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キップルさん

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ケーキの恨み、晴らさでおくべきか

18/03/11 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:1件 キップル 閲覧数:201

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「ただいまー。あ〜、お腹すいた。ケーキ食べよ。あれっ?」

 学校帰りランドセルを放り投げた僕は、駆け足で冷蔵庫を開けて首をかしげた。楽しみに取っておいたケーキがなくなっていたのだ。

「お母さん、僕のケーキ知らない?」
「えっ、あれ、ヒロトのだったの?さっきお兄ちゃんが食べちゃったよ。」
「そ、そんなぁ…。」

取っておいたのは昨日の夜、お父さんが買ってきた大好きなチョコレートケーキだった。その時は我慢して、学校から帰ったら食べようと思ってたのに…。許せない。

「お兄ちゃん、僕のケーキ食べたでしょ!」

 部屋に突撃すると、お兄ちゃんはベッドで漫画を読んでいた。僕の怒った声を聞くと、顔を上げて座り直した。

「ああ、あれね。腹減ってたんだわ。ごめんごめん。」
「お兄ちゃんはもう食べたのにズルいよ!」
「仕方ねぇだろ。昨日食べないお前が悪いんだ。」
「なんだと〜!」

怒りが頂点に達した僕は、お兄ちゃんに飛びかかった。しかし…。

「痛い、痛いよ〜。わあーん!」

3つ年上でひと回り体格の大きいお兄ちゃんにはどうやっても敵わない。簡単に押さえつけられて、頭を1発殴られ泣かされた。

「こらっ、タカシ!また、ヒロトを泣かせて!」
「ごめんなさい…!」

するとお母さんが飛んできて、お兄ちゃんが謝るのがいつもの光景だった。でも、僕はどうしても悔しかった。ケーキの恨み、晴らさでおくべきか。復讐だ…。

 絶対、お兄ちゃんに痛い目を見せてやる。でも普通にケンカしたって勝てない。僕もお兄ちゃんの物を食べちゃおうかな。でも、お兄ちゃんは好きな物を残しておかないし…。うーん。

「からし入りどら焼き、ロシアンルーレット!」

 何もアイデアが浮かばないまま、夜になった。この時間はいつも家族でバラエティ番組を見ている。

「ルールは簡単。ここにあるどら焼きの一つはからし入り特製どら焼きです。」
「うわ〜、絶対食べたくない。」
「ぜひ、美味しいどら焼きを食べてくださいね。宮村さん、おひとつどうぞ。」
「よっしゃ。ほなら、これにするわ。」
「本当にそれでいいんですか?」
「あのね、僕が何年バラエティやってると思ってるんですか。こんなどら焼きごときに引っかかるわけないでしょ。あむっ。おぉえっ!」

 芸人はからし入りを食べ、げほごほとむせ返った。それを見たお兄ちゃんはゲラゲラと笑った。その時、僕はピンと来た。これだ…!

「ただいま。あ〜、腹減った。」
「おかえり〜。ねえ、お兄ちゃんに食べて欲しい物があるんだけど、こっち来て。」
「なんだよ、急に。」

 数日後、ある準備をした僕は満面の笑みでお兄ちゃんを迎えた。

「ほら、これ食べて!」
「おっ、シュークリームじゃん!でも、なんで?」

冷蔵庫から取り出したのは、もちろんただのシュークリームじゃない。わさびたっぷり、特製ロシアンルーレット版だ。

「いつもお兄ちゃんにはお世話になってるからさ。僕の気持ちだよ。」
「そっか。ありがとな。」
「お腹すいてるんでしょ。食べて食べて。」
「じゃあ、早速…。と言いたいところだけど、今日はこれがあるんだ。」

 お兄ちゃんは紙袋から小さな白い箱を取り出した。中には、お兄ちゃんに食べられたチョコレートケーキが二つ入っていた。

「これは?」
「この前は楽しみにしてたケーキ食べちゃって、ごめんな。」
「あ、いや…。」
「お母さんに聞いたんだ。あれからヒロト元気ないって。」
「少し落ち込んでたかも。」
「だから、買ってきた。今度は二人で食べよう!」
「う、うん!」

思わず食べることができたケーキは格別だった。

「お兄ちゃん、ありがとう。」

濃厚なチョコレートを一口ずつ堪能し、ケーキを完食する頃には、復讐のことなどすっかり忘れていた。

「あれ、このシュークリームどうしたの?」

 リビングからお母さんが出てきた。やばい。わさびシューがあった!

「ああ、それはヒロトが俺にくれたんだ。でも、今お腹いっぱいになっちゃってさ。」
「あら、そうなの?」
「よかったら食べない?ヒロト、お母さんにあげてもいいよな?」
「え、それはお兄ちゃんにあげたものだから…。」

予想外の展開で頭が真っ白になった。必死にこの場を逃れるアイデアを考えたけど、何も浮かばない。

「その俺がいいって言ってんだ。母さん、食べていいよ。」
「タカシ、ヒロトありがとう。いただきます。あむっ。」

僕は祈った。正月に神社でお願いするよりずっと強く。「そのシュークリームがわさび入りではありませんように」って。

「…。」
「お母さん、どう?」
「おぉえっ!」

お母さんはげほごほとむせて、芸人と同じリアクションをした。その後、僕は二人からめちゃくちゃ怒られた。食べ物の恨みって本当に怖い…。


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このストーリーに関するコメント

18/03/13 トミザワ 鏡太朗

テンポがよくて楽しく読めました。
トムとジェリーのようなコメディ感がとてもよかったです。
同じ札幌ということもあり、応援しています。

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