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マーキング

18/01/10 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:1件 れいぃ 閲覧数:366

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 自分で結んだのと他人に結んでもらったのでは、見た感じが微妙に違う。
 だから、すぐに分かってしまう。
「ヒナコ、またヤッてたんだ」
 一、二時間目をサボッておきながら、三時間目の頭に何食わぬ顔で席に戻ってきた友人を横目で見て、れみはため息をつく。
「今、何してんの」
 小声で訊かれ、「百六十ページ」と教えてあげるけれど、本当はもう教えてあげたくないと思っている。
 授業抜け出して、先輩といかがわしいことしてるようなクラスメイトになんか。
 ヒナコの制服の胸元のリボンは、朝のてきとうな結び方と違って、きっちりきれいな蝶々結びになっていた。きっと、一度ほどかれて、先輩にまた結んでもらったんだろう。ヒナコの彼氏の壱倉先輩は、几帳面な性格だ。授業を抜けてまでヒナコといろいろしちゃうような、思春期男子らしいところもあるけど。
「れみ、あとで次のテストの範囲教えて」
 赤っぽい茶髪にコロンを振りながら、ヒナコが頼んでくる。先生が黒板に何か書いている間にリップも塗り直して、本当にちゃっかりしてる。
「……あとでね」
 れみは、嫌とは言えない。
 二人は幼稚園からの幼馴染で、なんだかんだの腐れ縁だ。
 失言が多いヒナコも、引っ込み思案すぎるれみも、お互い以外に友達を作れないまま高校二年生になってしまった。今年の春にヒナコに彼氏ができるまでは、ずっと二人きりのような気がしていたのだ。趣味が読書なところも同じだし、これからもずっといっしょだと思っていたのに、先輩とつきあうようになってから、ヒナコとの間に距離ができているのをれみは感じている。
 今だって、机の下にスマホを隠しているヒナコは、先輩にラインを送るのに夢中になっていて、れみの視線なんかに気づいていない。
「勉強、先輩に教えてもらったらいいのに」
 ぼそっと言ったけど、ヒナコには聞こえていないみたいだった。
 きゅっと結ばれた胸元の赤いリボン、先輩の指紋がついていそうで汚らわしく見えてしまう。
(ヒナコのばか)
 れみは長い黒髪を振って、ぷいと窓のほうを向いた。


 昼休み、れみはお弁当を持って中庭へ行く。一人になれそうなベンチをこの間見つけて、お気に入りの場所にしているのだ。以前はヒナコとお昼を食べていたけど、ヒナコは最近先輩の教室まで押しかけているから。ついていくわけにもいかないれみは、一人を受け入れるしかない。
「アンタも、彼氏つくれば?」
 家で相談したときに姉に言われたけれど、粘土細工じゃないんだから、そんなに簡単にできるわけがない。
 それに、れみは彼氏じゃなくて、ヒナコにそばにいてほしいのだ。
 そしてできれば、先輩としたキスの話や、それ以上のもっと恥ずかしいコトの話じゃなくて、前してたみたいな飼い猫とかおばあちゃんとかの話を和やかにしたい。二人に戻りたい。無理だって、分かってはいるけど。
「ヒナコのばか、びっち」
 いつもより塩味強めに感じるゆで卵にかぶりつきながら悪態をついていたら、すっと前に誰かが立った。
「れみ」
「……ヒナコ」
 先輩はいっしょじゃない。
「いつも教室にいないと思ったら、こんなとこいたんだ」
 とすん、とベンチに腰を下ろす。
「先輩は、いいの?」
 尋ねると、ヒナコはうなずいた。
「だって、えっちしてるとき以外はやっぱ、れみのほうがいいんだもん」
 に、と無邪気に笑う。
「何それ」
 ばかぁ、とれみはふくれてみせたけれど、ちょっと勝ったような気がして、やっぱりうれしかった。
「ねぇ、わたしにもリボン結び直させて」
 べつに宣戦布告する気なんかないけど、ヒナコはわたしのものでもあります、ってれみは先輩に教えてあげたい。


     終


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このストーリーに関するコメント

18/01/10 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
胸元のリボンを軸にした話展開が魅力的でした。気まぐれな猫のような友人に、翻弄されまいとする主人公れみの、苛立ちを押し隠そうともしない素直さは好感が持てますね。彼氏をつくれば、という言葉に『粘土細工じゃないんだから』と捻くれる様子が好きです。

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