1. トップページ
  2. 世界一うまい酒

葉月三十さん

葉月三十で「はづきみそ」と読みます。 日本文化と漫画が大好き。 もそもそと書いていこうと思います。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 後悔先に立たず

投稿済みの作品

1

世界一うまい酒

18/01/28 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:1件 葉月三十 閲覧数:292

この作品を評価する


 ある日A氏は秘書ロボットに命令した。
「世界一うまい酒を用意してくれ」
 女の形をした秘書ロボットは数秒の間のあと、
「かしこまりました。一週間後の金曜日の夜にご用意します」
 
 それから一週間、A氏は世界一うまい酒を楽しみに毎日の仕事に勤しんだ。A氏の傍らで秘書ロボットが方々に電話をしたり、ネットワークを繋げてなにかを調べたりしていることが、A氏の励みになった。
 人工知能が発達した現在、手に入らない物はほぼないと言っていいだろう。故にA氏はこの秘書ロボットが用意する酒を心底楽しみにしていた。

 忙しない一週間が過ぎ、とうとうその日は来た。
 今週はやけに忙しく、一週間が過ぎるのが大分早かった。
 今日は待ちに待った金曜日の夜である。
 仕事を終えて帰宅する。すると秘書ロボットか冷蔵庫からなにかを取り出した。だがそれは、
「缶ビールじゃないか」
「はい。世界一美味しいお酒です」
 秘書ロボットは抑揚のない声で答えた。A氏はポカンと首をかしげた。
「ただの缶ビールだろう」
「いいえ。世界一美味しいお酒です」
 とうとうロボットが壊れたのかと、A氏はだんだんと腹が立つのが分かった。だがロボットは相変わらず缶ビールをA氏に勧めてくる。
「お飲みください、ご主人様」
「誰が飲むか」
「一口だけでも」
「しつこいやつだ」
 A氏は折れた。壊れたロボットは明日修理に出すとして、今は言うことを聞いてロボットを黙らせたかったのだ。
 プシュ、と缶ビールの蓋を開け、一口ごくり。
「ん?」
 二口、三口。
 うまい。
「このビールはどこのビールなんだ? こんなにうまいのは初めてだ」
 思わずA氏はロボットに問う。ロボットはにこりとしながら、
「これはごく普通のビールですよ」
 ますます分からなくなる。確かにこのパッケージはそこら辺に売っているようなビールだ。どこでも手に入る、何の変哲もない。
 秘書ロボットは続ける。
「今週は、ご主人様のお仕事のスケジュールを忙しくいたしました。仕事をしたあとの一杯ほど美味しいお酒はありません」
 一本とられた。
 どうやらロボットは壊れていなかったようだ。むしろ、人工知能の発達には目を見張るばかり。
 そして何より、自分が普段いかに仕事に不真面目だったを、思い知らされた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

18/02/01 つつい つつ

確かに、仕事の後やいろいろこなした後ほどお酒がうまい日はないと納得しました。
面白かったです。

ログイン