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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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名刺くばり

18/01/29 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:369

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 喫茶店を始めた。喫茶店とは言っても、コーヒーや紅茶やスイーツを提供するばかりではなく、漫画も読めるしカラオケも出来る。うたごえ喫茶、もといカラオケ漫画喫茶と言ってもいいだろう。しかし店を始めたばかりだからなのか、客足はいまいちだ。SNSを利用してはいるが、『いいね』の数がなかなか増えない。バイトを二人雇っているが、このままではバイト代も払えなくなってしまう。
 そこで俺は思いきって、地元の商工会青年部に入ることを決めた。前から商工会の人間に勧められていたが、内気で社交的ではない俺はそういった集団に加入することを敬遠していた。しかし人脈を増やし、俺の店の知名度を上げる為に腹をくくった。俺を青年部に誘った人間は言った。客をただ待っているだけでは駄目だ。呼びに行くくらいの心構えが必要だと。
 青年部に加入して二週間ほど経った。各市町村の青年部員が一斉に集う、県の青年部の新年会に参加することになった。俺の店の知名度を上げるチャンス到来だ。
 内気な俺はコミュニケーション能力があまりない。おまけにまわりは知らない人ばかり。俺が加入した区域の青年部の中でも、親しくなれた人間はほんのわずかだ。しかしこういった席には酒がつきものだ。
 酒は、適量なら良薬だ。アルコールにより血管が膨張し、血流がよくなる。そしてストレスや緊張が緩和され、頭の回転がよくなり会話が弾みやすくなる。いまの俺には酒が必要不可欠だ。
 俺の作戦はこうだ。まず、各会社の若社長達と名刺を交換する。そしてその後、SNSで友達申請を出し、各会社とSNSでやりとりをする。直接的なコミュニケーションが苦手な私には、そのやり方がふさわしいだろう。
 そして新年会。飲んだ酒のおかげで開放的になり、自分でも驚くほど積極的に、会場にいた多数の人間と名刺を交換した。明日まとめて、SNSで友達申請を出す。会ったこともない人から突然友達申請を出された場合は警戒心が働いて断られやすいが、一度挨拶をかわした相手からの友達申請だから、承認されやすいだろう。これで俺の喫茶店の知名度が上がる。



 しかし翌朝、ポケットの中に名刺入れが無い。二次会、三次会と店をはしごしている間、どこかに名刺入れを落としたらしい。昨夜だいぶ呑んだせいか、入った店の名前も、一緒にいたメンバーのことも覚えていない。さらに名刺交換した相手の顔も名前も全然覚えていないので、SNSで友達申請もできない。
 酒は良薬だと?たしかに良薬だ。俺の愚かさを反省させてくれる、いい薬だ。
 


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