1. トップページ
  2. 同窓会の誘い

戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

性別
将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

投稿済みの作品

0

同窓会の誘い

18/03/05 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:140

この作品を評価する

 それが好機だと悟るのに、半日を要した。過去の思い出――嫌なことを思い出し、苦しみ怒り悲んでいたため、頭が回らなかったからだ。
 二度と会うことはないと思っていた彼らに会える。それはすなわち、復讐のチャンスだった――。



 福原は最初、実家からの「同窓会の手紙が届いている」の報せに、空返事で応じていた。現在三十の福原には、高校大学の同窓会の誘いは定期的に来ている。しかし学生時代に友などいないばかりか、過去を振り返ると不快にしかならず、無視していた。
 しかし実家からの話がいつもと違うことがわかり、態度は一変することになる。
「川上? 小学校の?」
 高校大学ではなく、実家がある学区で通っていた公立小学校の同窓会らしい。
 そして川上のことは思い出すことが適った。小学六年ではクラスが同じだ。福原は中学から私立に行っているため、二十年近く会っていない。それでも川上の名や人物像を覚えていたのには訳がある。端的にいえば、川上は福原をいじめていたからだ。
 人伝いの話ではあるが、いじめをしていた者がされていた者へ、悪びれもせず同窓会の誘いをしてくるものだと聞いたことがある。
 ならば尚の事無視すればいいのか。福原は瞬時に違うと悟った。まずは実家の手紙現物を確かめ、川上以外誰が参加しそうか確かめることだ。川上はいじめ側のトップではあったが、実行犯・取り巻きは他に山ほどいる。
 いじめにも大きく二パターンある。誰が標的になるかわからないタイプと、いじめる側・いじめられる側に境界がある――貧富の差や障碍や喧嘩の強さで決まる――タイプ。福原の学校は後者のタイプであるため、加害者は川上だけではなく、被害者も福原だけではない。加害者被害者という言い方は適切だ。やっていることは暴行傷害恐喝窃盗などのいわゆる犯罪だったのだから。
 女子たちはどちら側でもなかったが、中学生だったら性的犯罪も起きていただろう。にも関わらず、大半の女子は川上らを「かっこいい、デキル人間」と見て、福原らを気持ち悪いと蔑んでいた。この女子たちも来るのか。
 担任教師も重要だ。この担任がいじめを黙殺し、川上側の体育成績や行動力を持ち上げ、勉強を頑張る福原を評価せず「お前は友達もいない、それでは社会でやっていけない」などと言っていた。
 やがて実家から手紙現物が届く。川上は幹事として、全クラスメイトと担任に連絡しているという。
 思い返せば、奴らのせいで、福原には青春らしい青春は一切なかった。勉強して私立中学に行ったのも、奴らのような人間がいない場所を求めたからだ。むろんいじめは私立でも一流大学でも社会人になってからでも存在するが、付き合う人間のレベルを選べないあの頃に比べれば確率は減る。
 その動機は中学に上がった後も続き、無理をしてでも勉強してバカのいない場所を求め、同時に奴らのような人間と接する危険を避けるため人付き合いもしなかった。
 社会人になってからは仕事しかしていない。学歴から実力以上を求められ、応じることで生き延びているからだ。三十だが肉体的精神的に限界。
 すべては、川上らのせいだ。福原は初めて同窓会に顔を出すことにした。復讐を果たすために。



「川上……だけか?」
 福原は約束の時間ギリギリに来たのに、川上と思しき人物しかいなかった。少なくとも川上側の人間は来ているものだと思っていたが。
「そうらしいな。もう一人も呼んだが、来ないか」
「は?」
 もう一人? 川上は皆を呼んだのではなかったのか。
 疑問を浮かべていると、川上はおもむろに、
「お前にだけでも、復讐は果たしてやる!」
 掴みかかってきた。
 混乱は増すばかりだ。復讐は福原がしようと思っていたのに、何故復讐されねばならないのか。復讐のため用意した刃物を取り出す間もなく、地面に倒され、馬乗りで顔面を殴られる。
 川上は怒り狂った様子で吐き出した。
「低学年の頃は仲良かったのに!」
 福原にそんな記憶はない。高学年でいじめられた記憶しかない。
「勉強できるからって自慢しやがって!」
 自慢などしていない。川上らから逃れたいだけだった。
「親にも教師にも事ある毎に比較されて、そんなのでやる気出るかよ! 中学出たらバイト生活、もう限界なんだよ!」
 このままではマズイ。殺される――そう感じた時、川上を体当たりで突き飛ばす者があった。
 歳は親くらい……担任教師? 川上が復讐目的で呼んだもう一人にもあてはまりそうだ。
「先生?」
「ああ。福原、久しぶりだな。安心しろ。川上になんかお前を殺させはしない。お前らが問題起こすせいで、俺がどれだけ辛かったかわかるか。お前らが卒業後、俺は病んで教師も辞めた。人生滅茶苦茶だ。川上、今日は呼んでくれてありがとうな。俺がこの手でお前らに復讐してやる」

(了)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン