1. トップページ
  2. 受けた攻撃を倍返しできる能力ッ!

戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

性別
将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

投稿済みの作品

0

受けた攻撃を倍返しできる能力ッ!

18/03/05 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:130

この作品を評価する

 日常が壊れたあの日から、少年は高校からの帰宅さえすんなりさせてもらえない。
 今も人気のない路上で、敵の刺客が道を塞いでいた。
 三十前後の男性、戦闘には不向きそうな細い身体つきだが、少年や彼ら組織の者たちは異能力を持っている。姿での印象など気休めにもならない。大事なのは、敵がどんな異能を駆使してくるかだ。
 警戒する少年へ、刺客はおもむろに口を開いた。
「俺の能力は、受けた攻撃のダメージを倍返しで相手に与える能力だ」
「お、おう」
「ふ、恐るべき能力だろう?」
 ドヤ顔の刺客。
 少年も異論はない。強敵だ。だが、
「それってこっちが攻撃した後で、不可解なダメージ受けて困惑する俺に、実は倍返し能力でしたって明かすタイプの能力じゃないか?」
 自身の異能をわざわざ語ること自体は、ままあることであり、言ってみれば業界では常識だ。だから教えるのはいい。しかし今回のような性質の能力だと……。
「先に聞いてしまったら、俺も攻撃するわけないだろ」
「え、攻撃してくれないのか?」
「しねーよ。倍返し嫌だからな」
「ええー」あからさまな不満の声。「言っておくが俺は喧嘩弱いぞ、カウンター型のこの能力以外だと戦えないからな」
「じゃあ攻撃されるまで待てばよかったのに」
「くっそ、初手を誤ったか。いつもこうだ。俺の人生は」
 刺客は項垂れながら、勝手に半生を語り出した。
 幼少期、将棋が強く本人も乗り気だったため、奨励会(プロ棋士予備軍)に入ることとなった。そこで待っていたのは、これまで出遭ったことのない強敵たちだったが、刺客のほうも充分強く、苦しみながらもプロ棋士まで後一歩というところまで来ていた。
 しかし「後一歩」が届かない。将棋界には年齢制限があり、それまでにプロになれなければ諦めねばならない。焦りも手伝い、ついにプロに上がることなく、年齢制限を迎えてしまった。
 それからは大変だ。子供の頃から将棋しか知らない、高校も出ていない、不安定な生活と精神状態のなか女性に騙されて借金をしたこともある。ボロボロだ。
 そもそもプロになれなかったことが納得行かない。年齢制限など何故存在するのか。レアケースとはいえ、プロになれずアマで続けていた人が、将棋界に功績を残したこともある。それほど紙一重の差しかないというのに。
 実際、刺客自身も終盤の読みの強さならプロのトップ棋士と並ぶ実力を持っている。過大評価ではない。それでもプロになれなかったのは、プロへの道が狭すぎるゆえ運に左右されることと、何より、終盤の読み合いよりも序盤中盤の事前研究がものを言う現実があるからだった。
 最新研究に頼り自力で戦わないのは邪道として避けてきた刺客は、その邪道に敗れたことで、将棋に復讐心さえ芽生えていた。そして追い打ちをかけるように、その後の人生転落である。
 復讐心はやがて、形となる。それが倍返しという異能の発現だ。
「今では将棋に感謝している、こんな異能を得られたのだからな!」
「そうか。でもまあ、将棋同様、序盤の戦い研究したほうがよかったな。さっき自分で言ってたように、初手を誤っている」
 悪手だった。二手で投了クラスの初手だった。
「やってしまったものは仕方ない。頼むから攻撃してくれ。何なら異能でなくてもいい。普通に殴るのでもいい」
 懇願する刺客。ここだけ聞くとドMでしかない。
「そんなこと頼まれても、わかっているのに攻撃するはずないだろ。もうダメ元で、異能以外で戦えば……いや、それはちょっと」
「だろ?」
 双方の共通見解だった。さすがに異能力者同士が異能以外で戦うのはマズイ。
「仕方ない」刺客は懐から何やら取り出した。「これはチートみたいなものだからやりたくなかったんだが、他に手段もないからな」
 取り出されているのは、刃物だ。凶器を持っているとは、異能力バトルを放棄しているようで、少年は衝撃と恐怖を覚える。
 が、そうではない。
「お前が攻撃しないなら、俺が俺を攻撃する!」
「なんだと! それでも成立するのか!」
 自分で自分の腹を刺す刺客。痛みはあっても浅い傷だ。だが、これが異能によって倍返しとなれば……。
「うぎゃああ!」
 絶叫が響いた。止めどなく出る血の上を、のたうち回る。
 ……刺客が。
「なるほど。攻撃した相手へ返るから、自分で刺したら自分に返ってくるわけか」
 少年は能力仕様を理解した。同時に、試したこともない切り札を使ってきたことも理解した。
 傍から見ると自殺未遂でしかない。やむなく少年は救急車を呼んだ。
「お前、詰めも甘いじゃないか」

(了)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン