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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。
性別 | 女性 |
---|---|
将来の夢 | 可愛いおばあちゃん |
座右の銘 |
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3
この女
18/01/15 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:4件 光石七 閲覧数:603
別の男の子を宿しながら、それを隠し結婚をしようとする主人公の未羽。一見親切な義妹を演じつつ、実は肉親をも騙し主人公も利用しようと画策する渚。息子への嫉妬心と嫁への敵意をむき出しにする義母。三人の女性たちの狡猾さや敵意がなんともインパクトがありました。真実を「告げ口」されるかもしれない恐怖や疑心暗鬼の生活で、幸せになる人間は夫になる瑛司だけ、それもいつまで続くことか・・・・・・。一時的な愛憎劇にとどまらず、今後数十年にわたって人間の生活を決定的に変えてしまうだろう企みの恐ろしさを強く感じさせられました。全体的に読みやすくまとまっていて、エンターテイメント性もあり、選考時の評価も平均的に高かった作品です。
時空モノガタリK



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このストーリーに関するコメント
18/01/19 凸山▲@感想を書きたい
拝読しました。
面白かったです。渚の不意打ちに痺れました。とはいえきっと、主人公の狡猾さが『この女……。渚の笑顔が怖い』と感じつつも、頭を高速で回転させることでしょう。どう取り繕うか、出し抜くか、落とし入れるか。これらの点について、他の追随を許さないという自負もあるはず。初手は遅れをとったとしても、得意顔の渚に、私にできることなら何でも言ってね、と平然と笑顔を返せそうな不敵さを想像してしまい、何も知らない瑛司を取り巻く混沌を思うと気の毒なほどでした。
18/01/21 光石七
>凸山▲さん
コメントありがとうございます。
確かに主人公も負けじと頭を回転させ、主導権を握ろうとしたとしてもおかしくないですね。
助けてくれたはずの渚が実は全部お見通しで一枚上手のあばずれだった、というオチにすることしか考えておらず、主人公の性格や思考・行動を十分に練っていなかったなと反省した次第です。
作者以上に深く汲み取って思いを馳せて下さり、恐縮です。
精進したいと思います。
18/04/19 向本果乃子
とても面白かったです。未羽がなかなかの女だと思って読んでいたら、最後に渚がさらに上を行っていて唖然とさせられました。渚のどんでん返しがあって女たちのしたたかさが際立ったと思います。今後の義姉妹の関係を考えると・・・すごくいい勝負になりそうで恐ろしくも何だか楽しみです。
追伸:「愛を教えて」に素敵なコメントを頂いていたのにお礼をできないままでした。申し訳ありません。いつも励みになっています。ありがとうございます!
18/04/21 光石七
>向本果乃子さん
コメントありがとうございます。
渚のどんでん返しをオチにすることしか考えていなかったのですが、女たちのしたたかさを汲み取ってくださり恐縮です。
楽しんでいただけたようで、よかったです。
こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございます!
