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林一さん

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復讐のゴング

18/04/02 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 林一 閲覧数:53

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 ボクシング世界フライ級王者として十度の防衛を成功させてきた私川中俊介は、タイトルを返還して階級を一つ上げ、二階級制覇に挑戦することを決意した。年齢的に考えて、今回の試合が最初で最後の挑戦になるだろう。
 対戦相手は、スーパーフライ級王者のネラだ。三度の防衛に成功している強敵だが、ベストを尽くせば勝てない相手ではない。私は二十年のボクシング人生最後になるこの試合を勝利で飾るため、老体に鞭を打ち、必死に体を作り上げた。
 試合当日、悲劇は起こった。なんと対戦相手のネラが、規定の体重を三キロもオーバーしてきたのだ。三キロオーバーというのは、二階級上の体重であり、当然そんな相手と試合をしては、勝てるもんも勝てなくなる。当然、試合は中止になるかと思われた。
 ところが、興行を優先させるボクシング協会の意向で、そのまま試合が行われることになってしまった。体重オーバーによりネラの王座剥奪は決まっていたものの、私が王者になるための条件は、二階級も体重が上のネラ相手に引き分けるか勝つという非常に難しいものだった。
 ゴングが鳴った。ネラの重いパンチが私に襲い掛かる。ガードをしても、二階級上のパンチ力は簡単にそれをこじ開け、もろにパンチが入ってしまう。私は一ラウンドも持たないまま、無様にKOされた。
 その後、関係者から聞いた話によると、私に勝てないと踏んだネラ陣営は、わざと体重をオーバーした状態で試合に臨むことで、王座を剥奪されてでも私にタイトルを奪われないことを優先したらしい。それを聞いた瞬間、私の心に復讐の炎が燃え上がった。

 半年後。私は再びリングの上に立っていた。相手はもちろん因縁の敵ネラだ。
 引退を撤回し再びネラに試合を挑んだ私に対して、ネラ陣営はまた同じ手を打ってきた。三キロの体重オーバーだ。しかし、そんなことは私の想定内だった。今回私は、念には念を入れて十キロオーバーの体重で体を作ってきた。ネラの野郎め、覚悟しておけよ。ボッコボコにしてやるからな。
 もちろんこの試合に勝った所で、私は体重オーバーにより王座を獲得することはできない。それどころか、世界中から大バッシングを浴びることになるだろう。だがそれでいいのだ。このことが問題になれば、ボクシング協会も今後は体重オーバーでの試合を禁止せざるを得なくなるだろう。
 卑劣な手段で私の引退試合を台無しにしたネラ、そして選手よりも興行を優先する腐ったボクシング協会への、復讐のゴングが今鳴り響いた。


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