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トミザワ 鏡太朗さん

しいたけの事について真剣に考えている

性別 男性
将来の夢 物を書いてお金になればいいな
座右の銘 最悪死ぬだけ!!!

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君に続く道

18/04/20 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 トミザワ 鏡太朗 閲覧数:174

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「あなた、ガレージのバイクなんだけど…」

あぁ、女房という生き物は、どうしてこうも同じ事を何度も言うのだろうか。
バイクの買い取り業者のCMを見る度に、せっつかれる俺の気持ちにもなってほしいものだ。


「分かってるよ。捨ててほしいんだろ?」

「あっても乗らないじゃないの。」


子供がいる人が持つ趣味じゃない、事故を起こして死んでほしくない。
そんな女房の説得に根負けしてバイクを降りて、もう17年になるのか。

ガレージの大きな車の横にひっそりと置かれている【彼】は、間違いなく俺の人生の相棒だ。
映画トップガンでトム・クルーズが乗っているのを観てから、ずっと憧れていた。


「それはそうだけどなぁ…俺にとっては思い出だしなぁ…」

「あのねぇ、乗らないバイクなんてただの鉄屑なのよ?場所だってとるし!」


男の浪漫なんてもんは、女房を目の前にするとこんなにも脆いものなのだろうか。

確かに今の移動手段は専ら車だ。10分も歩けば地下鉄の駅もある。だが、違うのだ。
俺の浪漫は、目的地まで優雅に運んでくれる箱じゃない。シートベルトも屋根もない2つのタイヤは、少し俺を不安にさせるけど、一緒に走る道を考えて、砂利道も山道も細い道も限界まで突き進んでくれる相棒なのだ。

「なぁ、俺やっぱりもう一度…」

「父さん。」

「あぁ海斗。帰ってたのか。」

1枚の紙を持って、神妙な面持ちをしている息子の顔がそこにあった。

「ただいま。そんなことよりこれ。」

定期テストの順位表だった。

「今回のテストで上位15%以内に入ったら、1つ願いを叶えてくれるって、覚えてる?」

「あー、そういえばそんな事…」

「僕さ、二輪の免許取りに行きたいんだけど。」

俺は、この時を待っていたのかもしれない。
後頭部を殴られたような衝撃が走った。

「今なんて?」

「父さんのバイク、僕にくれないかな。」

親子とは、似なくてもいいところが似るものなのだろうか。

「あれは俺の相棒だ、お前にはやらんよ。第一、もうずっと眠らせたままだ。だから…」

ふと蘇る。
はじめての彼女を後ろに乗せて、星を見に行ったこと。
海を見に行くと言っていたのに雨が降り、車を持っていないことをひどく責められたこと。
後日晴れた海で、プロポーズをしたこと。
はじめての彼女が妻だなんて、本当にいいの?と苦笑いしたあいつの顔。

「大切に、乗ってくれよ…」

原因不明の涙が溢れて止まらなかった。
かつての相棒。
いつの間にか鉄屑扱いをされていた。

これからは海斗、お前の相棒だ。
お前に必要とされた瞬間から、ゴミなんかじゃない。


これからどんな道を走るのだろう。
後ろには誰を乗せるのだろう。

それは俺じゃなく、君に続く道。


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