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いっきさん

公務員獣医師として働くかたわら、サイトを中心に創作に励んでいます。

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ゴミ交換所

18/04/21 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:1件 いっき 閲覧数:119

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 いつも通りの朝。私はいつものゴミ置場へゴミを捨てに行った。
 ここら一帯の住人達がゴミを捨てるゴミ置場だったのだが……その日はどういう訳か、状況が異なっていた。
 『ゴミ交換所』との立て看板とともに、その管理人らしき者が椅子に座っていたのだ。
「あの……邪魔なのだが」
 私はゴミ置場の入口で、まるで通せんぼをするかのように座っている彼を退かそうとした。
 しかし……
「どれと交換されますか?」
「は?」
 交換……?
 どういう意味か、分からなかった。
「いや、交換って……私はゴミを捨てに来たのだが」
 すると、彼は目を瞑り、首を横に振った。
「今のこの時代……皆が出すゴミが溢れて、大きな社会問題となっています。だから、ゴミを捨てるなどということはやめ、『交換』という手法を取ることに統一されたのです。だから、あなたはそのゴミを捨てることはできません。ここにある、どれかと交換して下さい」
 その言葉に私は首を傾げた。
「おかしなことを言う人もいるもんだ。まぁ……ここで下手に言い合いをするのも良くないか。他所を探しに行こう」

 私はいつもの場所を離れて、少し遠くのゴミ置場を訪れた。
 しかし、そのゴミ置場にも同じように『ゴミ交換所』との立て看板に管理人が座っていた。そして、先程の交換所の管理人と同じことを言うのであった。

 だから、私は次の元ゴミ置場、さらに次の元ゴミ置場を訪れた。だがしかし、どこでも状況は全く同じで……私はついに根負けして、その日のゴミと、とある交換所に置かれていた中古らしきノートパソコンを交換した。

 次の週も、その次の週も、状況は変わらなかった。しかしそれにともない、私はコツを覚えていった。
 デジタルカメラに自転車、スマートフォン……交換所にあるゴミにはかなり豪華なものもあったのだ。
 私はただの家庭ゴミとそれらを交換し、リサイクルショップでお金に替えるということを始めた。
 それはある意味、良い商売で。私の懐はどんどん潤っていった。

 そんなある日のこと。家に警官が押しかけて来た。
「お宅がリサイクルショップに売った製品の中に、盗難品が含まれていたのですが」
「えぇっ……いや、でも。あれはゴミ交換所で交換したものなんですよ」
「それは自己責任ですな。ゴミ交換所のものとはいえ、盗難品を選んだのはあなたです。その責任は取っていただく必要があります」
「そんな、無茶な……」
 盗難品とは知らなかったということで私は実刑は免れたが、罰金刑が課せられてゴミをリサイクルショップに売って得たお金は全て奪われた。

 私はゴミ交換所の管理人に文句を言った。だが、管理人も言うことは同じで……ゴミの選択は自己責任とのことであった。

 その日。私がゴミを持って行くと、やはり『ゴミ交換所』の立て看板と、通せんぼするように座る管理人がいた。
「どれと交換されますか?」
 管理人の口からはお決まりの文句が出る。私は深く溜息を吐いた。
 やっぱり……明らかに盗難品ではないような、家庭ゴミみたいなのと交換する他はないのか。

 諦めかけたその時。私の目の端に、交換所のゴミ袋の下からもぞもぞと出てきた緑色の甲虫が目に入った。
 私はそれを指差した。
「それ……その虫。それと交換します!」

 私は家でその虫を入れたケースを見て微笑んだ。
 昆虫学者の私には分かる。その虫は新種のゴミムシ。学会で発表すれば、リサイクルショップで得たお金なんかの何百倍もの財が手に入ることになる。
「ゴミ交換所も、たまには良いことがあるもんだなぁ」
 私はそっと呟いた。


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このストーリーに関するコメント

18/04/23 文月めぐ

拝読いたしました。
ゴミを交換するという発想、おもしろかったです。
お金に執着があるような主人公ですが、本当に儲けることができたのか、続きを読んでみたい作品でした。

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