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菫さん

慧と付くニックネームが多いので、菫(すみれ)に改名しました。 ショートショートが好きです。

性別 女性
将来の夢 食べても太らない身体になること。
座右の銘 両方、コンタクトです。

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上条家の丙午の嫁

18/01/13 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件  閲覧数:50

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玄関のチャイムが鳴る。
「またか。」
十三日トミカは台所で飲んでいたビールを慌てて隠す。
昼間から、ビールなんか飲んでるところを親戚連中に見つかったら、何を言われるか分からない。
「十三日さん?いないの?」
姑・繁の声だ。
「いますー。」
「なんだ、いるんじゃない。」
繁、登場である。
また、鍵を開けて勝手に入ってきている。
ここは「息子の家」だと言う事を夫の和喜側の親戚はまるで分っていない。
「あらあら、こんなに散らかして。」
「お義母さん、何か?」
「美帆ちゃんの、お雛様ね。知り合いから買ったから。明後日当たり届くわ。」
嫌な予感がする。
もうすぐ、長女・美帆の初節句である。
十三日は夫と相談して硝子ケースに入った小さめのひな人形をデパートで予約したばかりだった。
「雛人形なら、和喜さんと相談して、買いました。」
「それはキャンセルして。どうせ、安っぽいの買ったんでしょう。」
「ケースに入った親王飾りで、39,800円プラス消費税です。」
「なんですってー!十三日さん、39,800円のひな人形を美帆ちゃんに買ったんですって!ああ、情けない!上条家の雛人形はね,人形の〇月の7段飾りの特注に決まってるの!値段は598,000円。明日には届くから、そっちの安物はキャンセルしなさい、分かった?美帆ちゃんは、上条家の長女なのよ!安物を与えるような、みっともない真似しないでちょうだい。」
「…はい、分かりました。」
十三日はうなだれて言った。
もう、言い返す気力もない。
上条家の長男とお見合いで結婚して何年たつだろう。
隣の家にすむ夫の両親が全ての事に干渉してくるのは今に始まったことではない。
普段着のセーターを着て玄関を履いていると姑にみつかり、
「そんな、みっともない格好で外に出ないでちょうだい。」
「お母さん、何を着たらいいんですか?」
と、聞くと、
「上条家の長男の嫁にふさわしいのは〇島屋の薔薇色のセーターに決まっているでしょう。
さあ、今から買いに行きましょう。十三日さん、運転お願いね。」
S市にある〇島屋まで「薔薇色のセーター」を買いに行った事もある。
生活費に関しても夫の給料は一切つかわず、義母から毎月50万円をポンともらい、
「お給料は旅行にでも行って使って来なさい。給料で生活なんてみっともない真似はさせません。」
姑とに言われた。
「生活の面倒はみて上げる、そのかわり、生活の細かい事にまで口を挟むから。」
と言うのが和喜の両親の言い分だった。
 
十三日たちが住んでいるのは「村」だ。
夫の和喜が少し風邪を引いただけで親戚中、20人弱が集まり、
「上条家の長男に風邪を引かせるとは何事だ!」
とさんざん攻め入られた事もある。
「私は〇阪市内の育ちだから。感覚が理解できなくて。」
どこ育ちでも理解出来ない。
そういえば、こんなこともあった。
一度、旦那の親戚に、普段食べるお肉をどこで買うか聞かれた事があった。
『駅前の〇友で買います。』って言ったら、舅に怒鳴られた。
『肉は〇じま超高級店』に決まってるだろう。
上条家の長男に〇友の肉を食わすとはなにごとだ!』。
十三日は良く、我慢してる。
今どき、そんな、話があるのがこの村なのだ。

十三日は年も、一つごまかしていた。
結婚するとき、十三日は27歳だった。
そしたら、『上条家の長男の嫁が27歳では年を取りすぎているから、
親戚に年を聞かれたら、26歳って答えなさい』
と姑に言われたのだ。
それに、十三日の干支は丙午ひのえうまだった。
上条家の長男の嫁の干支が丙午では縁起が悪いから、親戚にはヒツジ年って事になっている。
「ストレス溜まってるのよ!」
優しい旦那にビールを買って来させ一杯やるのが十三日の唯一の楽しみだった。
 
今、十三日は生まれた二人の娘の子育てにまで干渉してくる旦那の両親に、とうとう、
ブチ切れ、少し離れたところに中古の一戸建てを買って、親子4人で楽しく暮らしている。
当然、毎月の50万円はもらえなくなったが薄給の和喜に嫌味を言いながらも、家計をやりくりして、娘二人を育てながらパートにも出ている。
「喧嘩したらね、うちの旦那、私のビールをトイレに流すのよ!
お前の好きなもの、
捨ててやる!とか言って。ひどくない?あははは。」
と、言いながらもとても、幸せそうである。
「あら、ビールがもうないわ。ドンキ〇ーテに買いにいかなくちゃ」
と言いながら車を飛ばしている時が一番、十三日は幸せだ。 
                                                 終


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