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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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ロボットのゴミ判定

18/04/02 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:67

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 若くして偉大な発明をする美人博士がいた。彼女に惹かれ、助手になりたいという男性も多く、現在の助手もその一人だ。
 彼が他の希望者と違ったのは、自身の発明によって憧れの博士を超えたいと訴えていたところだった。博士が彼を選んだのも、その意気込みを買ってのことである。
 意気込みは嘘ではないものの、助手の内心は他の希望者とさして変わりない。そんなものだ。
 今日も今日とて、助手は博士に――美人博士に、いいところを見せたいと、頑張るのだった。



「博士、ようやく動かせます!」
 これが実現できれば彼を認められると、博士も以前に語っていたものだ。
「うん、早速動かしてみよう。私の発明は結果的に社会貢献することはあっても、直接役立つものは少ないからね。ゴミ掃除ロボットはわかりやすく人々に伝わる」
 サイズは人の半分以下の、ロボット。
 これまでも似たようなものはあった。
 例えば、自律型の掃除ロボット。勝手に床掃除してくれ、動力も自分でコンセントから充電してくれる。
 あるいは変わったものでは、ゴミを放り投げれば、察知して移動しながらキャッチするゴミ箱。
 しかし今回のゴミ掃除ロボットはそんな次元ではない。もっと何でもやってくれる。片付けられない人の部屋やゴミ屋敷さえも、綺麗になる。更には室内限定でもなく、街を掃除して回ることさえできるのだ。
 このロボットがあれば、ゴミ回収の仕事や、家事としての掃除さえも、要らなくなる。
 つまり人間の仕事が減るわけだが、技術の進歩には付きものであるし、全体でみれば利益になるからこそ、技術は広まる。抵抗は、既得権益を脅かされる者によるものだ。金銭獲得労働でないものに関しては純粋に助かっているし――運動不足程度の弊害はあるが――、職業であっても、その職が失われるだけであって他に職が生まれる。当然失業者は、移り先の職場で難しかったり向いていなかったりする仕事をすることになるので、厳しいのだが。
 ただそれらすべては、助手にとって二の次だった。技術の発展こそが発明家にとって第一……というわけでもなく、美人博士にいいところを見せたいのが一番なのだから。
「では、入れます」
 助手が緊張と自信を混じえて、起動スイッチを入れる。
 まずは部屋の片付け。
 高度な人工知能と事前の利用者の情報から、的確に素早く、収納するものは収納し、捨てるものはズバッと捨てる。ゴミの分別も完璧だ。自治体によって分別の基準は異なるわけだが、世界のどの自治体の分類にも対応している。
 人間がやると面倒な作業、間違えてしまう作業も、ロボットなら二十四時間フル稼働で完璧にこなせる。
「見事ね」
 博士は満足そうで、それを受けて助手も満たされる。
 しかし博士は続けて、
「友人の部屋もお願いしよう。彼には世話になっているからね」
 博士の友人……それを聞いて助手はいい気がしなかった。人間としてあまりいい評判を聞かない。そして致命的なのは、イケメンで、美人の博士とお似合いであるという点だ。
 不満を表に出さないようにしつつ、友人宅を訪れる。先程試したようにロボットは片付けをしてくれた。博士の評価も盤石なものとなり、助手のマイナス感情もプラスマイナスゼロになった頃――、それは起きた。
「ちょ、え、何だ!」
 ロボは、博士の友人をゴミと判定、捨てようとしたのだ。
 助手の指示ではない。人工知能の判断であり、人工知能に何らかのバイアスがかかっていたとしても、助手が手を下そうとしたわけではない。裁判沙汰になっても勝てる自信はある。
 ただ、人間もゴミなら、生みの親である助手も対象になりかねない可能性に気付き、一瞬の逡巡を経て緊急停止ボタンを押した。やむなく人間をゴミと判定しないよう改良することに。
「とんでもない欠陥があったね」
 盤石と思われた博士の評価も一気に下がった。
 挽回には修正だけでは足りないと、より機能を強化して、後日披露することになった。



 ゴミ掃除ロボットのウリに、室内限定ではないというのがあった。広範囲を迅速に綺麗にしてもらうべく、起動スイッチを入れる。
 ロボットは、ゴミ捨て場に限らずどこにゴミがあろうとも察知し、効率を計算して回収していく。そうした仕様なものだから、近くのゴミを無視して遠くに行くことも多々あり……、気付くのが遅れた。
 ロボットが真っ先に向かっていた場所、それは、ゴミ処分場だった。確かにここにはゴミが最もある。そのゴミを奪いまくった。ここに持って行くためにゴミを回収するというのに。
 博士はため息混じりに呟いた。
「人間をゴミと判定しないよう改良した時、ロボットもゴミとしないようにしたのかな」
 一番のゴミが、一番近くにあった。

(了)


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