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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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エンドレスドリーム

18/04/30 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:162

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 映写士にぶら下げられて拘束椅子に座らされる。スクリーンに何も映らなかった場合ゴミとして廃棄されるのだが、その際の逃亡を懸念してのことらしい。そんな心配をしなくても、僕ら夢魂はゴミになることを恐れてはいないのだけど。
「そんなことないよ、僕はやだよ」
「アサだけだよ、そんなこと言うの」
「そうだよ、ここがそんなに好きなの? 変わってるな」
 僕ら夢魂の中で、一人、アサだけがホワイトスクリーンを恐れていた。
「僕はここの暮らしを気に入ってるよ。お客が喜んでくれるし、館主に褒められて日当が増えるのも嬉しい。明日はもっと面白いゆめをって、寝場所を探すのはやりがいを感じるよ。みんなもそうだろ?」
「まぁね。お客がうけていれば悪い気はしない。ゆめが色数増やすように、声の束を複雑にするように、寝場所に凝るのも楽しいさ。昨日は北の洞窟でオオドクコウモリに抱かれて寝てきたんだ。今日もらえる日当はそりゃ楽しみさ」
「僕もさ、昨日はヒトクイカズラに呑み込まれて寝てきた。おかげで足がトロトロに溶けてしまったけど、今日の映写が楽しみだよ」
「ほらね、みんなそうじゃない。ゴミになったら終わりだよ。そんなの嫌だろう?」
 アサは僕らの寝場所を聞いて奥歯をゴリゴリやりながら目を黒黒させていた。誰よりもゆめのできにこだわるんだ。でもね、アサ。毎日をせめて楽しもうとするってことと、終わりを求めないってことは違うことだよ。
「ゴミになって終わり、それも悪くない」
「あぁ」
「どうしてさ?」
 どうして。僕にも言葉を借りて説明することはできる。他のみんなにもできるだろう。でも、アサの耳を通過してまだ言葉としてあるかに自信がないから、誰も何も言えないんだ。それは全部、アサのせいなんだ。
「みんな、変だよ」
 自分のおかしさに気付かないで、僕らに変を押し付けてくる。ホワイトスクリーンに怯えることで、今日のゆめのできを誰よりも良くして、アサは人気だった。
 廃墟と化したスタジアムを改装して映写室がたくさん。僕ら夢魂の数と同じはずだろうけど、映写室の数も、夢魂の数も数えきった者はいない。寝て、映写されて、談話サロンで話しをして、食べて、時にスポーツの真似事なんかもして、また寝る。僕らの生活に、正しい映写室の数も、正しい夢魂の数も、あまり重要なことではなかった。
 ズボンとした黒い衣を着て映写士は僕らをぶら下げる。映写開始の時間になると、僕らが何処にいても駆けつけて、衣の中に収めた腕で、衣越しに僕らを掴んで。ぶら下げられて移動する長い廊下。開かれる重い扉。何処も変わらない映写室と拘束椅子。分厚いガラス越しに見えるお客たちの頭。揺れる肩。カラッポの笑い声。映写が終わる。椅子から解放されて自室に戻る。館主室に繋がったダクトを滑る。日当を受け取って、滑り落ちてきたダクトを這いずり転がって自室に帰る。ゆめのために寝場所を探して出かける。この繰り返し。アサが好きだというここの毎日。アサが失うことを恐れているここの毎日、僕は、好きじゃない。僕は、スクリーンが白いまま、お客が怒りだし、映写士が慌てて僕をゴミ捨て場に処理することを、お腹の隅っこで望んでいた。なのに、お腹の中央が美味しい日当を求めるので、すっかりできのいいゆめを求めて歩きだすのだった。悲しい。
 アサだけだ。ホワイトスクリーンを怖がった。怖がることができたのは。アサだけだった。
「なにがあったの?」
「凄い歓声だった。スタジアム全体に轟いて、響いていたね」
「とんでもなかったよ、お客が殺到したんだって、アサの映写室だって」
「アサの?」
「あぁ。僕だ。ホワイトスクリーンが出たんだ。僕は、昨日頑張りすぎて目を水圧で潰してしまったんだ」
「ホワイトスクリーン?」
「なのに、談話サロンにいるの?」
「アサ、君は、ゴミじゃないのか?」
「怖かった。映写室に夢が見えなくて、でも、驚いた。音と声が、お客を楽しませたんだ」
「音と」
「声」
「お客はみんな大喜びだったって。日当はいつもの三倍もらえた」
「ホワイトスクリーンに音と声だけで?」
「お客は満足?」
「うん」
 僕はその日、海を潜った。水圧に負けて、目がボンっと破裂した。眠った海岸で鳥に突かれて目を覚ましたら、映写士が僕をぶら下げた。
 ホワイトスクリーンに、音と声だけのゆめ。
 その日、アサ以外の夢魂は全部、ゴミになった。
 それと引き換えに、アサの目がまた見えるようになったらしいと、ゴミになった僕の耳に、隣のお客が囁いた。
 


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