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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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あばずれな巫女様

18/01/14 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:1件 あずみの白馬 閲覧数:435

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 昔々のこと、とある山あいに、小さな村がありました。
 その村はとても豊かで平和でしたが、何年かに一度、日照りで大変な水不足になっていました。

 そこへ、一人前の巫女を目指して一人で旅をしているという、十五、六歳の娘が現れました。
 名を沙希というそうですが、ぼろぼろの身なりをふびんに思った村の長老が、家に泊めてあげることにしました。

 その夜、
「長老様、ありがとうございます。お礼に、夜のお相手をさせてはいただけないでしょうか……」
「き、きみが……!?」
「はい……」
 長老は驚きましたが、顔を赤らめつつも妖艶な誘惑に負け、彼女を抱いてしまいました。

 その後、彼女は昼は農作業などを手伝い、夜になると村の男も女も次々に誘惑していきました。
 巫女と言うのを疑う者もおりましたが、村に尽くしたこともあり、村人全員が沙希に抱かれてしまう頃には、疑いの目を持つ者はいなくなりました。

 さて、沙希が来てから三カ月がたち、梅雨どきを過ぎても村には一滴の雨も降りません。
 このままでは田畑は枯れて作物が取れず、冬を越すことができません。

 ある夜、村の広場に皆が集められました。

「今年は、ヌシ様にいけにえを差し出さねばならん……」

 長老は悲しげにつぶやきました。いけにえを出せば決まって雨が降るのです。
 集まった者は、静まり返り、重い空気が流れました。若い娘たちは顔を見合わせています。

 そのとき、沙希が突然言いだしました。
「私が、いけにえになります」
 これには村の皆が驚きました。
「御主が!?」
「はい、この村に来てから、よそ者である私に、みなさま優しくしてくださいました。せめて恩返しがしとうございます」
 皆がざわつきましたが、真剣なまなざしで村人たちを見つめる沙希を見て、長老はすまなそうに、彼女をいけにえにすることにしたのでした。

 次の日の夜、沙希は大きなタルの中に入れられて村の神社に収められました。

「すまぬ……」
 村人たちはとても申し訳なさそうにしています。その様子をみた沙希は、最後にひとつお願いをしました。
「村の皆様、今夜、亥の刻(午後10時頃)私との夜のことを思い出して欲しいのです。そうしていただければ、私はみなさまの心の中で生きられます」
 村人たちは黙ってうなづき、その場を離れていきました。

 やがて夜もふけ、草木の葉ずれさえ聞こえなくなった頃……

「今回のいけにえはことさら美味そうじゃな……」
 何やら怪しげな声とともに、美しい衣装をまとった大男がやってきました。神々しさは無く、妖のような何かを感じます。

 それを見た沙希は、
「ヌシ様と名乗って、日照りを招いているのはあなたですね?」
 と、問いかけました。
「だったらなんじゃ? これからは言うことを聞いてもらうぞ。ついて来い」
 意地悪な笑みを浮かべるヌシを見て、沙希は戦う覚悟を決めました。
「そういうわけには行きません。欲望のために罪の無い村の者を苦しめるとは許せません。あなたを封印させていただきます」
 ヌシ様は余裕の笑みを浮かべ、
「ははは、出来る物ならやってみるがよい!」
 言うが早いか、沙希はあっと言う間に御神木にたたきつけられてしまいました。
「くっ……」
「人間ごときが無駄なことを。じっくりと味わってやろうかのぉ」
 ヌシ様は妖力を使って、身動きが取れなくなった沙希のからだを、いやらしい手付きで触り始めました。

 その時、村の者たちが沙希との夜を思い出しはじめました。それは彼女に伝わって、力へと変わっていきました。
「はっ!」
 その力を一気に開放すると、妖力が消えて、沙希は再び動けるようになりました。
「な、なんだと!?」
 驚いたヌシに沙希は容赦しません。
「よくもやってくれましたね。貴方は快楽がお望みのようですから、強烈なものを味わっていただきましょう」
「き、貴様、何を!」
 沙希はタルについていた縄をほどいて、ヌシのからだをしばっていきました。
「快楽とは、苦痛を水で薄めたようなものですよ……」
 そういいながら、持っていたムチをヌシのからだに打ちつけていきました。彼は苦悶に満ちた表情を浮かべながら叫び声をあげています。
「やめてくれぇ!」
「やめてと言ってますが、気持ち良さそうですね。永遠にその快楽を味わいなさい」
 沙希は冷酷な笑みを浮かべながらお札を取り出すと、ヌシはその中に封印されました。

 その後、村はいけにえをささげなくとも雨が降るようになりました。

 何年かの後、長老様は都に用事で出かけ、せっかくだからと大きい神社に立ち寄りました。
 そこに、とても美しくて妖艶な巫女様がおりました。
 長老は何かを聞こうとしましたが、彼女はあでやかな笑みを浮かべ、本殿へと姿を消してしまいましたとさ。


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このストーリーに関するコメント

18/01/16 あずみの白馬

作者より補足

「快楽とは苦痛を水で薄めたようなもの」というセリフは、サディズムの語源となったフランスの小説家、マルキ・ド・サド氏(サド公爵)の言葉です。
彼に敬意を払い、追記させていただきます。

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