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ポテトチップスさん

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末裔の赤い血

12/12/21 コンテスト(テーマ):第二十一回 時空モノガタリ文学賞【 学校 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1455

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通っている中学が冬休みに入り、僕は久方ぶりに平穏な生活を送っている。
このまま冬休みがずっと続いてくれればいいが、時の流れを止められる人間はどこにもいない。
だから悩んでいるのだ。
なぜなら冬休みが終われば、僕はどちらかを選ばなくてはいけない。
中学2年の僕にとっては、とても決めかねる選択だ。
武田君か上杉君かにだ……。

半年前、僕が通う台東区さくら中学の同じクラスに、1人の転校生が転入して来た。
名前は武田光弘君。
驚くことに武田君は、戦国大名 武田信玄の末裔なのだ。
武田君の噂は、転入初日から学校中に噂され、下級生も上級生も武田光弘君を一目見ようとクラスに見に来た。
さすが武田信玄の末裔だけあって、そのリーダーシップ性はすぐに発揮した。
転入して1週間も経つと、クラスのリーダーに上りつめ、北壁純也と西郷キリオを自分の家来のように接していた。
それからの日々は、武田光弘君を中心にクラスは平穏な生活を送った。
例えばクラスで揉め事が起これば、武田君に仲裁に入ってもらうと瞬く間に解決した。
そんな武田君中心のクラスに亀裂が入り始めたのは、2ヶ月前の10月下旬のことだった。
その日、僕のクラスに転校生が転入して来て自己紹介をした。
名前は上杉雄心君。
なんと、あの戦国大名 上杉謙信の末裔なのだ。
上杉君の自己紹介を聞いたクラスメイトは皆、沸き立った。
口々に「スゲー」や「何なんだこのクラスは!」と、皆が驚いた。
しかし、無言でしかめっ面をしたクラスメイトが1人だけいた。
そう、武田君だ。

先生が上杉君に、このクラスには武田信玄の末裔の子がいることを伝えると、とたんに上杉君も不機嫌な顔になり、しばらく武田君と上杉君は5メートルくらいの距離をおいて睨みあった。
その日以降、クラスの平穏な日々は少しずつ減っていった。
なぜなら、クラスの新リーダー争いが始まりかけたからだ。
さすがに上杉君も上杉謙信の末裔だけあって、素晴らしいリーダーの素質を発揮した。
僕は武田君から「俺の部下になれよ」と声を掛けられた。
でも3日前に上杉君からも「俺の部下に入れ」と声を掛けられていた。
武田君と上杉君は一言も会話や挨拶すらしない。
休み時間になると、ただ無言で睨みあっているのだ。
僕は不思議だった。なぜ2人はいつも喧嘩腰なのかと……。
その理由が分かったのは、11月下旬の歴史の授業でだった。

川中島の戦いが歴史の教科書に記載されていて、何も事情を知らない歴史担任の先生が淡々と川中島の戦いを僕達クラスメイトに教えてくれた。
「え〜と、川中島の戦いは、日本の戦国時代に、甲斐国(現在の山梨県)の戦国大名である武田信玄(武田晴信)と越後国(現在の新潟県)の戦国大名である上杉謙信(長尾景虎)との間で、北信濃の支配権を巡って行われた数次の戦いをいうんだな。まあ、先生的には上杉謙信の方が戦国大名としては好きだがな」
突然、前の席に座る武田君が席から立ち上がった。
「おい、先生! 上杉謙信の方が戦国大名として好きだってどういう事だよ!」
「武田、何を怒っているんだ。席に着席しなさい!」
「先生! 上杉謙信は戦国時代を代表するマヌケ大名ですよ!」
「おい、武田! テメーコノヤロー!」
武田君と上杉君は、席を立ったまま睨みあった。
この日を境に、クラスは2つに分断するのが加速した。
同じクラスメイトの優等生 三橋君は僕にそっと言った。
「近いうちにこのクラスは戦が始まるよ」と。

冬休みに入って4日が過ぎた。
昨日、駅前で三橋君に偶然出会い立ち話をしていると、三橋君は武田君側につく決意をしたと僕に話した。
「田中君も、武田君側についた方が無難だよ」
「三橋君どうして?」
「だって、武田君側には前クラスリーダーだった北壁純也君と野球部副キャプテンの西郷キリオ君がいるじゃんか。一方の上杉君側には、柔道部副キャプテンの近藤君がいるくらいで、他は文化部の生徒が多いじゃんか」
「ねえ三橋君、来学期が始まったら、必ずどちらにつくか決めないといけないのかな?」
「そりゃあ、そうだよ。無所属に属していたら両方の陣営から苛められるよ」
「……」
「田中君、来学期は平成の川中島の戦いの幕開けだと思った方がいいよ」
「平成の川中島の戦いの幕開け?」
「うん。川中島の戦いはまだ完全に終わっていないんだ。武田信玄と上杉謙信の怨念が、この両大名の末裔の血に混じっているんだよ。僕たちは運が悪い時期に中学生になってしまったんだよ」

自分の部屋でポテトチップスを食べながら、少年ジャンプを読んだ。
でも集中して読めなかった。
窓を開けて空を見上げると、2つの大きな雲が歴史の教科書に載っていた武田信玄と上杉謙信の顔に見えた。
僕は窓をしめベッドに潜りこんで目をきつくつぶった。

終わり


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