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つつい つつさん

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旋回するおじさん

18/01/21 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:2件 つつい つつ 閲覧数:321

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 太陽が顔を出し空が薄っすらと明るくなり始める頃、カウルゥおじさんはグアゥグアゥと鳴き喚きながら空を不安定によれよれと旋回し出す。時々バランスを崩すと、つまずいたように急降下するから、そのまま落ちてしまわないかと心配になる。
 私はうんざりした表情でおじさんを見上げる。
「毎朝、毎朝、よくこんなに酔っぱらえるものね」
 おじさんの妹であるママは「ほんと困ったものね」なんてにこにこと笑っている。ママだけじゃない、パパだってこの集落のみんなまでもそんなおじさんを「やれやれ」なんて言うものの温かく見守っている。それが私には信じられなかった。
 この集落で一人で暮らしているのはおじさんだけだ。みんな夫婦になり子供を育てながら暮らしている。おじさんには仲の良かった女の子がいて、その子が病気で亡くなっちゃったから一人なんだって噂は聞いたことあるけど、それでも他のみんなはちゃんと結婚して家族を守っている。
 パパは魚を求めて朝から晩まで私達の為に海を飛び回っているし、ママは木のくずや葉っぱなんかを集めて私達が快適に暮らせるように一日中動き回ってる。みんな自分達家族が生きていけるように頑張っている。
 だけど、おじさんは違う。ふらふらとしているくせに狩りがうまいらしく昼ぐらいにのそのそ起き出しては、パッと海にくり出し、自分の分の魚をちゃちゃっと捕まえるらしい。そして一番腹立たしいのは、捕った魚をすぐには食べず、寝床の横の岩穴に放り込んで発酵させて食べているってことだ。そんな食べ方する人はこの集落にも他の集落にも誰もいないらしかった。本当に呆れる。
 私はパパがうまく魚を捕れなかった日には弟と妹に言い聞かせて、「お腹空いた」なんて言ってパパを困らせないように我慢していた。周りの人だってそうだ。なのにおじさんだけ優雅に魚を発酵させてその魚を食べてのんきに酔っぱらっている。なんでみんなが怒らないのか不思議だった。
 今日はパパがちゃんと魚を捕って帰ってきてくれたけど、すごく険しい顔をしていた。どうも北西の魚が集まる海域にゾルが姿を現したらしい。ゾルは私達の天敵だ。私達の倍以上の体と翼と爪を持ち、信じられないスピードで迫ってくる。見つかった時にはもう遅い。誰かが捕まって犠牲になった。
 私は怖かった。もしパパがゾルに捕まったら私達家族は生きていけないだろう。誰もが自分の家族を守り養うのに精一杯で、他の家族のことまで手が回らなかった。
 そんな心配をよそにそれから二週間程は穏やかで平和な日が続いた。おじさんが朝喚きまわる以外には。
 でも、昨日、ついにゾルが北西の海域に現れ、仲の良いサールアちゃんのパパが捕まった。サールアちゃんはサールアちゃんのママと妹とみんなで抱き合いわんわん泣いていた。私はその日の晩、こっそりママに「サールアちゃんに魚を届けたい」ってお願いしたけど、ママは静かに首を振った。私は泣いた。どうしようもないことに腹を立てて泣いた。泣いたってどうしようもないこともわかっていて泣いた。
 それからしばらくしても、サールアちゃんはずっと寂しそうだった。悲しそうな目で北西の海を見つめていた。でも、サールアちゃんも、サールアちゃんのママも妹もお腹を空かせてつらいって感じはしなかったから、私は不思議に思ってサールアちゃんに聞いてみた。すると、サールアちゃんは、「カウルゥおじさんが魚を持ってきてくれている」と言った。
「あれ、サールアちゃんのママとおじさん、結婚するの?」って聞いたけど、どうやらそうじゃないらしい。ただ、おじさんが魚を届けてくれているだけらしかった。
 誰も家族以外に魚を届けてくれる人なんてこの集落にはいなかった。奥さんを亡くした人が再婚する気で届けてくれることはあるらしいけど、おじさんみたいになんの気もなしに届けるなんてことは考えられなかった。私がママに尋ねると、どうやらおじさんは前からそういうことをしていたらしい。シルービさんも、サルミさんも事故やゾルのせいで前の旦那さんを亡くした時、再婚するまでの間おじさんが魚を届けていたらしい。そんなことするくらいなら、さっさと結婚すればいいのにと、私には全く理解できなかった。
 私は昼前でまだ眠りこけているおじさんを叩き起こして問いつめた。
「なぜ、わざわざお魚を届けるの?」
「それなのに、なぜ結婚しないの?」
 おじさんはまだ赤い顔したまま頭をポリポリ掻いた。
「それくらいしか、出来ないからな」
 おじさんはそう言って笑ったけど、私にはやっぱりよくわからなかった。
 今日もグアゥグアゥと鳴き喚く声がうるさくて目を覚ますと、おじさんがいつも通り上空をふらふらと旋回していた。
 思わず、「ほんと困ったものね」と笑いながら呟くと、隣で同じようにうなづきながら微笑むママと目が合った。


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このストーリーに関するコメント

18/01/22 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
作者様渾身の設定が余すことなく発揮された作品であろうかと存じます。ただ、個人的には御作のみでは内容を読み取ることができませんでした。作者様の投稿された他の作品も拝読すれば掴める部分もあるのかもしれませんが……残念です。また、コンテストテーマの【酒】がどのように活かされているのか見つけられず、重ねて残念でした。

18/01/23 つつい つつ

凸山▲@感想を書きたい 様、感想ありがとうございます。
設定としては「鳥みたいななにか」を設定して、それで読み進められるようなニュアンスで書いています。
酒というテーマに対し、「なぜ人は酔っぱらうのか」をメインにしています。

 ここしばらく、自分の作品は、分かりやす過ぎるて面白みがないのではないかとか、答えを一つの方向に持って
行き過ぎのような気がしていたので、自分と他人の感覚の違いに驚きと新鮮さを感じました。

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