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君形チトモさん

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報酬はあなたの命

18/02/17 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 君形チトモ 閲覧数:327

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「我が仇、悪逆非道の宮廷魔術師よ! その所業の報い、受けるがいい!!」
 王宮前の広場で、青年は無数の銀の弾丸を放った。
 青年は、この国の王や宮廷魔術師たちに滅ぼされた村の出身だ。一人生き残って復讐を誓った当時の幼い彼は、力を身につけるべく、報酬さえあればどんな依頼も受ける、不老不死の魔女へ弟子入りを頼んだ。
「やだね。アタシは弟子なんていらないし、しかも報酬はないって、馬鹿にしてるのかい? アンタみたいな乳臭いガキ、おうちに帰ってママのおっぱいしゃぶってな」
「家は、村は焼けたんです! 許せない、あいつら全員許せないんだ!! お願いします、王宮の奴らを殺せるなら何でもするからっ、俺に魔法を教えてください……!」
「……その言葉、違えるんじゃないよ。必ず殺すんだ。それなら、アンタを弟子にしよう」
 人使いは荒かったが、約束通り魔女は魔法を師事してくれた。青年の仇についても、詳しい情報を教えてくれた。
「国王はね、人が自分の命令で右往左往したり、泣いたり怒ったり死んだりするのが楽しくて大好きなのさ。王を良く思ってない奴は多いけど、それでも国王だし、何よりあれには宮廷魔術師がいる」
「魔術師? 何人いるんだ、強いのか?」
「一人だけど、アタシと同じくらい強いよ。こいつもね、人殺しを何とも思わない、頭のネジが外れた化け物だ。村を滅ぼしたのは、この魔術師率いる王国軍。だからアンタの直接的な仇は、宮廷魔術師と言えるだろう」
 ある程度魔法が使えるようになると、魔女は助手として青年を連れていくようになった。博識で経験豊富な魔女に、青年は幾度となく舌を巻く。
「魔女はやっぱりすごいな。不老不死か、さすがだよなあ」
「そんなにいいものでもないぞ。生き物が精一杯生きるのは、その終わりまでに、生きた証を残そうとするからだ。終わりがないと、自分のことも他人のことも、どうでも良くなってくる。命の価値がわからなくなる。それに、仲良くなった相手がいても必ず置いていかれる。アタシばかり覚えていて、誰もアタシを思い出さない」
「……俺、絶対死ぬまで魔女のこと忘れないよ」
「バカ、アンタだってアタシより先に死ぬくせに」
 青年の魔法の腕は魔女にはまだ及ばないものの、毎日充実はしていた。復讐を忘れたわけではないが、青年は魔女に恋したのだ。強く賢く、孤独な魔女。彼女のためなら不老不死になってもいいとさえ思った。しかしある日突然、魔女は姿を消した。最近思いつめたような顔をしていると思ったら、「宮廷魔術師に喧嘩売られたから殺ってくる」と手紙を残して。慌てて家を飛び出したものの、二人が対峙したと思われる場所には、広範囲の焼け跡が残るばかり。魔女が帰ってくることはなかった。すぐにでも仇を討ちたかったが、青年にはまだ難しいことぐらい本人もわかる。黒い炎を胸の内に燃え盛らせながら、魔女の跡を継いで依頼をこなしつつ、青年は黙々と魔法の腕を磨いた。
 さらに年月が経っで、ある依頼が舞い込んだ。王の暴虐についに立ち上がった、共和派組織からである。かき集めた金や宝石、貴重な魔法材料を積み上げ、報酬は弾むからどうか革命に力を貸してほしい、と青年に頼んできた。復讐の好機。一心に研鑽を行なってきた青年の魔法は、相当の域に到達していた。宮廷魔術師との対決は必ず自分に任せてほしい、それが一番の報酬だ、できないなら依頼は受けないという青年の言葉は、快く承諾されたのだった。
 かくして革命の日。普段は王も魔術師も影武者を使っているが、年に一度の祝神式だけは本人が出ると情報を入手し、共和派はその日に革命を起こした。宮廷魔術師との対決を任された青年は、煌びやかな服や装飾の国王と、フードとローブで顔や体型を隠した魔術師を引き離し、王宮前広場で魔術師を追いつめた。
「我が仇、悪逆非道の宮廷魔術師よ! その所業の報い、受けるがいい!!」
 青年はこの日のために用意したとどめの一撃を放つ。魔性にとって毒となる無数の銀の弾丸が魔法で展開され、魔術師にいくつも食い込んだ。仇の顔を見ておこうと、青年は魔術師のそばに降り立って、その顔を隠すフードを剥ぎ取る。
「……アンタ、強くなったじゃないか」
 宮廷魔術師の顔は、不老不死の魔女。あの日消えた魔女だった。
「……嘘だ、どうして」
「弟子入りの時報酬はないって言われたけどね、アンタなら殺してくれるって思ったから、アタシへの報酬はこれだって勝手に決めてたんだ」
 青年はたまらず魔女の手を両手で握った。
「そんな、何でだよ、何でっ……!」
「ああ、終わるんだね、死ねるんだねえ……殺してくれたのがアンタで良かった。ごめんねえ、ろくでもない師匠で」
 青年の両手の中の手は、するりと抜けて地面に落ちた。革命依頼の報酬は仇の命。それは、師であり想い人の命でもあった。


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