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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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世界一の朝食

18/01/01 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 みや 閲覧数:210

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目が覚めてすぐに腹が減ったなと男は思った。

そう言えばいつか妻と世界一の朝食と称賛されている店に行った事があった。外国の有名な店らしいのだが男は全く興味が無かったのだけれど、妻がとても行きたがり無理やりに連れて行かれた。
パン・ド・カンパーニュは焼き過ぎていて耳が焦げていたし、オーガニックスクランブルエッグはシンプル過ぎて味がしないし、ベーコンとソーセージは如何にも外国と言ったヘビーな感じで男の口には合わなかった。

「すごく美味しい、さすが世界一の朝食ね」
「そうだな」

はっきり言って男は少しも美味しいとは思わなかったし、家事が苦手な妻が時々渋々作ってくれるありきたりな朝食の方がずっと美味しかったのだが、目を輝かせて美味しそうに食べる妻を見て男は嘘をついた。美味しくないと言った所で何故この美味しさが分からないのかと気の強い妻に詰られるだけだったからだ。
いつもそうだった。男が意見をするといつも妻は否定し、自分の意見を通そうとする。あの時、君の作る朝食が世界一だよと男が言えば何かが変わっていたのだろうか?

男の妻はとても美しくそして気が強い女性だった。自分の主張が正しいと思い込み他人の考えを尊重する事が出来ない自分勝手な性格で、消極的でおとなしい性格の男とは間逆のタイプだったので、男は妻の言う事に逆らう事は決してしなかった。そんな二人が何故結婚しているのか?男の妻はとても美しく男は冴えない男なのに…男にとっては妻と結婚出来た事は幸運以外の何物でも無い。少々気が強い事など目を瞑る事が出来ていた。
けれど気が強く自由奔放な妻は、結婚後も友人と遊びに行ったり飲みに行ったりと家を留守にする事が多かったし、家事も疎かになっていた。異性の友人との付き合いも続いていたので、見かねた男はある日、妻に注意をした。

「外出が少し多いんじゃないかな」
「え?貴方はそんな事言う人じゃないから、だから結婚したのに。私のする事に口出ししないで」

公務員の男と結婚して安定した生活を送りながら、自分の思う通りに自由奔放に暮らすのが妻の狙いだったのだ。

「僕を愛していないのか?愛してるから僕と結婚したんじゃないのか」
「愛?愛なんていつか冷めるものでしょ。結婚なんて打算よ、打算。いかに自分にとって都合の良い相手かが重要なのよ」
「君にとって僕は都合の良い相手だったから、だから結婚したのか」
「そうよ。公務員だから生活は安定しているし、おとなしいから料理や掃除をしなくても文句も言わない、だから結婚したのよ。貴方も私みたいに綺麗な妻がいるから職場でも鼻が高いでしょ?だったら貴方は黙って働いてさえいれば良いのよ。生意気に私に文句なんて言わないで」
「僕は君のいいなり…って事か」
「そうよ、それが嫌なら離婚しましょう。一緒にいてもお互いに時間の無駄だわ」

男は妻の頬を殴った。女性に対して暴力をふるったのはこれが初めてだった。自分でも信じられなかったが妻の発言がどうしても許せなかった。男に殴られた妻は激高し、ヒステリーを起こし部屋の中のものを手当たり次第に男に投げ付けた。コップ、ティッシュペーパーの箱、クッション、小さな観葉植物…小さな観葉植物が男の頭に当たり、打ち所が悪かったのか男は流血し痛がりながら意識を失った。

ピッ、ピッという機械音で、腹が減ったなと男が意識を取り戻すと、そこは病室だった。若い男性の医者が男の顔を覗き込んでいる、
「気が付かれましたか?出血も少しの量でしたし傷も深くないので、もう大丈夫ですよ」
「…妻は」
「…たいした傷じゃないと説明したら、すぐに家に戻られました」
「そうですか」
「カーテンを開けますね。もうすぐ朝食が運ばれて来ますので、それを食べたらもう帰って頂いて大丈夫ですよ」
「以前…世界一の朝食というのを食べた事があって」
「有名なお店のですよね?美味しかったですか?」
「全然…僕にとっては愛する妻が時々作ってくれた下手くそなスクランブルエッグや目玉焼きの方が世界一の朝食でしたよ」
悲しい事にその世界一の朝食をもう二度と食べる事は無いのだろうけれど、と男は思っていた。


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