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田中フラミンゴ太郎さん

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へべのれけなのだ今

18/01/07 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:68

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ドアのノックが鳴りやまない。僕が、出てやらないからだ。客人に「いらっしゃい」とか、「どなた?」とか、そういったことをいわなければならないのって、面倒くさい。腰をあげるのもしんどい。いま飲んだくれてんだよ。勘弁してよ。
それにしても非常識。何時間叩きつづけるつもりだろう。誰なんだよいったい。しまいにはドアがすり減ってなくなるのではなかろうか。何考えてんだよ。ムカつくな。よし、ぶっ飛ばしてやろう。目にもの見せてやるからな、待ってろよ、いまいくぞ。なんて、心にぶりをつけるのだけど、僕は立ち上がることができない。残念。へべのれけなのだ今。もうちょいと待っててね。
さむい夜だなあ。もう冬だな。毛布出さねばな。鍋の季節だな。餅をたらふく食べような。うどんもいいな。なんて、つらつらとだらしなく、とめどなく、どうでもいいことばかり考えながら僕は机のノートに手を落とす。眠たげな万年筆が大義そうにゆらゆらと踊り始めやがて唐突に痙攣し、パタリと死ぬ。
「さて、夜です。草木が眠らねえ、やべえ、と言ったのは、お月さまでした。お月さまは、すこやかなる夜の責任者なのです。俺が仕事をサボってるみたいじゃねえか、とお月さまは不満げです」
僕は髪をかきむしってノートから汚しちまったページを一枚ひきちぎり、口にほおばってビールで飲み下した。ノックの音は鳴りやまない。
僕は童話作家です。売れてません。
売れない童話作家というものは、暇なのです。飲む以外にすることがありません。
ビールが好きです。
家に引きこもって日がな一日酔っぱらっています。
酔いどれ詩人です。
ウソウソ。詩心の欠片もないのです僕には。
ため息ついては、酒を一口煽ります。
はああ、ごくり。はああ、ごくり。
と、やっていると、幻聴でしょうか。夜になるといつも、ドアをノックする音が聞こえはじめるのです。
いったい誰が叩いているのでしょう。
出てみたことはありません。
恐いですからね、なんだか。
はは。は。
僕はノートに手を落とす。
「夜です。空は宝石をぶちまけたみたいに、爛々と輝いています。あそこから、いちばん私にふさわしい宝石をとってきて。と、ひとりの女が空を指して言いました。彼女のとなりで、恋人はフフンと鼻を鳴らして笑います。君に似合う宝石なんてないさ。ハハ。豚に真珠って言葉を知ってるかい?」
アルコールを絶つべきか、いなか。
でも、お酒がなければ僕はどうやって出来損ないの童話を胃に落とせばいいのだろう。
不細工なページをビリリと破って僕はビールに手を伸ばす。
ごくり。
深夜。
ノックの音が止まらない。


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