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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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弁当の極意

17/12/18 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:316

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父:息子よ、恐れていた事態がついに来た……母ちゃんが俺の弁当作りをやめてしまったのだ。
息子:学級新聞に載せたいので、お気持ちを一言。
父:冷静だな、お前。これが男にとってどんなにつらい事か分かるか? 愛妻弁当ほど心和むものはない。車より家より、おかずのグレードが父ちゃんのステイタスだ。
息子:僕のキャラ弁の方が手が込んでるけれどね。
父:そ……それは言わない約束だろ。
息子:今の父ちゃんは、まるで味方から兵糧攻めを受けているようだ。しかし、ご安心を!
 (息子、そっと包みを差し出す)
父:こ、これは弁当ではないか!レタスに彩られたポテトサラダに、プチトマトのアクセント。ふんわり卵焼きにたこさんウィンナー、メインはハンバーグ……。
息子:白飯には父ちゃんの好きな鮭ふりかけをトッピング。さらにこちらのタッパーには旬のリンゴが入ってるよ。
父:お前が作ったのか?
息子:これでも小学校の家庭科の成績はトップなんだ。
父:息子よ……。(感涙にむせぶ)
息子:こんなこともあろうかと、5日前から作り置きを!
父:食えるかぁっ!!
息子:ジョークだよ。ちゃんと今朝作った。
父:頼むから素直に感動させてくれ……。
息子:僕としても、父ちゃんが失踪するのを見るに忍びなくて頑張ったよ!
父:いやいや、この話そこまで深刻な設定じゃないから。さて息子よ、弁当の極意は作るだけにあらず。昼食の前に、父と共に町内を走って一周するのだ。
 (二人で外へ出かけ、町内をランニングする)
息子:冬の空気は冷たいね。
父:しかし、身体がポカポカ温まってきたろう?汗もかいて喉も乾いてくる。
息子:ほどよくお腹も空いてきたよ。
 (家に帰り着く。こたつに入り、二人分の弁当を広げて手を合わせる)
二人:いただきます!
父:どうだ、運動した後のご飯は美味いだろう?
息子:本当に。ひと汗かいた後の弁当は、自分で作って言うのも何だけど、まるで五つ星レストランのシェフが作ったようなハイクオリティー!
父:自画自賛のレベルが高すぎだろ……。
息子:父ちゃん。これは『遠足の弁当はなんでも美味しい』の原理だね。
父:そう。『自由な空気』『達成感』『心地よい空腹』の条件が揃えば、いつもの弁当もワンランクアップするんだ。
息子:まさに、父ちゃんの職場に足りてないものだね!
父:そうそう、最近ストレスで胃薬が手放せなくて……って、子供は余計な詮索をしなくていいから。早く食べようじゃないか、美味い、美味いぞ。
 (瞬く間に二人は弁当を平らげる)
二人:ごちそうさまでした!
息子:料理を母ちゃんに習った甲斐があったよ。父ちゃんの手料理は激しく不味かったから、味覚がおかしいのかと心配していたんだ。
父:あ……あれは、煮物を作るのに醤油とソースを間違えただけじゃないか。そもそも容器を入れ間違えたのは母ちゃんだし。
息子:母ちゃんもおっちょこちょいだね。
父:そうなんだ。失敗を恥ずかしがって部屋に籠ったりするところがまた可愛くてな……って、コホン。そうそう、手作り弁当もいいが、巷に溢れるお弁当の数々も捨てがたいな。スーパーの総菜コーナーにある弁当の多彩なラインナップ、あるいは弁当屋の温もりが引き立つ店員さんのスマイル。
息子:コンビニ弁当も忘れちゃいけないね。
父:ドリンクやお菓子も一緒に買えるのは魅惑的だな。
息子:駅前のコンビニには、クラス1美人な奈菜ちゃんのお姉さんがバイトしているんだ。奈菜ちゃんの将来の姿に想いを馳せつつ、可憐なお姉さんから『こちら温めますか』なんて言われるシチュエーションは、最高の萌えポイントだよ!
父:父ちゃんには、お前の将来の方が気になるよ!
息子:分かった、つまり弁当は愛が必要という事だね!
父:当然だ。父ちゃんのプロポーズの言葉も『毎日君の作った弁当が食べたいんだ!』だったんだからな。母ちゃんの弁当がないと、俺は干からびて死んでしまう。
息子:しかし母ちゃんの怒りが解けない事には……。
父:仕方がない、我が家の男子に代々受け継がれてきた最終奥義、今使う時が来たか……。

 (父、スライディングするように土下座する)

父:母ちゃん、結婚記念日忘れてごめんなさい!

 (息子、父の肩をポンポンと叩く)
 (父ちゃん、顔を上げる。そこには……)

父:母ちゃん!いつ帰ったんだ!?
母:ずっと家にいたんだけど。いいもの見せてもらったわ。
息子:父ちゃんを許してあげてよ。
母:こんな面白い家族、他にはないものね。父ちゃんの弁当を作るのは、型にはまらないラブレターを書くようで楽しいんだから。
父:お前……。
母:あなた!
 (涙ぐみ、いつまでも抱き合う父と母)
息子:ふふっ、弁当と愛は冷めても温め直せば、いつでも出来たてアツアツなんだよね!


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17/12/18 冬垣ひなた

≪補足説明≫
画像は「写真AC」と「イラストAC」からお借りしました。

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