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時田翔さん

ただいま修行中です。 長所を伸ばすためには苦手を克服する必要性を感じて参加いたしました。 お題の好き嫌いはせず、なるべく全部参加で行きたいと思います。 欠点とか見つけたら、ビシビシ指摘していただけるとありがたいです。 よろしくお願いしますっ!

性別 男性
将来の夢
座右の銘 下を見て慢心せず、上を見て絶望せず、できることを一歩一歩

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運び屋の流儀

18/01/15 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:2件 時田翔 閲覧数:155

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「ふざっけるんじゃないよ!」

 緋色の瞳を燃え立たせ、同じ色の長い髪を逆立てんばかりに、あたしは激昂した。
 肘あてに拳を振り下ろし、艦長席から立ち上がると、あたしをここまで怒らせた相手を睨みつける。
 一触即発の雰囲気に、宇宙船のブリッジ内は、しんと静まり返った。

「やれやれ、こちらが穏便に話をしようと努力してるというのに。あばずれとは聞いていましたが噂以上ですね」

 艦長席の前のモニタに大写しになった男は、嫌みったらしい態度で伸びすぎの前髪をかき上げる。

 星から星への運び屋をやってるあたしたちは、とある女性を地球まで送り届ける仕事を請け負った。
 最初は航海も順調だったが、ちょっとした隙をつかれて、気づいたらこいつらの艦隊にすっかり取り囲まれてたってわけだ。
 まさに袋のネズミと、モニタの向こうでこのキザ男はほくそ笑んでるに違いない。
 悔しいったら、ありゃしないね。

 そして、奴らはこともあろうに今回の客である女性の引き渡しを要求してきたってわけだ。

「あんたらの国では、非武装の運び屋を武装艦で取り囲むことを穏便って言うのかい?」
「まさか。これは保険ですよ、自分は平和主義者ですから。強いて言うなら、あなた方を高く買ってる証拠だとでも思ってください」
「とんだ平和主義もあったもんだね、こういうのは脅迫って言うんだよ!」
「そちらの積み荷を引き渡してくれれば、身の安全を保障した上で依頼の倍額を出そうというのです。これで脅迫とは甚だ心外ですね」

 あたしの横で通信を聞いている女性が身じろぎする。
 いつ、あたしが首を縦に振るか、気が気では無いらしい。

 キザ男は余裕の態度を崩さない。
 こちらに打つ手など無いと思っているんだろうが、そうは問屋が卸さないってもんさ。

「あんたに運び屋の流儀ってもんを教えてやるよ」
「ほう、これは興味深いですね」
「依頼は責任もって遂行するのが信用ってもんだ。人を積み荷扱いするような相手にそうおいそれと引き渡すわけには行かないね」

 あたしは不敵な笑みってやつを見せてやる。
 キザ男の顔が露骨に不機嫌になった。

「どうしても引き渡してはいただけませんか?」
「くどいね」
「どうなっても知りませんよ?」
「あんたこそ吠え面かくんじゃないよ!」

 言い捨てるが早いか、通信を一方的に切ってやる。

「やるよ! チャフと妨害電波をありったけ食らわしてやんな!」
「へい! 姐御!」

 あたしの艦からの妨害で、とつぜん通信を断たれた奴らの艦がたちまち連携を乱す。
 装備も大きさもばらばら、おおかた金に目がくらんだ海賊か何かだろうと予想したら、思った通りだ。

「両舷全速! 目の前のうっとうしい艦に後ろからかますよ!」
「合点だ!」

 前に小さく見えていた艦のエンジンが、みるみる大きさを増す。
 相討ちを恐れて発砲できずにいたその艦が、ぶつけられてはたまらんとノロノロと進路を開けた。

 肝っ玉の小さいやつらだ。
 あたしは高笑いしながら、その脇をすり抜け、全速航行に移る。
 こうなってしまえば、あたしの艦に追いつけるやつは、そうは居ない。まして奴らみたいなゴテゴテ武装を積んだのなんか論外だ。

「置き土産に機雷でも撒いてやりますか?」
「その必要も無さそうだよ、見な」

 後ろでは、レーダーを無力化されて目をふさがれた艦が、パニックになってお互いに発砲し、派手な同士討ちを繰り広げていた。
 あの中にキザ男の艦が居たかどうかはわからないが、それもどうでも良いことだ。

「あの……ありがとうございました」

 ややあって、奴らの盛大な花火が星空に紛れた頃、依頼主の女性がお礼を言ってきた。

「礼を言われる事じゃないよ。あたしは運び屋、あんたは依頼人、邪魔する奴はさっきみたいな目に遭うだけさ」
「私が何故狙われているのか、知りたくは無いのですか?」
「興味無いね」
「でも、私が地球へ行くと、あなたに都合が悪いのかもしれませんよ?」

 しつっこい依頼主だね、そんなに自信が無いのかい?

「あんまりあたしを舐めないでもらおうか、これでも人を見る目はあるつもりさ。それにね……」

 あたしは、にやりと笑うと、一つウインクして見せた。

「死んだ爺さんの遺言でね、キザな男と、口の軽い男は信用するなって言われてるのさ」

 きょとんとした依頼主が、やがておかしそうに笑いだす。

「ま、そういうことだから、あんたは大船に乗ったつもりで、あたしらに任せときゃ良いのさ」
「はい、よろしくお願いします」

 こうして、あたしらは一路地球へと向かった。

 依頼主の彼女の手によって星間航行法が改定され、非武装艦に対する武力行為が厳罰化されるのは、この数年後のことであった。


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このストーリーに関するコメント

18/01/15 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
宇宙を行き巡る運び屋。男勝りの船長。仕事は、とある女性を地球へ送り届けること。ド王道のあらすじに、懐かしい気持ちがこみ上げました。ですが、既存の、数多ある、SF名作品群の設定から拝借した借り物の話展開である限り、作者様が描かれたいであろう面白さは埋もれたままなのかもしれないとも感じました。

18/01/15 時田翔

>凸山さま
拙作にコメントありがとうございます。
たはは、やっぱりわかる方にはバレてしまうんですね。
ちょっとだけ言い訳をさせていただければ、今回は「ヘイトをためないアバズレ」っていう自分的な課題の答えが出せなくて七転八倒しているうちに、期限が間に合わなくなって、推敲する暇も無かったという、さんざんな状況でして。

ただ、言い訳してても力は付きませんので、次のお題では、もっと早くから手がけて、自分でもっと納得できるものに仕上げたいなと思っております。
もしよろしければ、次回もお付き合いいただけますと幸いです。
再度ですが、コメントいただきありがとうございましたっ!

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