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与井杏汰さん

突然思い立って短編小説を書いてみたくなりました。このサイトを知って、うれしく思います。

性別 男性
将来の夢 そこそこの健康と、そこそこの自由。
座右の銘 病は気から。

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一族の危機

17/12/23 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 与井杏汰 閲覧数:91

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 「女王様、報告があります」
兵隊が言った。
 「先ほど、巨人を見かけました」
女王はゆっくり振り向くと、兵隊を見据えて言った。
 「それは本当ですか」
兵隊は頷いた。
 「おそらく、女王様が以前お話ししていた伝説の巨人と思います。我々よりはるかに巨大で、わずか一歩で遥か彼方へ行くことができます。もし踏まれたら、我々はひとたまりもありません」
深刻な顔で兵隊は伝えた。
 「ついにここまで…」
女王はひどく苦しんでいるように見えた。
 「一体あいつは何者なのですか?」
兵隊は聞いた。
 「昔、我が一族はあの巨人の集団に滅ぼされかけました。命からがらこの地に逃げてきたのです。多くの兵隊や労働者が踏みつけられ、しまいには大洪水を発生させられ、辛くも避難した数名が生き延びたのです。この場所なら、安全と思っていたのですが…」
女王は悲しそうに言った。
 「彼らに対抗する力はありません。悲劇を繰り返さないためにも、早急に城を空けて、全員で避難するしかないでしょう」
兵隊は「わかりました」と言うと、急いで仲間にこの事実を伝えに言った。

 「急げ! 巨人に見つかったら終わりだぞ」
兵隊は多くの労働者や庶民、子供たちを引き連れて、住み慣れた土地を離れ、広い原野を遠くに見える森へ向かった。
 「どこまで逃げればいいの?」
不安に思った誰かが聞いた。
 「女王様は、森の中が比較的安全と言ってらっしゃる。城を築くには障害が多いかもしれないが、食料は豊富だし、とりあえずあの森へ行きましょう」
一族は、女王を守りながら、遥か彼方の森を目指した。

 「パパ、今日は天気がいいね!」
4歳になる男の子が原っぱで言った。
 「そうだね。パパとかけっこしようか?」
 「うん!」
男の子は喜んで走り出した。
 「パパ! チョウチョがいるよ!」
男の子は原っぱを白い蝶を追いかけて走り回った。
 「お前、遠くまで一人で行くなよ」
父は注意すると、一緒に走り出した。
 「あれ?」
男の子は立ち止った。
 「パパ! こんなに蟻さんが歩いてるよ!」
父は追いつくと、一緒に地面を眺めた。
 「そうだね。蟻さんの行進だ」
見ると、大勢の蟻が、行列を作って歩いていた。
 「蟻さん、どこまで行くの?」
男の子はしゃがむと、無邪気に話しかけた。

 「大変だ! 巨人に見つかった!」
兵隊と一族は震え上がった。
 「我々はもう終わりだ…」
大勢の蟻は、その場で泣き崩れた。
 「皆、今までありがとう」
女王は言った。
 「1名でも生き延びて、一族を復興させてください。さあ、逃げて!」
蟻の一族は一目散に、それぞれ別の方向へ、新しい未来へ向かって歩き出した。


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