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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

性別
将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

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空中浮遊できる能力ッ!

18/05/01 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:53

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 日常が壊れたあの日から、少年は高校からの帰宅さえすんなりさせてもらえない。
 今も人気のない路上で、敵の刺客が道を塞いでいた。 
 少年も異能力者、刺客も異能力者。通常は両者異能を見せない普通の人間な姿で出会い、そこから能力が明らかになっていくのだが、この日ばかりは違った。
 刺客が異能を最初から使っていたのである。見た目でわかる異能にして、シンプルな異能であるため、説明要らずだ。
 少年と同い歳くらいの男は、宙に浮いていた。どう見ても空中浮遊が異能である。
「珍しいパターンではあるが」
 と少年は感想を漏らすものの、
「最初から能力見せない奴でも、結局自分から能力教えてくれるか見せてくれるからな。少しばかり時間が早まっただけだ」
 異能は隠しておいたほうがバトルに絶対有利だが、敵が一人しかいない時は――異能披露でやられる役が存在しない時は――、能力を相手に伝えておかないといけない、問答無用で倒してしまってはいけない。異能バトルにおける暗黙の了解というやつだ。
 さて、最初から異能を見せている刺客はすでに戦う条件を満たしており、いつ戦いが開始してもおかしくないのだが……特に戦いは起こっていなかった。刺客の男はドヤ顔で自身の異能を見せつけているだけで、何もしてこない。単に少年の前方で浮いている。
 その様子に、少年はやがて重大なことに気付いた。すべてわかってしまった。何ならオチまでわかるまである。
「なあお前、飛べるのが異能力ってことでいいんだよな」
「もちろんだ。どうだ、人間の夢、男のロマン、空を飛べるのだぞ!」
「うん。羨ましくはある」
 少年の言葉に、刺客はドヤ顔を更にドヤァとさせる。が、
「で?」
「……? で、とは?」
「いやだからさ、飛べたからどうなんだ?」
「どうって、戦闘において飛べることは重大なアドバンテージだろうが」
 その通りではある。刺客の言うことはもっともであり、自慢気に見せつけたくなる気持ちも少年は理解できた。
 例えば今も昔も愛され続ける漫画、『ドラゴン◯ール』では、空中浮遊を気によって行なう◯空術が登場する。舞空◯は戦闘において有利であると共に、印象的なエピソードも多い。初登場は天下一武◯会で敵対する流派の出場者が使っているところ。大会ルールの、場外落ち負けがしにくくなり、そうでなくてもドラゴ◯ボールは気を飛ばして攻撃できるため空中からの攻撃は厄介で、非常に有利だった。同大会での決勝戦、その最後の最後で、舞◯術を使える天◯飯と使えない孫◯空との、どちらが先に場外に落ちるかの戦いにもなる。その次の天下一武闘◯では、当時ラスボス的ポジションだったピッコ◯との最終決戦で、孫悟◯勝利の決め手となったのが、これまで一度も使わなかった舞◯術。その他、舞空◯によって気(戦闘力)をスカウ◯ーやベジ◯タに察知されるかどうかの駆け引きや、人造人間編での戦わないヤジロベーの理由「飛べないから」、スー◯ーサイヤ人バーゲンセール時の「スーパー◯イヤ人にはなれるが舞空◯はまだ使えない」、一般人ビーデ◯の修行とラブコメ、更には新作アニメでは◯空術強制禁止で場外負けを可能にするなど、飛べるか飛べないかは様々なドラマ・ネタを生んでいる。
 しかしだ。よく考えれば、いや、あまり考えなくても、わかる。
 空中浮遊がすごいのは、ドラゴ◯ボールという、飛べなくても化物の連中だから成立する話。
「お前は飛べる以外に何かあるのか? 遠距離攻撃の武器とか、格闘技ができるとか」
「いや? それだと異能バトルじゃないだろ、異能で戦ってこそ」
「だろうな、言うと思った。お前らの組織そういうところあるし」
 異能抜きでいいなら、異能バトルではない理論。
 ならば意味はない。飛べるだけだと、空をふらふら浮遊することくらいしかできないではないか。バトルとして全く使えていない。
 この辺りを冷静に指摘すると、
「そ、それは認めるが……飛べるのはすごいだろ!」
「まあな。でも強くはない」
「あと、あと、飛んでいると心もふわふわして気持ちいいんだぞ」
「へえ、よかったな。しかしそれ、集中欠いて逆に欠点になってるじゃないか」
「ぐ……」
 押し黙る刺客。
 空中浮遊能力では戦えないことを両者理解してしまい、膠着状態が続く。少年もそろそろ家に帰りたいというのに。
 と、そこで突然、刺客の顔が明るくなった。
「ははは! この能力にもバトルでの使い道あるぞ! お前ではまず対応できない。飛べる奴を追いかけるのは無理だろ!」
「ん? うん」
 刺客はおもむろに、思い付いたその行動を取った。
 空飛んで逃げた。
 バトル唯一の使い道だ。
 少年は生暖かい目で見送りながら、脅威は去ったからと、さっさと帰宅した。

(了)


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