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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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近づいちゃだめ

18/01/14 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:99

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僕の住む町は都心から離れた田舎町で、近所付き合いが良いところだ。しかしあるおばあさんの家にだけは近づいてはいけないと言われている。
「あそこのおばあさんには近づいちゃだめよ」
お母さんやお父さんがそこまで言う理由が分からなかったけど、幼かった僕はおばあさんに近付こうとはしなかった。

この町に住むみんなはとっても良い人だ。お肉屋さんのおばさんはいつもコロッケをサービスしてくれるし、時計屋さんは僕の壊れた時計を無料で直してくれる。隣に住むおばあちゃんは毎日のように遊んでくれる。だから僕はみんなが大好きだ。
みんなとっても優しいのに、あのおばあさんには全く優しくしていない。おばあさんには挨拶もしないし、何か買いに来たら溜息を吐いて対応する。僕はどうしておばあさんに冷たくしているのか気になって仕方なかった。それでもそんなことを聞いていい雰囲気ではない。
ママやパパにはどうしておばあさんに近付いてはいけないのか聞いたことがある。しかしママもパパも答えは一緒。子どもの知ることじゃないって。

僕の町には中学校までしかなく、高校からは隣町にまで行かなくてはいけない。そのため僕は中学校を卒業と同時に高校の寮に住むことになった。みんな僕がこの町から出ることを悲しんでくれたし、祝福もしてくれた。やっぱりこの町のみんなが大好きだ。
そして僕は晴れて高校生になり、部活に勤しんだ。正直あれだけ好きだった町のことを思い出しもしなかったが、お盆休みのきっかけで町に帰る事になった。
まだ五ヶ月ほどしか経っていないのに、とっても懐かしく感じる。この町全てが僕の思い出になってるんだ。お肉屋のおばさんも時計屋さんも歳をとってしまったが、とても元気そうだった。大きな声で「おかえり」と言ってくれた時はすごく嬉しかった。
僕は五ヶ月ぶりに家へ帰る。町の商店街から少し離れているのに、母さんも父さんも迎えに来てくれなかった。だから僕は重い荷物を持ちながらゆっくり向かった。
その帰り道、僕の目の前で一人のおばあさんが倒れ込んでいた。そのおばあさんを見つけた僕は荷物をその場に置いてすぐに駆け寄った。
「どうもありがとう」
おばあさんの顔を見て僕は驚く。幼い頃から近づいてはいけないと言われていたおばあさんだった。
おばあさんは膝から血が出ていて、歩けないようだ。そして買い物袋からいくつか野菜が出てしまっている。この道はよく人が通る場所だからきっとおばあさんのことに気付いた人はいるはずだ。なのに誰も助けてであげないなんて。僕はおばあさんがどんなことをしてきたのか知らないけど、困っているのに助けてあげないことはできない。だから僕は買い物袋に野菜を入れ直しておばあさんを背負った。
「家まで送りますね」
「わざわざありがとうね」
おばあさんは噂とは違い優しそうなおばあさんだった。みんなはどうして冷たく当たるのか不思議でならなかった。
「これよかったら持って行って」
おばあさんを送ると僕に畑で取れた果物をくれた。やっぱり良いおばあさんだと僕は思い知らされ、みんなにもおばあさんの良いところを伝えようと考えた。

「母さん父さんただいま」
僕が家に帰ると母さん父さんは大いに喜んでくれた。たった五ヶ月でこの喜びようじゃ、仕事が始まったらもっと大変になると考える。
「そうだ、これあのおばあさんがくれた」
僕はおばあさんがくれた果物を母さんに渡す。すると先ほどまで和かな雰囲気だった母さんが
「あのおばあさんって?」
と問いかけてくる。
「あの近づくなって言ってたおばあさん。良い人だったよ」
僕の説明を聞いた母さんは血相変えて話し始める。
「あのおばあさんには近づいちゃダメ。あのおばあさんはとんでもないあばずれで、町のみんな関わらないようにしてるの」
「でも良い人だったよ」
「それでもあのおばあさんはダメよ。若い頃から色んな男を連れ込んでたの。きっとこの町の男もたくさん連れ込んでるはずよ」
母さんは僕の言った良い人には耳を傾けなかった。久しぶりに会ったのに、母さんの嫌な部分が見えてしまった僕はその日、この前まで使っていた部屋に閉じこもった。

次の日、僕はおばあさんが本当は良い人だと再確認するために家に伺うことにした。
「あら、どうしたの?」
「膝の具合どうかなと」
「ありがとう。さぁ上がってちょうだい」
おばあさんはとても嬉しそうだった。おばあさんの笑顔はとても素敵だ。
「お昼作りすぎちゃったから食べていかない?」
「ありがとうございます。じゃあいただきます」
おばあさんは無邪気に喜んだ。こんなに良い人があばずれなんて信じられない。きっと寂しくて仕方なかったんだろう。やっぱり人はちゃんと話したり付き合ったりしないと分からない。


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