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j d sh n g yさん

学生時代に中国へ行き、漫画創作から小説創作の面白さに本格的に気づく。 なぜか中国語の方がすらすらと小説が書け、日本語での小説はその後から徐々に挑戦。 日常をテーマに書いていきます。

性別 男性
将来の夢 中国語の翻訳家 漫画家昔の夢
座右の銘 芸術は爆発だ

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カラフル・カクテルRev3

18/01/26 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:1件 j d sh n g y 閲覧数:240

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西野彩は静かなバーで女友達の村治咲が来るのを待っていた。肩まで伸びた艶やかな黒髪と鮮やかな口紅が仄かな照明で光っている。
客席をぼんやり眺めると、色とりどりのカクテルが存在感を示していた。
「おまたせ」
いつの間にか村治咲が西野彩の席まで来ていた。
「びっくりしたー…いつ来たの?」
「ついさっきだよ」
「ぜんぜん気づかなかった」
あいかわらずだね、と席に座ると咲は彩に微笑みかけた。
その微笑みは昔のままだ。
彩はジャック・ローズを、
咲はチャイナ・ブルーを、
それぞれ注文した。
暗めの照明の中で輝く二色のカクテルは妙に美しかった。
二人は小さくグラスを合わせ乾杯した。
彩と咲は久しぶりの再会を喜んだ。
二人がこうして会うのは大学卒業以来で、何度かお互いに友達の結婚式や同窓会などに出かけることはあったのだが、どちらかの都合が合わずなかなか再会の実現には至らなかった。
「最近、うまくいってる?」
彩はジャック・ローズを少し口に含みながら咲への返事を考えた。そして結局、
「まぁまぁかな…たいした不満もないし」
とありふれた答えを咲に返した。
咲は、それなら良かったと目を閉じた。
「咲は?まさかうまくいってない?」
彩は雰囲気を少し変えようと冗談ぽく聞いたつもりだったのだが、咲は笑わなかった。彼女はカクテルのグラスを揺らしながら少しずつ語りはじめた。
「実は、ちょっとね…あ、彩は何か飲む?」
咲にうながされ、彩はエメラルドオーシャンを注文した。グラスの中に小さな翠玉の海が波打っている。
「海、よく行ったよねえ」
なんとなく、大学時代を思い出す。
私も何か頼もうかな、と咲はオレンジ・ブロッサムを注文した。

あの頃は、全てが輝いてみえていた。
もちろん、今が悪いわけじゃない。
よくいえば、大人になったということ。
悪くいえば、夢を諦めたということ。
翠玉色の波と、飾られたオレンジが煌く。
海と太陽のようなグラスを軽く合わせ、
二人はそれぞれカクテルを味わった。

「かんぱーい」

海辺の居酒屋で、無数のジョッキとグラスが勢いよく重なる。
波の音をかき消すほどの笑い声。
文芸部でありながら運動部に負けない活気とやる気に満ちた集団だったと、彩は当時を思い出すたびにそう感じる。咲もその中にいた。
「彩、ちょっと」
勢いのあった部員達が飲み疲れてきた頃
部員の一人、小宮祐也が手招きした。
「これから浜辺まで、一緒に来ない?」
ダンス同好会にも所属している小宮は文芸部の他の男子部員よりどうしても魅力的で、身体を鍛えつつ、それでいて繊細な文章を書く小宮は女子部員の中で特に人気が高かった。
彩はちょっと周りの様子を伺いながら、小宮とこっそり飲み会を抜け出した。

浜辺への道は暗かった。小宮と彩は波音を頼りに前へと進んだ。歩きながら二人は今頭の中にある小説や詩のアイデアを思いつくままに話した。
徐々に視界がひらけ、夜空の月が照らす海と浜が見えてきた。
「小宮くんは、どんな映画が好き?やっぱりダンス系?」
「あはは、なんだよそれ。ダンスにしか興味なかったら文芸部に来たりしないって」
「じゃあ、どんなの?」
「でもやっぱりアクション系というか、にぎやかでスリルがある作品が好きかなあ」
ざあざあと波が次々と浜に押し寄せてはひいていく。彩は砂浜に座り込んだ。白砂を掴んだ手をひらくと、砂はさらさら浜へと落ちていく。
小宮は波の音に合わせてダンスを踊りはじめた。彩はその姿を目で追っていく。月の光が照らす浜辺は、幻想的なステージだ。
彩も小宮の真似をし踊りだす。波の音に着想を得て、浮かぶイメージに身を任せる。
踊りながら、何度か彩と小宮の眼が合う。
二人のダンスは徐々に激しさを増し、ふとした拍子に彩がよろけた。
その手を小宮が掴んで、抱き寄せる。
彩は頬を赤らめ、小宮の顔を見上げる。
二人は月明かりと波音の中でキスをした。

「かんぱーい」

咲と彩はふたたびグラスを合わせた。

咲はジャック・ローズを、
彩はチャイナ・ブルーを、
それぞれ口にした。
「…あのさ、彩」
咲が伏目がちに口を開く。
「なに?」
彩はグラスを置き、咲を見た。
「…実はさ、私結婚することになったの」
咲はグラスを持ち、彩を見る。
「よかったじゃん、おめでとう!」
咲はぐいっとジャック・ローズを飲み干すと、決意を固めたように切り出した。
「…相手の人は、さ、祐也なんだ」
彩の眼が一瞬少しだけ大きくなった。
「別に、もう昔のことだから」
あのあと、彩は卒業まで小宮と付き合った。
しかし、就職とともに別れた。
「言おうかずっと迷ってた。でもいずれわかっちゃうことだから」
「…そっか、ありがと。じゃあ、乾杯しよ」
パラダイスという三色のカクテルで二人は乾杯した。


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このストーリーに関するコメント

18/01/26 j d sh n g y

運営者の皆様、読者の皆様
ご迷惑をおかけしております。
推敲を怠り記述ミスがあったため、
修正後の作品を再度投稿いたします。

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