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いっきさん

公務員獣医師として働くかたわら、サイトを中心に創作に励んでいます。

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三重扉

18/03/18 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 いっき 閲覧数:128

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俺を苛めた彼奴らに、絶対復讐してやる。
俺は、高校に入ったその日から彼奴らからの苛めを受けていた。彼奴らは、俺と目が合う度に暴言を吐き続けた。その旅に俺の心身はズタボロになり…体調を崩して入院したのだ。俺は退院するまでの間、ずっと彼奴らへ復讐しようと考えていた。

俺はボイスレコーダーをポケットに忍ばせ登校した。同級生たちは、奇異な眼差しを俺に向ける。
「うっわぁ、戻って来やがった。うっぜえ」「死んだんじゃなかったの?」「お前の居場所なんて、ここにはねぇって」
言葉の槍を突き刺しているつもりらしいが、それは全部お前らに跳ね返るんだ。愉快で堪らない。
笑いを堪えていると、「にやにやして、気持ち悪っ。死ねばいいのに」と、トドメがきた。
これだけでも、証拠としては充分成立する。しかし、俺の受けてきた苦痛はこんなものではない。

教室に入ると、「うっわぁ、来たよ。くっせー」「何で戻って来るんだよ、死人が」「おい、みんな。合掌しようぜ。ほら、早く成仏して下さい。なんまいだー」
みんなが俺に手を合わせて合掌している。こちらこそお前らに合掌だ。苛めの証拠はボイスレコーダーに録音してあるんだよ!

着席して始まった英語の授業は、「my hobby」についての発表であった。俺が当てられ発表する。
「My hobby is…」
すると、横槍が入った。「気違い、でーす」「死ぬこと、でーす」「My hobby is death.Ha,ha,ha!」
さすがに頭に血が上った。お前ら、俺にここまでしてタダですむと思うなよ!ここまで証拠が揃えばもう充分だ。
「お前ら、タダで済むと思うなよ!このボイスレコーダーには、お前らの暴言が全部録音されてるんだよ!俺はこの証拠を以て告発する!もう終わりなのは、お前らなんだよ!」
俺は、すぐに教室を出て生活指導室へ向かう。これで、俺の高校生活を滅茶苦茶にした彼奴らに復讐ができる。愉快で、笑いが止まらなかった。

「先生、僕、ずっと苛められてるんです。それが原因で入院して、退院してからもこんなに苛められて。これが、いじめの証拠です。こいつらみんな、退学にして下さい」
訝しい顔をしている生活指導の教師にボイスレコーダーを渡す。お前ら教師が『いじめゼロ』を謳っているこの学校の実態は、一人の人間を標的にして身も心もズタボロにするまで苛めぬく『いじめの温床』なんだよ。これが、動かぬ証拠だ。
すると、生活指導の教師はさらに訝しげな顔をして言った。
「はぁ…君、これがいじめかね?」
は? 何を言っているんだ、この教師は?
人の身も心もズタボロにする、れっきとした『いじめ』がここに収録されているじゃないか。ボイスレコーダーの声を確かめる。



「おはよう。しばらく休んでたけど、体調でも悪かったん?」「心配だったけど、元気そうで何より」「休んでた分のノート、写させてあげようか」
「笑顔になってくれた。安心したぁ」

どういうことだ?これじゃあ、俺のことを気にかける、優しい友達じゃあないか。

「おぅ、久しぶり!」「みんな、待ってたんだよ。」「みんな、歓迎の拍手をしようぜ!はい、一斉のうで、パチパチパチ。」

何だ、この、和気あいあいと楽しそうなクラスは?
いじめの温床のはずなのに。

「My hobby is」「英語、久しぶりだけど大丈夫?」「こっそり、助けてあげるよ」「My hobby is reading books.ほら、言ってみて」
「お前ら、タダで済むと思うなよ!このボイスレコーダーには、お前らの暴言が全部録音されてるんだよ!俺はこの証拠を以て告発する!もう終わりなのは、お前らなんだよ!」



高笑いの声とともに、音声は終了した。何てことだ。これじゃあ、俺一人が悪者じゃあないか、俺一人が…。
「君、ちょっと、疲れてるんじゃないかね」と言う教師に俺は言う。
「先生も、グルなんですね」
「はぁ?」
「この学校全員が、グルになって俺を陥し入れようとしてるんだ。全部、仕組まれたことなんだ」
教師は、慌てて俺の家に電話をかけ、俺は緊急で入院することとなった。



彼奴らがボイスレコーダーを持ってほくそ笑む。
「あいつ、バッカだねぇ。みんなお見通しだっつーの」「ボイスレコーダーすり替えたことにすら気付かないでやんの」「もう永久におさらばだな」



病室の扉を叩く音で目が覚めた。医師が俺に聞く。
「調子の方は、いかがですか?」
「俺はハメられたんだ。彼奴らは俺のボイスレコーダーを持ってる。それが、動かぬ証拠だぁ!」
「まだ、妄想が強いようですね。強めの睡眠薬をうって、お休みしましょうね」
「や、やめろぉ!俺は、正気だぁ」
取り押さえられる俺を見ながら、医師はため息をついた。
「彼はこの扉を開けることは永久にできんかも知れんな」


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