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斎藤緋七(さいとうひな)さん

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性別 女性
将来の夢 食べても太らない身体になること。
座右の銘 左右の眼はコンタクトです。

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姥捨て山

18/04/05 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな) 閲覧数:107

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私は「ゴミ」だから、仕方がなかったのさ。

「お母さん、この道を進んで。川を渡って、いいね。」
私は79歳だった。
「仕方ない、私はもう働けない、ゴミみたいなもんさ。」
息子は、「ごめん。」としか言わない。」
村の誰かに言われたんだろ。
あんなゴミ、生かせておくなって。」
「山神山の山道に辿りつくのは困難だが、先には、夢のような土地が広がっている。」
優しい息子は私を可能性のある山神山の入口まで連れて行ってくれた。
「あんたの楽な方で…同じ口減らし、生きたゴミ減らす事が出来るなら、私は何でも良かったのに。」
「この先には天国みたいな『山神村』がきっとある。お母さん、元気で。」
何度も後ろを振り返る息子を見送りながら、杖をつき、山神山の中心部に辿りつくはずの一本道を歩き始めた。
川は越えた。
私は疲れて寝入ってしまった。
「お姉さん。」
私は揺り起こされて目をやっと覚ました。
「うちの敷地内で倒れられていたので。」
「お姉さん、どこの村の方ですか?」
「私は南村の、ミチと言います。」
「お年は?」
「今年80になります。」
「あなたもそうでしたか。」
助けてくれた27〜8歳の男は言った。
「ミチさん、ここは本当の天国とはまた別の『天国』なんです。
この山神村は『50〜60歳若返る村』としてこの山奥の平地に永く存在しています。」
「今の年齢は?」
と聞かれて、
『二十歳』です。」
「ああ!やっぱり!」
「ようこそ!『山神村』へ!」
村人がわらわらと寄って来た。
今は18歳だという一郎は言った。
「久しぶりの『移住者』」ね。
14歳の女の子は言った。
「この村には何人ぐらい、人がいるのでしょうか。」
「30人くらいかな。もう人生を満喫しきって自分で『本当の天国』に行ってしまう人も多いからさ。」
「ミチさん、私、ツギコ、72年生きてるけど、21歳です。私の隣に空き家があるからそこに住むといいわ。昨日、ミチさんがここで寝ている間に掃除しておいたから。」
「ありがとうございます。」
霧の中のような話だった。
村には土間の広い家が多く、ミチの家はこの前まで住んでいた家と、感じが良く似ていて、とても住み心地が良かった。

住んでみると色々なことが見えてきた。
ミチのように入って来る人もいたが、
たまに、ふらっと、姿が見えなくなる人がいるのだ。
誰かに聞いても「帰ったのさ」としか、言わない。
「単に帰ったのさ、元いた土地に。」
元いた土地?
ミチは、「長老」に聞いてみた。
「帰れるよ。
あんた、来てから何年になる?そろそろ帰るかい?
もう、村に帰っても働ける。生ごみ扱いされることないじゃろう。」
「帰りたいです。」
ミチは言った。
「なら、帰るといい。
この村ではあんたは永遠に二十歳だ。
しかし、元いた村に帰ったら、
皆と同じように年を取る。
それでも、いいかい?」
「はい。かまいません。」
「そういえばあんたがこの村に来たときは、半月の夜だったな。今度の半月の夜に、村の隅にあの神社に参ってみなさい。」
半月の夜、ミチは村の隅にある神社に参ってみた。
手を合わせて祈ってみたら、
急に身体が熱くなって、
バタリとミチは気を失って倒れてしまった。
そして、目が覚めたら、
息子の顔があった。
「ここは?」
「信じられない、若いけどお母さんだね?」
五作が目に涙を溜め、ミチの顔を覗き込んでいる。
「…五作?」
「やっぱり、お母さんだ!」
「ここは…南村?」
「そうさ、若返ったんだね。
二十歳前後にしか見えないよ。お母さん!」
「五作、母さん、帰ってきたの?」
「そうだよ、お母さん。」
五作は言った、
「一緒に暮らそう!その若さなら、バリバリ働ける。もう、村の誰にも『生ゴミ扱い』されなくてすむ。
母さんは畑仕事が好きだったろう?」
「五作?ヨリや子供らは?。」
「おかげさまで元気だ、一番上の娘がもうすぐ嫁ぐ。お母さんと呼ぶとまずいから、村の皆には預かってる親戚の娘という事にして。
お母さん、これから恩返しさせてくれ!」
名前…ミチはまずいし、お母さんと呼んでもまずいから、スエちゃんでどうだ?
お母さんは確か末っ子だから。」
「それで構わないよ。」
息子は私を抱きしめた。

ミチは五作とヨリと畑で楽しく働き、
孫も全員手を離れていった。
まだ若いミチを残して、
五作とヨリは亡くなった。
息子夫婦が亡くなってからもヨリはずっと、南村で暮らし、孫や曾孫の面倒を見ていた。
「ここまでが、
おばあちゃんが経験した話なんだよ」
「おばあちゃんは、何年生きているの?」
150年くらいかねえ。
まさか自分が平成の世まで生きるとはね。」
曾孫に
「今の話は誰にも言っちゃ行けないよ。」
と念を押した。
「そろそろ、あたしも天寿をまっとうしたくなってきたねえ。」


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