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nekonekoさん

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小さな赤い花

18/04/30 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:146

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 雨音が聞こえて来た。寝入り端の僕は、まだ半分うつらうつらしていたがその急に降り出した雨は僕を目覚めさせるのには十分過ぎる程の音だった。雨音はゴーと唸る程の音で、言い換えれば滝の流れ落ちる様な激しい音に似て居なくもなかった。幸い、風は吹いてはいない様だったが、雨の勢いは微かにだが部屋全体を揺らす程でもあった。完全に覚め切った僕は、しばらく雨音に耳を傾けて見た。雨音は時折強弱を交えながらも激しく降り続いている。それから、隣に寝ている民子の事が気になった。半分体を起こし見ると、民子はこの激しい雨音に気付いていないらしく静かな寝息を立って居た。「助けて」不意に雨音に混じり小さな声が聞こえて来る。思わず僕は民子を見た。が民子は変わらずに寝息を立って寝ている。寝言か。と思いながら目線を戻し耳を済ましてみた。もう一度聞こえてくるかもしれない。間が空き。今度はもう少し大きな声で聞こえて来た。「助けて」民子の声ではない声。「君は誰」辺りを見回すが人の気配は無い。外か。思うと自然と体が動き玄関のドアの前にまで行くと耳を澄ましてみた。「早く助けてよ」外からだった。ドアを開ける。外は地上に叩き付けられた雨が跳ね返り細かい粒の様になって霧の様に舞い上がっていた。「助けて。こっちよ」反射的に僕は声のする方に向かって走り出していた。雨は容赦なく僕の体を包み込む。暫く走っていると着ていたパジャマはグチャグチャになり、額や頬うから流れ落ちてくる雨と汗の混じった塊の様な粒は口の中へと入り込んでくる。ゲホ。雨のせいで酸素濃度が低くくなっているのか、息が苦しくなり、時折、むせる様な咳が出た。苦しい。もう止めよう。そうだ立ち止まれば楽になる。でもそ思う度に「助けて」の声が聞こえて来る。その声は、僕の意識とは反対に体の方を勝手に動かしていた。
 二時間。否、三時間が過ぎた様に思えた頃、雨が止み始め出し東の空には僅かに薄日が射し始め出して来ていた。それでも、声は聞こえ続けて来る。「助けて」空耳に思いたいが、声は段々と力強くなって来ている様に思えていた。
 「君は誰」「僕はどこまで走って行けばいいの」時折声に問いかけてみたが、答が返ってくる事はなかった。それから、更に一時間程が過ぎて来ると、通りを歩く人の姿が見え出して来た。体は既に限界にまでに足して来ている感があった。もう無理だ。体自身がそう喚く。後少し。彼処まで。と思いながら走り続けて来たが。足元の力は少しづつ抜け出し始めてきた。そして、速度が落ち出した時、「ここよ」不意に声が聞こえた。それを合図にするかの様に僕の体の中から力が一気に抜け落ちて、その場に倒れ込む様な感じで座り込んでしまった。排水溝の上だった。先程まで降っていた雨のせいか、水が怒号の様に流れ込んで来る。「ここよ。早く、顔を上げて」言う通りに顔を上げて見ると。排水溝の先に小さな赤い花が一輪咲いていた。そして、何処からか流れて来た大きなゴミの塊に押し流れそうになっていた。声は花だったのか。「君が僕を呼んだの?。」「そうよ、私よ。早く助けて、流されちゃう」僕は立ち上がると膝下辺りまでに溜まっていた水の中を歩き、ゴミの塊を退け、根ごと花を引き抜いた。「ありがとう。お陰で助かったわ」「でも、何故君は僕を呼んだの?」「あら、私を覚えていないの?」「えっ」僕は赤い小さな花を見詰めた。「どうも、分からない様ね。私はあなたの亡くなったお母さんが好きだった花」「母さんが好きだった花?」僕は改めて花を見詰めて見た。言われれば何となく見覚えがあった。母が亡くなってから二年が過ぎていたが。「どう思い出した?」「ああ、何と無く」「私、貴方のお母さんに頼まれたのよ
貴方とお父さん仲が良くないでしょう。だから、仲良くさせてって」「母さんが?」確かに母さんが亡くなってからは父との関係は良くはなかった。「でも、私にも出来る事と出来ない事があるの。でも、貴方は私を助けてくれたから特別頑張ちゃう。私が、貴方とお父さんとの間の蟠りを何とかして上げるわ。後ろを見て」僕は言われるままに後ろを振り向くと。そこに父さんの姿があった。「お前こんな所でなにしているんだ?」「うん、いや。この花に導かれて走っていたら。それより父さんこの花母さんが好きだった花なんだって」「花に導かれてだって」父さんは花をじっと見詰めた。それから「この花は」と思い出す様に言い続ける。「この花は母さんが何かの頼み事をする時にこの花を前にして御願いをしていた花だった」「母さんが、そんなに僕と父さんの事を」「母さんが導いてくれたんだ。俺も朝起きたら、無性に出掛けなければという気持ちになって歩いていたら、お前を見つけたんだから」
 その後、花が何かを語て来る事はなかった。ゴミの塊に押し流されそうになっていた花は実家の庭先に植えられている。


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