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風宮 雅俊さん

テーマに沿った物語を、どのくらいのレベルで書けるかな? と言う事で登録してみました。 アマゾンの電子書籍キンドルで作品出してます。こちらも宜しくお願いします。 ツイッター: @tw_kazamiya

性別 男性
将来の夢 世界一周の船旅で、船室に籠って小説を書く事
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殺しの報酬

18/02/13 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:341

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 今日の依頼は三十代男性の狙撃だ。写真を見る限り普通の会社員に見える。ヤクザの金に手を出せるほどの根性は感じられない。あの無防備な歩き方ではどこかの国のスパイと言う事もない。この男のどこに殺すだけの価値があるのかは分からない。ハッキリしているのは、この男を殺す依頼の前金は受取済みである事だ。俺にはそれ以上の理由は必要なかった。

 スコープを覗くと二百メートル先に男がいる。距離はそれほどでもないがビルの谷間で風が変わる厄介なポジションだ。人が多い場所では思わぬ動きをする事があるから要注意だ。しかし、シチュエーションとしては悪くない。

 ! こっちを見た?

 一緒にいる子供がこっちを見た? チラ見だが間違いない。この場所で狙撃する事を知っているのか?

 男の動きが止まった。一秒先までの静止を確信した瞬間、引金を引いていた。
 素早く撤収すると、遠くにサイレンの音を聞きながら人波に紛れ現場を離れる事にした。ただ気がかりなのは、あの子供は間違いなくこちらを見た事だった。

    〜 * 〜

「俺だ。何のようだ」
 電話は手配師からだった。
「こないだの成功報酬の一部を現物で納めたい? ダメに決まっているだろ。現金以外は断れ」
 要領を得ない説明で分かった事は、手配師は匙を投げたと言う事だった。
「ふざけるな! お前の仕事はもうやらねーぞ」
 受話器を叩きつけたい気持ちで、スマホを切った。現金以外は認めない事を知っている筈なのに、現物で納める? 現物ってなんだ。そもそも依頼人が手配師の所に直談判しに来た。それで俺の所にも直談判しに来る? 手配師だって俺の住所を知らないのにどうやってくるんだ? 今回の依頼は色々とケチが付いた。ヤバイな、嫌な予感がする。

 キンコーン・・・ 呼び鈴が鳴った。

 オートロックのマンションでエントランスをすり抜け、玄関の呼び鈴を鳴らす。一気に緊張が高まる。不用意に玄関に近づいたら扉越しに撃たれるかもしれない・・・・
 リビングのモニターで確認をすると子供? 小学生ぐらいのがいる。

 ! あの時の子供だ。

 無視すればそのうち帰るだろう。

 無視すれば・・・・

 そのうち・・・・

 外で声が聞こえる?
「お嬢さん、こんな所でどうされました?」
 誰かがマンションのコンシェルジュに通報したらしい。
「お父さんが、中に入れてくれないんです」
「ロビーで待ちますか?」
「いいえ、中にいるのでここで待ちます」
 居留守がバレている?
 コンシェルジュが半ば安堵しながら立ち去る姿をモニターで確認した後、玄関のドアを開けると鷲掴みにして引きずり込んだ。騒がれない様に口を押え、壁際に抑え込むと、
「お前は、誰で何しに来た」
 意表を突かれた驚きは直ぐに消えた。
 こいつ、ビビっていない・・・・。
「成功報酬の不足分を現物で納めに来ました」
「現物って何だ? 宝石類か?」
 ? 違う。何で子供が知っているかだ。報酬より身の安全が優先だ。
「先に説明しろ」
「殺しの前金は用意出来たけど、残りの部分が半分しか用意できなかったので」
 支払い能力の確認は手配師の仕事だった。取立ても手配師の仕事だった。
「それじゃない。なぜここが分かった」
 不思議そうな顔をしている。
「ママの再婚相手を殺してとお願いしたのが私だから」
「そうじゃない。手配師は俺の居場所を知らない」
「間違って殺さない様にターゲットを確認するでしょ。確認するところを確認できるように情報提供すれば殺し屋を特定できるでしょ。後は付いて行けば居場所も分かるわ」
 一理ある。これならば、狙撃する場所もタイミングもコントロールできる。
「それで、ビルの上を確認したのか?」
 にこりと頷く。
「分かった。それで、現物は宝石か?」
 首を横に振ると、脱ぎ始めた。
「ちょっと待て。ミルク臭いガキに何の価値がある。タバコと酒の匂いが似合う女がいいんだ」
 困った顔で見上げても、一蹴した。
「不足分は、現金で用意しろ」
 ビジネスの世界に大人も子供もない。
「分かりました。稼いでくるので時間をください」
 そうだ。最初から現金を用意すれば問題はない。
「どの位だ」
「二百万円ほど」
「待つ期間だ」
「一月ほどで工面します」
 嫌な予感がする・・・・
「どうやって?」
「ママの再婚相手がした事をされれば、工面できます」
 まるで俺が売春斡旋をするヒモみたいだ。
「だめだ。そんなんで捕まったら同業者の笑いものになってしまう。キャリアに瑕がつく。そもそも、殺し屋はイメージ産業だ。殺して当たり前、前後のストーリーが大事なんだ」
 なんで子供相手にこんな話をしなくてはいけない?
「分かった。報酬より身の安全だ」

 バン

 今回の依頼は、最後の最後までケチがついた。


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