どうしてこの監獄は浮遊していられるのだろう」
「そんなこと、俺がわかる分けないだろう」
「もし浮遊板のようなものがこの監獄の下に敷き詰められているのなら、それを剥がせないかな」
「浮遊板?だいたいそんなものあるのか」
31号が首を傾げているが、28号も首を傾げていた。

 28号と31号は、浮遊監獄の最下層に忍び込んでいた。
「このハッチを開ければ、多分外に」
28号は、ハッチの留め金を外す。ハッチが開き、下界の夜景が見えた。風がハッチから吹きあがってくる。28号は31号に足を持ってもらい、ハッチから首を出して、監獄の底面を見ていた。
 「行けるかもしれん」
28号は、一旦、首を引っ込めて、ハッチを閉めた。
「どう行けるんだ」
「底面の浮遊板パネルは簡単に外れるし、電源から切り離されても、すぐには落下しない。徐々に落ちていく」
「それじゃ、パラシュート代わりになるのか」
「ただ、人ひとりを乗せるとなると、2畳分は必要だろう」
「二人で4畳ってわけか、無理だ」
31号は、絶望的な顔をしていた。
「いや、あのコンテナーを見ろ。予備のフロートパネルと書いてある。あそこにあるだろう」
28号が言うが、31号は、半信半疑の表情を崩さなかった。
 28号がフロートパネルの電源ソケットにケーブルを挿す。この最下層は、メンテナンスの用具が数多く置いてあった。1時間程で、パネルは浮力で天井まで浮き上がってしまった。28号と31号は、4枚のパネルを引きずりおろして、ハッチから外に出した。
 ハッチの下には、フロートパネルがあり、魔法の絨毯のように浮いていた。
「28号、これでソケットを外してもすぐには落ちないのだよな」 
「ここまで、来たらやるしかない」
28号は、ケーブルを引き抜く。括りつけられた4枚のフロートパネルは、28号と31号を乗せたまま、浮いていたが、数秒後、ぐぐった下がった。またしばらくするとくぐっと下がる。断続的に高度を下げるフロートパネル。
 だが、高度は3000mぐらいはあり、地面までは遠かった。徐々に落ちる距離が大きくなっていった。
「28号、いつまでもつと思う」
31号が言った瞬間、フロートパネルは、落下し始め、今度は止まらなかった。
「まずい、あぁ、」
28号は落下の加速度に思わず声が出てしまった。
「一人なら助かるだろう。俺の方が体重がある」
31号は、ぼそりと言い出す。
「お前、まさか」
28号は、31号の腕をつかもうとするが、するするとすり抜けていく。
「31号!」
28号が叫んでいる下方へ31号は落下していった。
 28号が乗っているフロートパネルは、落下速度を緩めたものの、落下はしていった。最終的に森の木々の上に落下し、28号は、枝で血まみれになりながらも、地面にたどり着くことができた。


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