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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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世界のあばら骨がズレている

18/01/15 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:1件 小高まあな 閲覧数:584

時空モノガタリからの選評

何度も人生をやり直したのに後悔ばかりの、未来からきた分身たちが繰り広げるやり取りが面白かったです。これは選考者の評価が平均的に高い作品でした。分身たちのセリフを注意して読むと「高校の時のカレシ」が「相性は一番良かった」ということでは一致しているのですよね。そうして改めて読み返してみると、「やり直すなら、行き当たりばったりじゃなくてうまくやらないとね」という「彼」の謎めいたセリフは、「たまに人生二周目なんじゃないかと思う」という前半の主人公のセリフとつながって、意味を持ってくるように思われました。つまり彼もまた、彼女との別れを後悔し、人生の”やり直し”をするために過去に戻った人間なのではないでしょうか。このあたり、丁寧に作られているなあと感心しました。タイミングのズレや選択ミスで、人生とは大きく変わってしまうものかもしれませんね。彼女が今度こそ幸せな人生を送れることを祈りたいです。

時空モノガタリK

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「このあばずれ!!」
 そう叫びながら、変な女がこちらに向かって走ってきた。
「危ない!」
 突然のことに動けない私の代わりに、カレシが私の手をひっぱって、女の進行方向から避けさせてくれた。
 殴る対象がいなくなって、女は前につんのめる。
「な、なんなんですか!」
 私を背中に庇い、彼が怒鳴る。
 頼りになるな、と思わずきゅんっとしてしまった。私のカレシは同い年の高校生とは思えないぐらい落ち着きはらっている。たまに人生二周目なんじゃないかと思う。
「この、あばずれ! そうやって男に助けられて!」
 そう叫ぶ女は、母親ぐらいの年齢に見えた。
 それにしても、あばずれってなんだろう。
「そうやって男に助けられて生きるのはやめなさい! 今ならまだ間に合う!」
 こんな変な人に襲われたらそりゃあ助けてくれるだろう。
「引き返しなさい! 自分の足で歩いて!」
 女は 急に涙ぐみだした。きもい。
「そうやって男にだけ頼って生きていちゃだめなの。私は、四十歳のあなたなの」
 意味不明なことを言い出した。やばいやつだ。
「男に頼って生きて、結婚するする言っていた恋人を信じて過ごしていたら、あいつってばいつの間にか結婚してたのよ、知らない女と! 知らない間に不倫になってたの! あの女から慰謝料請求されて、会社も居づらくなってやめて、気付いたら婚期も逃すことになるわ! だから」
「そこまでよ!」
 女の言葉を謎の声がかき消した。
「あんたは」
 現れた女2は、女1に似ていた。
「私は、未来の私の忠告を間に受けて、真面目男に頼らずに生きていこうとしたあなたよ」
 女2の方がばっちりしたスーツを着ていて化粧っ気がない。
「男女交際はせずに、真面目にこつこつ働いてきたわ。出世もした。お金は貯まったし、正直最悪お一人様でも老後の心配はないぐらいの貯金がある。でも無駄よ、この前会社が潰れたわ。私には何もない! 仕事以外なかったの! 彼氏ぐらいは作らなくちゃだめ!」
「でも待って!」
 さらに謎の声。今までと似た声。
 現れた女3は、女1、2と同じような顔をしていたが、服装は二人を混ぜたみたいな感じだった。ちょっと若作りした女1と、お堅すぎる女2の中間。
「私は、未来の私の忠告を受けて、ほどよく男女交際をしながらも自立して歩んでいこうとしたあなたよ。でもね、あなたならわかるでしょ? 私にそんな器用さはないの。どっちつかずは中途半端になるわ。うだつのあがらない平社員、お給料もあがらない、結婚しないままだらだら同棲中。本当にこれでいいの? 何かを成し遂げたいと思わない?!」
 女3が熱弁を振るうと、
「慰謝料で借金を抱えるよりいいじゃない」
「会社がまだあるならいいじゃない」
 女1、2が反論し始めた。
 何が起きているのかよくわからないけど、ものすごく底辺の言い争いなのはわかる。
「だいたい高校生の時のカレシなんて、大学入った時に自然消滅するんだから」
「わかる!」
「あれは時間の無駄だったね。相性は一番良かったけど」
「遠距離に向かなかったのよ、お互い子供だったし」
 謎の女達が謎に盛り上がり始めたところで、
「逃げよう」
 彼が私の手を引いて走り出した。
「あ、ちょっと!」
 声だけが追ってきたが、若い足にはおばさんたちは勝てなかったようだ。無事に距離を置くことができた。
「なんだったのあれは」
 離れたところで一息つく。
 全員に私と同じ顎にホクロがあるのがちょっとだけ気になったけど。
「変な人もいたもんだね」
 彼は私に大丈夫? と優しく聞きながら、
「やり直すなら、行き当たりばったりじゃなくてうまくやらないとね」
「え?」
 彼が言ったことの意味がわからなくて、その顔を見上げると、
「ううん、なんでもない。僕たちなら大丈夫だよってこと」
 そう言って、綺麗な笑顔を浮かべた。
 それを見ていたら、まあいいか、という気持ちになった。彼を信じていれば大丈夫、そんな氣がする。
 それにしても、あばずれってなんだろう。初めて聞いたけど。


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このストーリーに関するコメント

18/01/16 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
パラレルに次ぐパラレル……面白かったです。このテーマを上手に作品化された発想が羨ましいです。バラバラの道を歩んだはずの3人が共通の話題で盛り上がるシーンはにやりとしてしまいました。この先も、上手く立ち回る彼氏の前に、不毛な熱意を持った3人組、あるいはもっとたくさんの彼女が登場するのかと思うと、なかなかどうして、『やり直し』も喜劇なのだなあ、と感じ入りました。

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