新着作品
きょとんとする瑛司に私はもう一度告げた。
「赤ちゃんができたの。三か月だって」
瑛司の顔に喜びと責任感が入り混じる。
「結婚しよう。未羽もお腹の子も必ず幸せにする」
瑛司のプロポーズに私は頷いた。
翌週末、私の実家へ二人で挨拶に行った。結婚と妊娠、ダブルでめでたいと両親は祝福してくれた。次の週末には瑛司の実家を訪ねた。
「初めまして。多倉未羽と……」
「このあばずれ! どうやって瑛司をたぶらかしたの!?」
初っ端から瑛司の母親の罵声を浴びた。
「母さん、違うって。未羽は……」
「あなたみたいなふしだらな女が瑛司の嫁だなんて、認めませんからね!」
「玄関で何怒鳴ってんの?」
廊下に若い女性が顔を出した。
「渚……なんでいるんだ?」
瑛司は面食らい気味に女性に尋ねる。
「お茶出し係が必要かなって。義理のお姉さんの顔も拝みたかったし、私もこっち来ちゃった。――初めまして、妹の渚です。ふつつかな兄ですが、よろしくお願いします」
「渚は引っ込んでなさい!」
「ママ、落ち着いて。ご近所に丸聞こえだよ。とりあえず上がってもらえば?」
母親は仏頂面のまま私たちを二間続きの和室に通した。奥の部屋に仏壇と遺影が見える。五年前に他界した瑛司の父親だとすぐわかった。
「あの……お線香あげさせていただいても……」
「赤の他人にそんなことしていただかなくても結構」
ぴしゃりとはねつけられた。
「未羽、おいで。俺が父さんに未羽を紹介するから。――父さん、俺の嫁さんになる多倉未羽さん。お腹に父さんの孫もいるよ」
「瑛司!」
母親がヒステリックに叫ぶ。
「電話でも話しただろ? 俺は元々結婚を意識して未羽と付き合ってたって」
「結婚前に身籠るようなふしだらな女を選ぶなんて……!」
「……申し訳ありません」
私は謝るしかなかった。
「順序が逆になったのは俺にも責任がある。でも、今時珍しくないだろ? 未羽の両親は全然気にしてなかったし、むしろ喜んでくれた。もちろん母さんには母さんの考えがあるだろうけど、これから俺たちが築いていく家庭を見て判断してほしい。俺だって生半可な気持ちで結婚するわけじゃない」
「瑛司は甘いのよ! そんな女と一緒になったってうまくいくわけないわ!」
「そんな女っていうけどさ、ママはお兄ちゃんが連れてくる女性は誰でも気に入らないんじゃない?」
渚さんが口を挟んだ。
「お兄ちゃんを盗られたみたいで、未羽さんに嫉妬してるんでしょ?」
「馬鹿言わないで。瑛司を誘惑して妊娠を盾に結婚を迫るような女を、うちの嫁として認めるわけにいかないの!」
「へえ、じゃあママも嫁として認められないね。パパとママ、デキ婚でしょ?」
渚さんの言葉に母親の顔が強張った。
「な、何を根拠に……」
「なんで結婚記念日教えてくれないのか、ずっと疑問だったんだよね。短大の時、パスポート申請で戸籍謄本取り寄せて気付いたの。入籍日、お兄ちゃんの生まれる四か月前になってた。入籍前に妊娠してたってことだよね?」
「た、たまたま婚姻届を出すのが遅れただけよ」
母親は明らかに動揺している。
「お兄ちゃんたちもたまたま妊娠が先だっただけじゃん。ママに未羽さんを責める資格あるかなあ?」
母親はもう何も言わなかった。
「今日はありがとな」
門の外まで見送りに出てくれた渚さんに瑛史は礼を言った。
「渚が助け舟を出してくれるとは思わなかった。俺、お前には嫌われてるとばかり……」
「私も一人暮らししたり社会に出たりで少しは大人になったからね」
「渚さん、本当にありがとうございました」
私も頭を下げた。
「未羽さん、敬語はやめてよ。私のほうが年下だし、家族になるんだし、ね?」
「そう……ね」
「今日は疲れたでしょ。ゆっくり休んでね。――お兄ちゃん、さっさと車とってきてあげたら? 妊婦は労らなきゃ」
「わかったよ」
苦笑交じりに瑛司は少し離れた駐車場所へ向かった。
「――本当はお兄ちゃんの子じゃないんでしょ?」
「え……?」
唐突に言われて戸惑う。
「真野さんだっけ、あの背が高い髭の上司。托卵なんて、二人ともいい度胸してるよね。あ、不倫に毎回同じホテル使うのはやめたほうがいいよ」
「なんで知って……」
「時々すれ違ってたもん。私の彼も何人かあそこのポイントカード持っててさ。偶然お兄ちゃんとデートしてるとこ見かけて顔覚えてたし、気になってちょっと調べたら……ね」
言葉が出てこない。
「安心して。今んとこ告げ口するつもりはないから。パパもママも昔からお兄ちゃんばかり可愛がってさ。血の繋がらない子供、血の繋がらない孫とも知らず……。いい気味だわ」
この女……。渚の笑顔が怖い。
「これからよろしくね、お義姉様。色々お願いすることもあると思うけど」
瑛司が車で戻ってきた。