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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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人類の不要品たち

18/04/02 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:66

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 少年が佇む一帯には、ゴミが広がっていた。比喩ではない。ゴミのようなのではなく、本物の「ゴミ」だ。
 ここにはゴミしか存在しない。世界人類は不要品の処分を、この一帯に投棄する結論に至らせた。
 ゴミ問題は、核廃棄物が国民の理解を得られている国でさえ、解決はしていない。一時的に解消しているに過ぎない。理解を得られていない民主主義国家であれば、一時的にも不可能だ。むろんゴミ問題は核廃棄物に限っておらず、例えばゴミを減らそうとしても処分の速度を上回って増えており、人類は頭を悩ませていた。
 自国を犠牲にできないという人類の共通見解により、ここを人類のゴミ捨場として活用することにしたのだった。
 ここにはゴミしか存在しない。だから、冒頭の少年も、世界人類の定義において、ゴミの一部だ。
 ゴミ扱いされている少年の瞳に、憎悪の色は浮かんでいなかった。無感情なのでも無知なのでもなく、また一種の悟りを得ているのでもない。ただ、自分のすべきことを知っており、そして人類に対しては哀れみに似た感情を抱いていた。「ゴミ」は「人間」を、愚かしいと嘆いていた。
「何故こんな簡単なことが想像できないのか」
 少年のようにゴミとして扱われた者が、大人しくゴミとして死んでくれるとでも思っているのか。
 教育の一切を受けていない無力な捨て子だけならば、あるいはそうかもしれない。また、たとえ意思と知恵を持っていても、真に不要品しかない場所ならば、為す術などないかもしれない。
 しかし真実は異なる。少年のように、教育も受け――ここには子供に教育を施せる者も捨てられている――、世界の事情や自身の境遇も知り、更にはカリスマ性を備えた頭のいい人間も居る。武器もふんだんに揃っており、国家戦争のような物量戦はできないにせよ、テロリズムなら充分に行えた。
 何故ゴミ捨場であるはずのここにそんなものがあるのか。人類としては、要は扱いに困ったモノを捨てているだけであるから、使えないゴミだけとは限らないのだ。
 強力な武器、それも国際条約に違反している武器を所持していても、ここに捨てるのならば見て見ぬふりをしてくれる。武器や核廃棄物に限らず、厄介な物はここに捨てておけば助かるからと、自国で処理せず投棄しているわけだ。
 そもそもゴミとされる物は、普通に使える物を多く含んでいる。あくまでも商業上の都合で不要になっただけだ。ここの住人はそのおかげで生きていける。
 そしてここに「投棄」される人間の存在。
 先進国で捨て子扶養の義務を果たしたがらない国家国民も少なくない。先進国でないならなおのことだ。少年も、そうしてここに厄介払いされた一人である。
 変わった人間では、宗教を利用したテロリストの主犯格というのがある。国家側も犯人を捕まえたはいいが、死刑制度もなく囚えておくと、犯人を取り返すテロとの戦いを延々余儀なくされる。なら死刑があればいいのかといえば、殺したら殺したで聖人化されてテロリストが勢いづいてしまう。まさに厄介。だから捕まえた後、ゴミとして投棄する。そうすれば、仲間も同時にゴミ捨場へと向かってくれる。
 非先進国の人口増加の弊害、人道支援の失敗も、大勢のゴミ扱い人間を生んだ。人道支援なのだから善意ではあるが、後先・現実を見ない宗教価値観によるやり方では、必然行き詰まる。経済発展の伴わない無尽蔵な人口増加は、果てのない支援を増やすばかりで、悪循環しか生まなかった。「人類とは近代化するものだ」「今は劣っている――近代化の基準による優劣――が救済できるものだ」という幻想。幻想を見る余裕がなくなった時、善意で行なっていた人道支援は、かつてない悪意による「ゴミとして投棄」という手段に至った。殺すのは人道に反するが、ゴミを捨てるのは倫理上問題ないのだと、嘯いた。
 こんな無茶苦茶な理屈が通るのは、当然決定権が捨てる側にあり、捨てられる側にはないからだ。
 しかし――。
 他人を文字通りゴミ扱いして、自分は安全圏でいられると、どうして思えるのか。少年は疑問であるし、そして、哀れに思う。これからゴミに殺されていく、ゴミの定義をした人間たち……。その先に、どちらがゴミとしてふさわしいか、とても愉快な議論が待っている。
 少年の瞳は、ゴミに囲まれたなかで、輝いてすらいた。



「いつでも世界はまとまらないのに、ここに関してはすぐにまとまるな」
「ああ、何せゴミだ。貴重な人類共通の敵。おっと、敵なんて言い方は不適切か、ゴミを敵とは言わない」
「爆撃の様子、見られる俺たちは幸運だ」
「何せ記録には残せないからな。ま、監視を頑張ったご褒美ってことで」

(了)


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