1. トップページ
  2. 我々の報酬、あなた方の報酬

どようびさん

おかしな物語を書きます。

性別 男性
将来の夢 小説家
座右の銘 粒々辛苦

投稿済みの作品

1

我々の報酬、あなた方の報酬

18/02/11 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:1件 どようび 閲覧数:101

この作品を評価する

 野原に、無数の飛行物体が着陸しました。
 金で出来たものもあれば、銀でできたものもあり、地球では採取できない未知の物質から成るものもありました。
 空から降りてきては、その家一つ分の大きさの機体で地面を揺らし、立ち所に周辺の人々が集まり遠巻きに観察を始めました。
「あれはきっと侵略してきたに違いない」
「いいや、きっと貿易が目的だね」
「地球より遙かに優れた技術を持っていそうだ、何も目新しいものなんて無いだろう」
 人々はそれぞれの考えを口にし、たちまち辺りは喧噪に包まれました。しかし、機体から降りてきた彼等の姿を見て皆が言葉を失いました。
 手や足、身長は人間のそれと同程度ですが、頭だけが異様に大きく、縦に細長い目が禍々しく映りました。
 彼等の体軀を見て卒倒する人もいましたが、村一番の剽軽者の青年が前に出、言葉を掛けました。
「初めまして、いやあ、宇宙人なんて初めて見たなあ。何をしに来たのですか? あ、言葉分からないか」
 五十機ほどの宇宙船から降りてきた、百にも上る生命体から一体が前に出ました。
「安心して下さい、我々は害を与えるつもりはございません。それに、言葉は全て翻訳機で分かります」
 耳の中にそれが有るらしく、指と思しきパーツで顔の側面を指し示します。
「それで、何の御用で?」
 青年は繰り返しました。
「我々はナフ星から来たもので、あなた方地球の皆様と交渉がしたくここまでやって参りました」
「交渉?」
「ええ。ここ最近で地球では多量の二酸化炭素を排出し、最早環境はズタズタです。しかし、我々ナフ星人は地球を千年後に新たな住み家として利用するつもりなのです。我々の、地球と比べますと何万倍にも発達した技術で計算したところ、人類は千年後には存在せず、長くもってあと五百年です。その間、二酸化炭素よる環境破壊をできるだけ抑えて欲しいのです」
 生命体がここまで言い終えたところで、地球の各国の首脳たちがこの町へ到着し、群衆をかき分けて前へ集まっていました。この頃の地球では、数分で地球一周ができるほどに技術も発達しており、その数万倍と語る彼等の技術は途方も無く、想像の範疇を優に越えていました。
「成る程、今の話は聞かせて貰った」
 アメリカの大統領が翻訳機を通じ言いました。
「しかし、それでは我々にメリットが無い。環境破壊は確かに解決すべき大きな課題として、各国で共有されているが、もって五百年なのだろう? 自由に生活しても、その間に我々に大きな支障は無い。二酸化炭素を押さえるとなると、それなりに面倒が掛かる。あと五百年、我々は自由に生きさせてもらう」
 誰もがこの意見に頷きました。
 しかし、彼等はこう続けます。
「勿論、それなりの報酬は支払います。我々は平均で百万年生きるので、その感覚に合わせると報酬を払う頃には人類は滅亡しています。ですので、五年に一度、我々にとっての最高の嗜好品をプレゼントいたします。これは、あなた方で言う、毎秒、他国に贈り物をしているようなものです」
 最高の嗜好品、と聞き、皆が顔を合わせました。
 アメリカの大統領は先程までの威厳もあり、日本の内閣総理大臣に目配せをして、代わりに彼が口を開きました。
「それは具体的には何なのです?」
「砂糖です。しかも、大量の」
 ここで、砂糖と翻訳されたのは、ここが地球だったからなのでしょう。彼等の『最高の嗜好品』という言葉は星々で、違う訳され方をします。
 聞き慣れたその言葉に、大半は肩を落としましたが、それでも大量に砂糖が手に入るのなら、儲けものです。
 日本の内閣総理大臣は強く頷き、その場で交渉が締められました。
「では、ここに一つの機材を置いていきます」
 生命体は空気を掴むような仕草を見せ、無の空間から細長い棒を取り出しました。
「これは鉄から成り、有害ではございません。二酸化炭素の濃度を量る装置で、五年に一度数値を検査し、大きな変化がなければ嗜好品をお贈りいたします。では、また五年後に」
 彼等が飛び去った直後に、世界有数の天才が集められました。
「いいか、この機械を研究し、数値を偽造しろ。たった五百年の為に世界中が二酸化炭素の排出を控えるなど馬鹿馬鹿しい」
 作業は夜通し行われ、一年もしない内に全く同じものを作れるようになりました。この機械はとても単純な造りだったのです。
 地球人は皆、無償で手に入る大量の砂糖を心待ちにしました。

「今日は地球に嗜好品を贈る日だ」
 乗組員の一人が言いました。
「今、検査班から連絡があった。数値に大きな差は無し。それどころか少し濃度が下がっているらしい」
「成る程、噂通り誠実な生き物だ。報酬も弾むぞ」
 ボタンが押され、彼等にとっての嗜好品である『放射性物質』が地球のあちこちにばらまかれました。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

18/02/11 文月めぐ

拝読いたしました。
面白い設定に惹かれ、どんどん先が気になりました。
地球の今後が気になりますね。

ログイン