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浅縹ろゐかさん

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身を滅ぼす炎

18/03/30 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:1件  浅縹ろゐか 閲覧数:304

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 捻じ曲がった性格をしている私は、やはり捻じ曲がった人生を歩んでいた。暴力を振るう父親とヒステリックな母親と暮らした実家には、もう10年以上帰っていない。中学卒業と同時に、私は職を求めて上京した。一刻も早く実家を出たかったからだ。住み込みでできる仕事を探し、私は土木関係の仕事に就いた。1番年下である私は、業務以外に使い走りのようなことをしていた。先輩達に逆らうことなど、とても考えられなかった。逆らえば何をされるか分からない、という風な環境で暮らしていたので、誰にも逆らうことはできなかったのだ。私は、ある意味では聞き分けの良い新人として、日々の業務に取り組んでいた。
 兎に角、私は人を信用する能力に欠けている。裏切られることを前提に、接するので私は友人と呼べる親しい人はいなかった。業務が終わってから、各々食事に行ったり飲みに出掛けたりする先輩や同僚を見て、羨む気持ちは多少なりともあった。それでも、私の方から輪に加わろうという気持ちにはなれない。この仕事というのは人の入れ替わりが早く、親しくなったとしてもすぐに別れが訪れることも多い。すぐに別れがあるのなら、親しくする必要もないだろうと思うようになっていた。その癖、人を羨む心があるのだ。面倒臭い性格をしている自覚がある。
 人に逆らわず輪に加わらない私は、次第に孤立していった。そうなると、虐めが発生するのは時間の問題である。作業着がなくなる、ロッカーの私物が壊される、なんてことは日常的に起こるようになっていた。虐めの加害者というのはずる賢いもので、自分より立場が上の人間がいるときはそういったことはしないのだ。つまり、私に対する虐めは知られることなく、その程度が上がっていった。心が徐々に死んでいくのを、私は止めることができないでいた。心の傷の治りは、日に日に遅くなっているように感じられる。涙は出ないが、血が流れている。それは、私を徐々に蝕んでいった。
 私がこの土木関係の会社を退職したのは、入社してから3年が経過した春のことだった。その後、私は同じ業種の別会社に転職をする。そこでもやはり私は虐めにあった。私という存在は、何処に行っても誰かの気に障るらしい。私の心配をしてくれる親切な人もいたが、私はまた逃げるようにして転職をするのだった。私は職を転々としながら、生計を立てていた。同年代の人は、まだ学生生活を謳歌しているような年齢のことである。
 転職を繰り返し、年齢を重ねた私は、ふと自分の人生というのを振り返る。上京して虐めを受けながらも、なんとか仕事をして暮らしてきた。ただ、それだけだった。私に残っているのは、土木関係の技術と僅かな貯金ばかりである。友人を持つことも、家庭を持つことも私はできていなかった。それらを欲しいと思っていても、自分の性格の所為でそれが叶わない。このままずっと1人で暮らしていくのだろうか。孤独死まっしぐらとは、私のことだ。
 これからも私は何処へ行っても、虐められながら暮らしていくのだろうという予感がする。私の生まれ持った性格というものや、その後の環境で形成された人格というのは、今更になって変えることは難しい。それでも、私は生きていかなければならないのだろうか。私は自分の身の内に、恨みの炎が灯るのを覚えた。何回目になるのか分からない、退職届を提出した冬の日のことだった。
 私は生きる気力も目標もない。自由に身体を動かせるだけで、死んでいるのと同じだと感じた。もう、死んでしまっても構わない。私は、自暴自棄になっていた。どうせ死ぬなら、私を産み落とした両親を道連れにしてやろう。中学卒業以降、立ち寄らなかった実家へ私は足を向けることにした。深夜に着いた実家は、何も変わらずそこにあった。家の裏手に回り、灯油のポリタンクがあることを確認する。持ち上げると、たっぷりと灯油があった。この家ごと、両親を燃やしてしまおう。寝静まっているらしく、真っ暗な家を見上げた後に、新聞紙の束に灯油を掛けてライターで火を放つ。メラメラと燃え上がるのを見て、私は満足した。私をこの世に産み落としたという罪は重いのだ。私は家の裏手にある桜の木に、ロープを掛けた。この家が燃え落ちる様を見ながら、私は命を捨てる。これ以上なく、素晴らしい自殺方法だ。
 翌日。私は無事に恨みの炎により、家を全焼させることと自らの自殺にも成功した。家は燃えたが、そこに住んでいたのは私の両親ではなかった。私は見ず知らずの他人の家を燃やし、自殺をした放火魔としてその悪名を世間に知らしめることになったのだ。私が過去に属していた会社の同僚や先輩達は、報道番組に取材を受けていた。皆が言うことは、決まって同じである。
 「変な雰囲気の人でしてね。いつか犯罪に手を染めるのではと、私達も心配していたのですよ。まさか、こんなことになるなんて」


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このストーリーに関するコメント

18/03/31 文月めぐ

拝読いたしました。
ねじまがった性格ゆえに周りからも疎まれている「私」。
周りの人にも変な雰囲気が伝わっていたのですね…
復讐とはなかなか上手くいかないものなのかもしれません。「私」の運命が悲しかったです。

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