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小峰綾子さん

性別 女性
将来の夢
座右の銘 笑う門には福来る

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ゴミにまつわるストーリー

18/04/11 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 小峰綾子 閲覧数:193

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「柏木さーん、来たよ。朝から悪いね」
朝7時、ルイさんがゲートの前に立っている柏木さんに声をかけ、軽トラを横付けする。
「今月は発掘作業が活発だね。あ、エミちゃん、おはよう」
「おはようございまーす」
私は「リサイクルマートZ」のアルバイト、ルイさんは店長だ。柏木さんは、廃棄物回収会社を運営している社長さん。私たちは定期的にこの廃棄物一時集積所に来て、店で売れそうなものを「発掘」に来るのだ。

「ルイさん!このカラーボックスとかどうです?あ、電子レンジもある。」
「電子レンジは動作確認できないと売れねぇからなあ。なんか古そうだしやめとくか。カラーボックスはいいかもな。一人で運べるか?」
「そんなに重くないんで大丈夫です。」
「この学習机は解体して棚とデスクに分ければ商品になりそうだな」
このように私たちは集積所に置かれた廃棄物の中から売り物になりそうなものを探して軽トラに積み込むことを繰り返す。

一通り作業を終え、8時半。ルイさんが自販機で買ってくれたコーヒーを飲む。
「まだ全然使えるものだらけですね。勿体ない。私ならもっとボロボロになるまで使うか、それこそリサイクルショップとかに売るなあ」
「まあ、古いものを捨てることで新たに一歩踏み出せるとか、そういうこともあるんだよ」
「ただの人間のエゴじゃないですか。物には罪はないです。発掘作業はやっぱりちょっともやもやしますね」
「俺はさ、ゴミ一つとってもストーリーがあるという前提でいろいろ妄想してみるのがいいなと思ってる」
「変な妄想ですか?」
「バカ。ほれ、例えばこの学習机」
ルイさんは軽トラに積んだ学習机を顎で指す。
「小学校上がる時に買ったものだろうけど、高校卒業して、一人暮らしを始めるからもう必要なくなったのかもしれない。もしかしたら事故か何かで持ち主が亡くなった、と言う可能性もある」
「そっちはあまり考えたくないですけどね」
「まあ、物を捨てるのにも理由があるってことだ」

我々はほかのお客さんや業者が出入りする9時までには撤退しなければならない。時刻8時40分。そろそろ軽トラに乗り込もうかというところで、ゲートのところに乗用車が止まった。運転席には40代ぐらいの男性が座っている。そして助手席から高校生ぐらいの女の子が降りてきた。その子は受付にいる柏木さんのところに走っていって「すいません!昨日出した熊のぬいぐるみ、まだあります?!」息を切らしてそう聞いていた。

私とルイさんは顔を見合わせた。1メートルほどの大きな熊のぬいぐるみ、まあまあ綺麗なので十分売り物になりそうだということで持っていくことになっていた。柏木さんの視線で、後ろに停まっていた私たちの軽トラにぬいぐるみが積まれているのに気づき、少女の顔がパッと明るくなった。

「すいません、その熊、昨日出しちゃったんですけど、ちょっと気が変わって…まだ間に合うなら一回持ち帰ってもいいですか?」
「大丈夫だよ」
ルイさんは荷台に乗り、ぬいぐるみを抱えて少女に渡した。
「持ち帰るのは構わないのだけど、一度清算が終わっているものは返金ができない規定なのだけど大丈夫かな?」
柏木さんが少女に聞いていた。
「分かりました。大丈夫です。間に合って良かった。ありがとうございました。」
少女はぬいぐるみを抱えながら車に戻ろうとしたとき
「あの、どうして気が変わったんですか?」
私はつい口に出していた。柏木さんもルイさんも「え?」と言う顔をしている。
「あ、えっと、特に他意はないんですけど、なんでかなって、単に興味本位で・・・」
少女はぬいぐるみを見つめた後こう言った。
「私にはもう必要ないからと思って他のものと一緒に持っていってもらったんですけど、ぬいぐるみとかまだ使えるおもちゃは児童養護施設に寄付する方法もあるって昨日たまたま何かで見て。私も小さい頃は一緒に寝たり、大事にしてたのを思い出して。また他の誰かにかわいがってもらうことができたら、断然その方がいいかなと思ったんです」
少女は大事そうにぬいぐるみを抱えて車に乗り込み帰っていった。

帰る道すがらルイさんはどこか機嫌がいい。
「リサイクルショップだって気づかれなかったですかね。」
「まあ、大丈夫だろ。」
「でも、良かったです。ルイさんの言う通り、ゴミ一つにもいろんなストーリーがあるし、場合によっては別の道もあるってことですね」
「しかし、そこそこの値段で売れそうなモノだったから惜しかったなあ。」
「いいじゃないですか、寄付された施設で、誰かが大事にしてくれますって」
そんな会話をしながら、誰かの「ゴミ」となったものに新たな道を見つけてあげるために、ルイさんは軽トラを走らせるのであった。


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