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とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

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怪物に変身できる洋酒

18/01/08 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 とむなお 閲覧数:321

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あるクリスマスの夜――僕は、残響を終えて、マンションに帰宅途中、近くの公園で奇妙な洋酒を入手した。
ラベルに――G――の文字しかなく、少し怖かったが、クリスマスの奇跡を信じて、夕食後、グラスにそそぎ飲んでみた。
味はワインぽく、なかなか美味で、僕はウキウキした気分になった。
「久し振りに、クリスマスっぽい夜だな……」
一気に飲んでしまうのは、もったいない――と思った僕は、残りを冷蔵庫に仕舞うと、ベッドで横になった。
が、しばらくすると頭が痛くなり、全身を違和感が包んだ。
僕は、たまらなくなってベッドから降りようとしたが、そのまま倒れてしまった。
全身が、どんどん変化しているのが分かった。
近くの鏡を見ると、僕の体は、見る見る内に見た事もない怪物になっていった。
やがて違和感が無くなると、怪物になった僕は意識していないのに立ち上がり、ベランダのある窓へ向かった。
そして、怪物になった僕の目が光り、窓を開けることなくベランダに出ると、突然、飛び上がったかと思うと、そのまま裏山の頂上まで飛んだ。
(この怪物は、いったい何をするつもりなんだろう……)
と思っていると、頭の中で――オマエの欲しい物は何だ?――という声がした。
「もちろんカネだよ。それも大金」
言い終わった直後、怪物になった僕は、大空に舞い上がり、満天の星空の中を都心に向かって飛んで行った。

無論だが、初めての体験をしながら僕は、この怪物を「デビー」と名づけた。
やがてデビーは、東京中央銀行本店の屋上に降り立ちと、そのまま素通りで地下まで下りて行き、大金庫の前に到着した。
(まさか……こいつ……この大金庫を破る気か!)
暗い室内で、またデビーの目が光り、横の壁を通り抜けると、そこは大金庫内で、現金の山だった。
(これだけの大金……どうする気だろう……?)
まもなくデビーの腹部が、パカッと開くと、掃除機のように、その場にある全ての現金を、ドッカンドッカン吸い込み始めたのだ。
(この怪物――どうなってるんだ!)
見る見る内に、全ての現金はデビーの腹部に吸い込まれて、すっかり無くなった。
やがて腹部が閉じると、またデビーの目が光り、大金庫室から出て、来た時と同様の方法で屋上に戻った。
そして、ふわっと夜空に舞い上がった。
僕は、ふっと寝てしまった。

朝の日差しの中、僕は目覚めた。
「あれ? あれは、夢だったのかな……?」
ふと横を見て驚き、思わずベッドから落ちかけた。
部屋の中央に、山のような現金があったからだ。
「やっぱり、あれは現実だったんだ……!」
僕は、その現金の山に飛びついた。
「ワーオ! 僕は大金持ちだー!」
しかし僕は、ふと怖くなり、冷蔵庫から例の洋酒を取り出すと、
「こんな事は、やっぱりマズイよ……。捨てた方がいい……」
そしてベランダに立ち、裏の川めがけて投げ捨てると、着替えて出勤した。

地下鉄に乗り、僕は迷いながら、ふと吊り広告を見て、目が止まった。
『 世界一の宝石、キングパール、来週から国立博物館の宝飾展に展示』
その広告を見た僕は、溜め息をつき、
(もう一回くらい、いいだろう……)

その夕方、帰宅すると、ベランダから川を見て位置を確認した。
「川の水量は多いから、大丈夫だろう……」
早朝になるのを待ち、念のためライトを持つと、僕は意を決して川に向かった。
川は少しにごっていたが、良く見れば川底は確認できそうだったので、中に入った。
川面に顔がつかるくらいの状態で、必死で探していった。
が、なかなか見付からず、諦めかけた時、足に転がってきたビンを見て、ハッとした。
(あったー! 見付けたー!)
大喜びしながら帰宅すると、すぐに冷蔵庫に入れ、着替えて出勤した。

来週に入った最初の夜、僕はワクワクしつつ冷蔵庫から例の洋酒を出した。
食事を済ませると、洋酒をグラスにそそぎ、
「さー、デビーとの再会だー」
グイッと飲み干した。
「ん? 味が……。冷やし過ぎたかな……? 久し振りだからだろう……」
そしてベッドで横になった。
が、いっこうに頭痛は起きなかった。
「ん? なぜだ……? 何の変化もない……」
僕は、冷蔵庫から例の洋酒を出して良く見てみた。
すると、ビンの上部にヒビが入っていて小さな穴が出来ていたのだ。
「ここから川の水が入って、中身が……」
僕は、そのままベッドに座ると、苦笑した。
「僕は、なんてバカなんだ……」
その洋酒の中身をトイレに流すと、空きビンをゴミ箱に捨てた。

翌日の日曜日、僕は国立博物館にいた。
例の世界一の宝石といわれるキングルビーを見ていた。
すると、側で楽しそうに見ていた数人の若い女性の一人が、
「私、将来、こういう宝石のデザイナーになるわ!」
僕はそれを聞いて、これで良かったんだ……と思っていた。


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