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林一さん

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卵焼き弁当

17/12/18 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 林一 閲覧数:317

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「お母さん、もう私のお弁当作んなくていいよ」
 中学生の娘が突然、こんなことを言い出した。
「どうしたの急に? お母さんのお弁当に何か不満でもあるの?」
「そうじゃないよ。お母さん、毎朝大変そうだからさ。お弁当くらいは自分で作ろうかなって」
「それはありがたいけど、あんた卵焼きくらいしか料理できないじゃないの。本当に自分で作れるの?」
「大丈夫だって。お母さんはその分遅くまで寝てなよ。もう年なんだしさ」
 私は娘の言葉に甘えて、お弁当作りを任せることにした。
 翌朝。いつもより三〇分遅く起きた私がキッチンに向かうと、娘がお弁当にご飯と大量の卵焼きを詰めていた。
「お母さんおはよう。ちょうど今お弁当を作り終わった所よ」
「あんた、ずいぶんたくさん卵焼き作ったのね。あれ? 他のおかずは?」
「卵焼きだけだよ」
「そんなお弁当じゃダメよ。栄養が偏っちゃうわ」
「大丈夫。心配しないで」
「でも……」
 娘は翌日もそのまた翌日も、大量の卵焼きとご飯のみというお弁当を作り続けていた。
「やっぱりお母さんがお弁当作るよ。そんな弁当じゃ力でないでしょ」
「大丈夫だって」
「じゃあせめて他のおかずも作りなさいよ。お母さんが作り方教えてあげるから」
「別にいいわ。朝から何品も作るのめんどくさいし」
 娘はそう言って、かたくなに卵焼き弁当を作り続けた。
 私のことを気遣って自分でお弁当を作ってくれるのはうれしいけど、女手一つで育ててきた大切な娘が、毎日学校で卵焼きだけのわびしい弁当を食べている姿を想像すると心が痛んだ。

 娘がお弁当を作るようになってから一ヶ月が経った頃、学校の家庭訪問があったので、私は担任の先生にそのことを相談した。
「先生、一体どうしたらいいでしょうか?」
「お母さん、心配しなくても大丈夫ですよ」
「でも、成長期の女の子が毎日あんなお弁当じゃかわいそうで」
「実はですねお母さん、娘さんの卵焼き、クラスのみんなに大人気なんですよ。だからいつも昼休みになると娘さんの周りに人が集まって、お弁当のおかず交換会が始まるんです」
「え?」
「だから娘さんのお弁当、いつもクラスで一番豪華になるんですよ」


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