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まきのでらさん

某老舗同人集団所属。 キャリアだけは無駄に長いです。 よろしくお願いします。

性別 男性
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ご主人の流儀

18/04/29 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 まきのでら 閲覧数:121

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 ウチの近所に物を溜め込む体質の男が住んでいる。
 いわゆるゴミ屋敷のご主人というヤツで、町内会でも度々問題になっていた。
 しかしその種の人間らしい偏屈者なので、触らぬ神に祟りなし、と誰も文句を言えないのが現状だ。
 ご主人にとっては溜め込んでいるのはあくまで必要な物でゴミなどではないのである。
 
 その証拠となる出来事がこの間、あった。
 
 学生が悪ふざけでゴミ屋敷の隅にジュースの空き缶を置いていったのだ。似たような物が散乱しているのだから分かるまい、と思ったのだろう。
 しかし、翌日には空き缶はキレイに片付けられていたのだという。
 ご主人にとっては自分の溜め込んだ物と他人の放置していったゴミとの区別が出来ているということである。
 私はその話を聞いて感銘を受けた。ご近所に迷惑を掛けるのはよくないが、自分の流儀をキチンと持って貫いているご主人が、何とも尊い存在に思えたのである。
 なので私はある日、ご主人の屋敷の玄関と覚しき場所に、まだ栓の開いていない缶コーヒーをそっと置いておいた。
 
 すると興味深いことが起きた。
 
 翌日、屋敷の前を通り掛かると缶は消えており、なんと代わりに百円硬貨がポツンと一枚、置かれていたのである。
 おそらく代価、ということなのだろう。
 やはり自分のこだわり、流儀にどこまでも忠実な人なんだなあと感心し、ならばその流儀に従って有り難く頂いておこうかと思ったその時、学校帰りの学生が、ラッキーとばかりに得意げに拾っていってしまった。
 その光景を見て、この屋敷のご主人の想いなどはどこまでいっても誰にも汲まれず、理解もされないのだろうなあと、私はそこはかとなくやり切れない気持ちになったのだった。 了


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