1. トップページ
  2. アン・ボニーとメアリー・リードみたいな二人でしたね

田中フラミンゴ太郎さん

よろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

2

アン・ボニーとメアリー・リードみたいな二人でしたね

18/01/07 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:1件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:95

この作品を評価する

母さん、小学生のころ、めったに風邪をひかない僕がめずらしく学校で熱をだして倒れたとき、仕事をほうって飛んできてくれたことがありましたね。母さん、あなたと僕はいつも、なんというか、バックトゥーバックの関係でしたね。いろんなことがあったけど、決して僕たちは、敵同士ではありませんでしたね。アン・ボニーとメアリー・リードみたいな、ふたりでしたね。母さん、中卒の若いシングルマザーの母さんの事を、いろんな人が悪く言いましたね。あなたはいつも、上品ぶった偉そうな人たちに、理不尽に傷つけられ、唾を吐きかけられていましたね。毎日あなたが職場から眼を赤く染めて帰ってくるたびに僕は、冷蔵庫から冷えたビールをとりだして、あなたに持っていってあげました。あなたは笑って僕の頭をなでましたね。それから酔って、僕を殴りましたね。あなたに殴られるのはつらくありませんでした。毎晩、僕はせっせとあなたにビールを運んで、殴られました。あなたは泣いていましたね。「あんた、隠れときいや。母さんまた殴るで」とよくあなたは言いましたね。でも、安アパートのうすぐらい四畳ひとまにはどこにも、僕の隠れられる場所なんてなかったし、飲んで、飲んで、飲んで、どんどん壊れていくあなたを僕は、ひとりぼっちには出来なかったのです。母さん、あなたの前ではいつもつとめて笑顔でいるように心がけていた僕を、ある晩、あなたは「気持ちわるい」といいましたね。僕は初めてあなたの前から逃げだしました。もしもあなたが探しに来てくれなかったら、死んでしまおう。本気でそう思いながら僕は橋のうえで泣いていたのです。気がつくと、母さん、あなたは僕をうしろから抱きしめてくれていましたね。母さん、ふたりで一度、桜を見に遠出したことがありましたよね。夕方、帰りによった喫茶店でケーキを食べましたね。ショートケーキとモンブランを、わけっこしながら食べましたね。母さん、あなたはよく男をアパートに連れてきましたね。そんなとき、僕は部屋の片隅で毛布をかぶってなにも考えないようにしていました。毎回ちがう男に抱かれながら、母さん、あなたはよく僕にききましたね。「もしできるなら弟と妹、どっちがいい?」。僕はいつも、「弟」とこたえました。母さん、僕たちは軽薄でしたね。母さん、僕が小学五年生の時、あなたは一度だけ授業参観に来てくれました。白いワンピースを着た母さんがドアを開けて教室に入ってきた時、僕はほんとうに驚いてしまいました。僕に内緒で、こっそり来る気でいたのですね。僕はなんだかうれしくて、何度も何度もうしろを振り向いて、母さんに手を振りました。小さく手をあげて僕にこたえる母さんをみて、まわりのおばさんたちがなにかヒソヒソ言ってましたね。母さん、いつもいろんな人たちに、僕たちは決めつけられてきたけれど、母さん、僕たちはなにもかもを笑いとばしてしまえるほどには、強くなかったけど、母さん、僕たちは幸せでしたね。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

18/01/13 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
読みやすかったです。『僕』が、どのような状況でこれを語っている(あるいは綴っている)のかわかりませんが、過去形の語り口で、一方的に向けられた思い出は、本当にあったことなのか、意識の中で歪曲されたものなのか。作中の一部と言われても、これで完結といわれても納得できる作品でした。

ログイン

ピックアップ作品