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一青アランさん

音楽作品を読み取ることが昔から趣味でした。音楽と言葉に関わる仕事がしたく、社会人になって、通常の仕事と併せてアナウンススクールに通い、DJ、放送作家コースを卒業。その後はコミュニティfmやネットラジオでラジオのパーソナリティを担当したり、放送作家さんのもとで原稿を作成したりしてました。 現在もブログで和訳したり、世の常についていろいろ綴っています。

性別 女性
将来の夢 英語で詩や小説、文章を書き、世に発表する。
座右の銘 To see a World in a Grain of Sand And a Heaven in a Wild Flower, Hold Infinity in the palm of your hand And Eternity in an hour ひと粒の砂に世界を見つめ 荒野の花に楽園を見よ 手のひらに無限をつかみ ひとつの時間に永遠を抱け

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薄い白菫色

18/05/03 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 一青アラン 閲覧数:71

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一週間という区分の中央付近である水曜日。
パソコンのキーボードが叩かれる音と、電話のけたたましい呼び鈴が不協和音を織り成すオフィス。

「今週末は何か予定あるの?」
同僚が私に聞く。
私は答える。
「特にないよ。」
「そうなんだ。何か楽しいことないかね。」
同意を求めるように、椅子の背もたれに沿って背中を伸ばしながら呟く同僚。
私は無言の回答をし、パソコンのタイピングを続ける。

この巷でよく聞くようなやり取りを、私は以前より少々不可解に感じていた。
週末を特別なものだと感じる習慣はどこからきてるのだろう。金曜日の夜を至福のカーニバルと感じ、月曜日の朝を強いられた憂鬱だと感じるこの習慣。


18:00。仕事から帰る途中、空を見上げた。この行為は私の自発的な仕来たりである。
右側の空で太陽は、自身の体を完全に隠されながらも強いオレンジ色の余韻を右方空に残している。左側の空では青藤色の中でまだ自身を主張しきれない下弦の半月が朧げに存在していた。
右空のオレンジ色から左空の青藤色へ変化して行くグラデーションの空。
色相環で真逆に位置する二つの色の境界線には薄い白菫色の空間が漂っていた。

この上なく美しい葛藤の空間だった。

高揚を求める橙の空にも、沈静を案ずる寒色の空にも属することが出来ない葛藤の色だ。

空を恍惚な表情で魅入る私の横を、通学坊とランドセルを身に付けた子供たちが駆け抜ける。
「今週末はお父さんと遊園地に行くんだ」
ひとりの少女が目をキラキラさせて友達に話している。
「いいね!何乗るの?」
と友達が少女に聞く。
また別の少年が
「俺は、超早いジェットコースター乗ったことあるよ!」
と意気揚々と言い出した。
子供たちのはしゃぎ声が遠のいて行く。
私はとても穏やかな気持ちだった。同時に虚空の白菫色の空を強く感じた。

この空間は時を選ばずに私の中の空を漂っている。
でも私はこの空間に私自身を置くことが、いわゆる私の至福の時であることをどこかで分かっている。


レギュラーだと言われる平日や特別な週末、一週間という区分や一時間という枠組みに捉われず、ひたすらゆらゆらと漂う白菫色の空間に、ひたすら私自身をふわふわ浮かばせるのがお気に入りなのだ。


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