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無花果さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 毒を食らわば皿まで

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犯行は計画的に

18/03/19 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 無花果 閲覧数:137

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とある日曜日の朝、探偵の藤村来栖は淹れたてのコーヒーのにおいを楽しんでいた。いつも仏頂面の彼にしては今日は珍しく気分が良いようだ。そんな朝の静寂はノックもせず事務所に入ってきた闖入者によってかき消された。
「おいっ、来栖大変なんだ!」
その闖入者の名前は琢磨と言って来栖の小学校からの腐れ縁の悪友ともいうべき人物だった。来栖は初め、驚いたような顔をしていたがいつも通りの仏頂面に戻ると
「こんな日曜日の朝っぱらからどうしたんだい?」
と感情のこもっていない声で返した。
「実は俺の隣の家で昨日火事があったんだよ!」
琢磨はそんな彼の声など気にも留めずに、大声で言った。
「火事?それは不幸なことだろうけれど、そんなに騒ぐことかい?」
「いや実は火事にあったやつ――小鳥遊悠馬っていうんだけど、会社の同僚なんだよ。でも、あいつの火の不始末ってわけじゃなくて放火だと思うんだよ」
そう彼は言うと、事務所のソファーにどかっと座った。相当急いで走ってきたのだろう、額からは汗がにじんできていた。
「それで、探偵をやってる来栖に話をちょっと聞いてもらおうと思ってきたんだよ。っとその前に、水もらっていいか?ここまで走ってきたせいでのどがカラカラなんだ」
来栖は無言で立ち上がると、戸棚からコップを取り出し、それに水道水を注いで渡した。琢磨はそのコップを受け取り、ごくごくとのどを鳴らしながら一気にその水を飲みほした。そして、息をふぅと吐くと続けて語りだした。
「悠馬は俺と同期で会社に入社したやつで、俺といろいろ似ているところもあったせいかすぐに意気投合して、仕事外で遊びに行ったりもよくしてたんだよ。昨日もあいつと夜中まで飲みに行って、べろんべろんに酔っぱらったあいつを家まで運んで寝かせてやって、俺も自分の家に帰って寝たんだよ。そうしたら明け方に妙に騒がしいなと思って、カーテンを開けたらあいつの家が燃え上がっていて、消防車も数台止まって消火活動をしてたんだ」
「それで、その小鳥遊悠馬君はどうなったんだい?」
来栖は少しだけ心配気にそう聞いた。
「あぁ、消防隊の人たちが助け出してくれて、少しの火傷とかはあるけれど無事だってよ。でも家はほぼ全焼で、火災保険には入ってるらしいけど、それでもあいつは相当落ち込んでたよ」
それで、と琢磨は続けて
「警察は悠馬の火の不始末が原因だろうって言ってたけど、そんなわけがないんだよ。あいつは昨日相当泥酔していて、とてもじゃないが今日の朝の火事が起きた時間までに起きれるはずがないんだよ。起きれなきゃ火事を起こしようもないだろう?そう警察に言ったんだけど、全然相手にされなかったんだ。だからお前のところに来たんだよ。・・・それでお前はどう思う?」
そう聞かれて、来栖は腕組みをしながら
「どうといわれてもね、情報が如何せん少なすぎるよ。せめて火元がどこにあったかくらいは分からないのかい?」
「まだ調査中だって言って、警察は言ってたぜ」
「じゃあ、彼に対して恨みを持っている人物とかはいるのかい?」
そう琢磨に聞くと、彼はとんでもないといいながら首を振った。
「あいつを恨むやつがいるなんて考えられないな。少しお調子者のきらいがあるけど、気のいいやつで困っている人がいるとほっておけないやつなんだよ。いわゆる、おせっかい焼きって感じだな」
そこまで聞いて、来栖は組んでいた腕をほどき琢磨をまっすぐに見て話し始めた。
「ふむ、今までの君の話が全て真実だとしたら、この火事の真相は大体わかったかな。その前に一つ質問していいかい?彼――小鳥遊悠馬君の部屋は相当散らかっていたんじゃないかい?」
その質問を聞いて琢磨は驚いて
「なんでわかったんだ?俺はそんなこと一言も言ってないぞ」
と聞いてきた。
「順を追って説明しよう。まず放火であるか否かだけど、放火の場合2つのパターンがあげられる。通り魔的犯行と彼に恨みを持っていたものの犯行だ。でも、ここ最近放火事件があったという話は聞かないし、君の友人は人に恨まれる性格でもないという。これらによって放火である可能性は考えにくい。でも、当日彼は泥酔していたという。このことから導き出される答えは自然発火だよ。彼の家は散らかっているのだろう、大方コンセントもさしっぱなしで掃除していないのだろう。最近は乾燥しているし、きっとたまったほこりが原因で火事が起きたんだろうさ」
そこまで話すと、琢磨は残念そうにそうかと言った。そして、他にもし何か思いついたら教えてくれと言い、名刺を置いて礼も言わず事務所から出て行った。来栖は立ち上がると、彼の使っていたコップを無造作にゴミ箱へ放り投げた。そうして、深く深くため息を吐き、ポツリと一言がその口からこぼれ落ちた。
「まちがえた」
テーブルの名刺には彼の名前が――小鳥遊琢磨と書かれていた。


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