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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

性別
将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

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悪の組織と正義のヒーロー

18/02/05 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:80

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 超人になれる変身能力を持ち、地球の平和を守る、ヒーローたちがいた。今日も今日とて悪の組織と戦っている。
 レッドとイエローが下っ端構成員――正体は全身黒ずくめの普通の人間――を蹴散らしていると、ピンクが遅れて駆け付けた。
「ごめん、どうしても起きられなくて」
 レッドは普段ピンクに優しいが、さすがに怒る。
「そんな理由許されるか!」
「まあまあ、来てくれただけでも」
 イエローが間をとりなそうとするも、レッドの怒りは収まらない。
「今回だけじゃないだろ。どういうことなんだ、ピンク。やる気がないのか!」
「そうじゃないわよ! でも」
「でも?」
「誰にだって言えないことはあるだろ? な?」
 再びイエローが間をとりなそうとするが、今度はピンクのほうが開き直って言い放った。
「夜は風俗嬢してるんだから、昼間は仕方ないでしょ! 昼のバイトじゃ、ヒーローやるから抜け出してばかりでクビになるし、短時間で纏まった額稼げるのはこれしかないの。敵も夜には現れないし安心して仕事できる」
「なっ、お前、子供も観ているかもしれないのに」
「子供にも現実教えられていいんじゃない? 言っておくけど私の勤め先、枕営業黙認で実質組織売春やるタイプだから。警察と癒着してるタイプだから。悪の組織の資金源になってるタイプだから」
「それじゃ間接的でも敵に加担してるじゃないか」
 怒りから一転、呆れたという態度のレッド。
 そこへ、ある下っ端構成員が語り出してきた。いつもは話さないのに、今の空気に便乗したのだ。
「俺たちだって、進んで悪の組織に入ったわけじゃない。表の世界じゃ、ろくに給与も支払われない、こき使われてすり減る一方だ。悪の組織は違うぞ。給与払ってくれる上、功績に応じて特別報酬まで貰える。たとえ刑務所入ったとしても、出所後の仕事も保障してくれる」
「悪事の言い訳など聞けるか!」
 レッドの正義感をぶつけられた下っ端は、自らを悪と認めつつも義憤に似た感情に支配され、あることを暴露することにした。
「正義のヒーローごっこなんかやっているのは、レッド、お前だけなんだよ。ピンクはさっき告白していた通り、そしてイエローも悪の組織のスパイ――」
「ま、待ってくれ!」
「どういうことだ、イエロー」
 イエローも観念する。「実家のカレー屋、チェーン展開して儲かってると思うかもしれないが、実は全店舗赤字になっていて、でも潰さないよう頑張って、そうすればするほど余計苦しくなって、だから、資金援助を悪の組織に……」
「俺たちを売っているということか。だから俺たちの付近でばかり幹部や怪人は現れるのか」
 イエローは首肯した。下っ端構成員は普通の人間であるゆえ、警察に任せることもできる。しかし幹部や怪人はヒーローでなければ対抗できず、向こうからしてもヒーローを倒すことができれば後は何とでもなる。
 イエローの告白を聞いている間に、幹部と怪人が現れていた。そして幹部はイエローの言葉を続ける。
「本来なら、採算が取れない、労基を守れない、そうした不良企業は潰れて、失業者は社会が保護しつつ、起業できやすくして競争するのが正常。しかし既得権益守りたい輩による規制や、古い常識により、一向に改善されない。もはや武力による革命しかないのだ」
 レッドは顔を歪める。「くっ、そんな偏差値35以上の話はやめろ。俺は戦うことしかできないんだぞ」
 レッド以外のピンクとイエローは、真実の暴露により、もはや悪の組織側だ。悪の組織からすれば、レッドさえ倒せばいい状況だが、レッドが強いことは重々承知。そこでレッドにもわかる話をすることにした。
「ヒーローには報酬がないな。怪人を倒せるのはヒーローだけであるのに。下っ端の哀れな社会の犠牲者を捕まえる警察には対価が払われるのに、肝心の危険な怪人と戦うヒーローには報酬がない。本当にこんな社会に味方していいのか」
「しかし!」レッドは語気を強める。「報酬を貰ったら正義ではない!」
「ふん、愚かだな。では死ぬがいい!」
 一人で、怪人・幹部・元ヒーロー二人を相手せねばならない。絶体絶命のピンチ。
 だがそんな時にだけ現れる、謎のヒーローがいた。
 大きな爆発が悪の組織側を襲う。
「ブラック!」
 神出鬼没のブラックは、明確な味方ではないが、結果的に助けてくれることが多い。今回も多くは語らず、難を逃れるのに役立ってくれた。
「ブラック……。もうヒーローは、俺とお前しかいない。協力したいが」
 ブラックはすぐに行方をくらませていた。
 正義のヒーローを気取るつもりはないが、レッドの支援はして社会を守って貰わねばならない。
 ブラック企業の経営者としては。

(了)


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