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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
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復讐より大事なもの

18/03/05 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:156

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 大学の友人が、キャンパス内で勉学に関することを話してきた。彼にしては非常に珍しい。課題を見せてくれといった話すらしないほど、学生の本分を忘れている人間だからだ。
「俺らって小さい頃から、『よしゅうふくしゅうは大事』って教わり続けてきただろ」
「そうだね」
「最近になって思ったんだが、『ふくしゅう』より『よしゅう』のほうが大事じゃないか?」
「んー」
 普段は彼のバカさ加減に同情を禁じ得ない僕だが、本日ばかりは違うようだ。
 難しいところだ。
 どちらも大事だから『予習復習』とセットで言われてきたのだろうが、どちらのほうが大事か考えると、差はあるかもしれない。セットで言われるとはいえ、性質は大きく異なる。
 予習は、一部の天才的な人を除けば――教科書パラ見で教科書以上の問題も容易に解けるような人を除けば――、しておくと理解が楽になる。予習の段階ではわかっていなくても、予習しておけば授業で出てきた際、「ああ、そういうことだったか」とすんなりいく。予習抜きでは、予習をした時のように、あるいはそれ以下の理解で、授業を終えてしまうかもしれない。つまり後で最低一回は復習せねばならず二度手間だ。
 復習のほうは、先のように理解ができなかった際、補完のためにやらねばならない。授業で理解している場合でも、復習は重要だ。反復は記憶だけでなく理解にも役立つ。反復がなければ、わかったつもりで実はわかっていなかった、という真相があっても気付けない。
 さて予習と復習、どちらがより大事なのか。
 僕は時間効率という観点で判断してみた。それでいくと、理解に役立つ予習のほうが大事という結論に至った。理解をしっかりしているのならば、復習など要らない。
 結論だけを彼に回答すると、
「お前も『よしゅう』派か。俺もそうだ」
 全然嬉しくない、今からでも答え変えていいだろうか。
「それで、君はどうして予習のほうが大事だと考えるんだい」
 理由が異なれば彼とは違うと言えるだろう。そこに期待だ。
 しかし――そんな期待など、すべて吹き飛んだ。理由が一緒だったからではない。そんな生易しい次元ではない。
「だってさ、復讐は何も生まないだろ。復讐の復讐が起こり、その復讐も起こり……復讐の連鎖は止まらない」
「…………」
 彼のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、彼に小さな頃から『予習復習は大事』と説いてきた人々への同情が止まらない。復讐の連鎖並に止まらない。
 だいたい、そっちの『復讐』だと思っていたのなら、『よしゅう』は何だと思っていたのか。
 やむなく彼の話を聞く。
「その点、復讐企む奴を予め襲っておく予襲なら、復讐させないで済む」
 そんな言葉は初めて聞いた。まあ、先制攻撃のことでいいのかな。いや、相手は復讐を企んでいるのだから、すでに攻撃はしているのであって、攻撃した上更に先制攻撃をするという……えー、要は殲滅作戦?
 しかし反論は容易だ。
「君の言う予襲なんて卑劣な行為をすれば、復讐心はより一層強まるよ」
「ならその復讐をさせないために予襲をすれば」
「うん、その予襲に対しても復讐があるよね」
 これが無限ループか。
 それにしてもおかしい。彼は小さな頃から聞かされていた『予習復習は大事』を誤解していた。その上で復讐よりも予襲が大事という結論に至っている。
 この『よしゅうふくしゅうが大事』は、当然彼に向けて言われていたものだ。一般論にもなるが、彼自身に対して言われている。ということは、
「ひとつ確認しておきたいんだけど、君は予襲の準備しなきゃいけないくらい、復讐に遭う覚えでもあるのかい」
 そうでなければ考える必要がない。
「ん? 復讐される覚え? まったくないぞ。俺は恨まれるようなことしないし、そんな感じのこと人からもよく言われる」
「そうなんだ」
 彼のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、とりあえず今回は誇っていいのかもしれない。

(了)


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