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牛肉のビール煮

18/01/09 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 エア 閲覧数:62

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 それは仕事終わりが近付きつつあった日の事だった。
 ウチの会社にやって来た顧客がお歳暮に缶ビールのギフトをくれたのだ。
 しかも、缶には光り輝く金が豪華に施されていたことから、所謂プレミアムと呼ばれるものであることは分かった。
「お前も、どうだ」
 上司がそう言いながら、缶ビールを僕に渡したが、生憎僕はお酒が飲めない。かといって、せっかくのご厚意を無駄にする訳にもいかないので、結局缶ビールを一缶受け取ってしまった。

「……ということがあったのだけど、どうしよう?」
 家に帰った僕が嫁に相談すると、嫁は少し考えた後、スマホを操作した。そして、良いものを見つけたのか、すぐさま笑顔で言った。
「じゃあ、ビール煮にする?」
「びーるに?」
 初めて聴いた言葉に、僕はきょとんとした。
「そう、せっかくもらったんだから、作ってみようか」
 そう言いながら、嫁はエプロンに着替え、料理に取り掛かった。
 まず、嫁は冷蔵庫から牛肉と玉ねぎを取り出した。それらを包丁で適当な大きさに切って肉を塩胡椒で味付けした後、鍋に入れてコンロに火を点けた。
 それをよく炒めた後、固形ブイヨンと水、そして何とビールを一缶分全部入れたのである。
「おいおい、ビール全部入れちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫よ」
 慌てる僕の心配をよそに、嫁は笑顔で返事をした。
 煮込み始めて約三十分が過ぎた頃、嫁は火を止めて、おたまで牛肉を深皿に、よそった。
「出来たわよ」
 そう言って、ビール煮の牛肉をテーブルに出した。
 肉の表面はちょうど良い茶色に染まっている。ビールを入れた汁は、長い時間煮込んだから、すっかりトロトロになっていた。
 けど、味が全く想像出来ない。飲み会で初めてビールを飲んだ時に嫌な苦みを感じたことを思い出してしまい、一瞬箸が止まった。でも、それでも嫁は僕に柔らかい笑顔を向けている。僕を思って、作ってくれたこの料理にも、きっと心を込めてくれたのだろう。
 それに、彼女の腕は僕が一番知っているんだ。よし!
 決心した僕は、牛肉の一片を箸に取り、思い切って口に入れた。
 すると、どうだろう。舌に、微妙に苦みを感じたが、これくらいならお酒が苦手な僕でも、ちょうど良い具合である。しかも、肉は非常に柔らかく、絶妙な味わいであった。
「どう?」
 嫁が僕に尋ねる。
「……おいしい」
「ふふっ、どういたしまして」
 僕の答えに、嫁は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ところで、アルコールは大丈夫なの?」
「煮込んだ時に、吹き飛んだから大丈夫よ」
「へぇ……」
 嫁の言葉に僕は返す言葉は無かった。僕は普段、料理をしない人間なので、こういったことは全くの無知だが、こんな料理方法があったのは初めてだった。今度上司にビールの感想を聞かれたら、この話をしようと思った。


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